閑話・女子会?1

「なーんーでーでーすーかー!」


「なんでだって知らないよ」


「これ、フィオス用のクッションです」


「1日で用意したのか……」


 ゼレンティガム家のウルシュナの部屋にウルシュナとリンデランはいた。

 そしてその傍らにはスライム。


 ジの魔獣であるフィオスであった。


「別に私が預かりたいって言ったわけじゃないしね。


 まあ頼ってもらって嬉しいけど」


 ジは今リアーネの手紙を受けて首都を離れている。

 到底2、3日で済む用事でもないがゴミ処理もそんなに休むことが出来ないのでジも対策を考えた。


 ぶっちゃけた話ゴミ処理の主軸はフィオスである。

 フィオスがいれば誰でもゴミ処理が出来ちゃったりするのである。


 ジの魔獣であるので従ってくれるかは別問題だけどフィオスがいれば一応ゴミ処理は出来るということになる。

 だからジはフィオスをウルシュナに預けた。


 ジのゴミ処理の担当は現在ウルシュナやリンデランの家がある地域のみ。

 朝ゴミ処理の時にはいつもウルシュナとリンデランも待っていてくれて軽く会話しながらゴミ処理をするのが日課になっていた。


 どこを巡るのかも知っているし2人なら全てにおいて信頼できる。

 リンデランでなくウルシュナにお願いしたのは先日の頼るのも色んな人にということを実際にやった形になる。


 特別にウルシュナじゃなきゃいけない理由はなかった。

 ただウルシュナも頼られて口では文句言いながらも嬉しそうだった。


 そういうことでフィオスはウルシュナの部屋にいた。

 別に部屋を用意しようかとも思っていたけど目に見えないところに置いておくのも忍びなくて結局自室に連れていくことになった。


 ウルシュナの部屋は白とピンクの色が占めている。

 ややファンシーめな部屋になっていて、デフォルメされた可愛い形になった魔物のぬいぐるみなんかが飾ってある。


 なので男子禁制。

 例え長年仕えている執事ですら中に入れてもらえない。


「フィオス、うちに来ませんか?


 歓迎しますよ」


「おい、引き抜きするんじゃない」


「むー私もフィオスとご一緒したい!」


「んじゃ泊まってけばいいじゃん?」


「それはステキな考えですね!」


 不満顔でフィオスをプニプニしていたリンデランがパッと笑顔になる。


「一度帰って許可を取って準備してきます!」


「あっ、うん」


 家も近いし泊まるぐらいは問題にもならない。

 リンデランが走っていってウルシュナは置いていかれる。


「ほんとお前のご主人様は忙しーよな……


 お母様も認める数少ない男の子だし顔も悪くないし強いし……はっ!


 い、いや、違うから!」


 無意識にフィオスをつついていた。

 ぽやんと独り言を口に出していてしまってハッと変なことを考えていたことに顔を赤くする。


「き、聞いてないよな!」


 ぷにゅりと手でフィオスを挟むように持ち上げる。

 フィオスに聞かれていたところでなんてことはないけど気恥ずかしくてじーっとフィオスを見つめて、また恥ずかしくなる。


「えい!」


 ちょっと強めにブニブニと揉んでみる。

 特に逃げることもなく力の入れ具合によって自在に形が変わる。


「何してんのかなー」


 ウルシュナはフィオスを抱えてベッドに寝転がる。


「ジがいつもフィオス抱えてる理由が分かるな。


 ちょっと冷たくてプニプニしていて気持ちいい」


 そんなに重くもなくずっと持っていても疲れない。


「リンデランも戻ってくるまでまだだし……ちょっと寝ようかな……」


 今日も早起きしてゴミ処理したからちょっと眠い。

 フィオスを抱きしめてウルシュナはスヤスヤと眠ってしまった。


 ーーーーー


「遅かったね……って何その荷物?」


 いつもより時間がかかっていると思ったら戻ってきたリンデランは色々と持ってきた。


「フィオスに色々持ってきました!」


「色々?」


 リンデランが持ってきた食べ物だった。


「お肉、魚、野菜、ケーキにお菓子……なんで?」


「私思うんです……スライムはなんでも食べるけどフィオスにはフィオスの好みがあるんじゃないかって。


 今日はフィオスが何が好きか試してみたいと思います!」


 そしてそれをジに教えてあげれば褒められるのではないかという魂胆。

 これまでの付き合いでフィオスにもある程度の好みがあって好きなものに寄っていく傾向がある。


 こうして好きなものをあげればフィオスの好感も得られるかもしれないなんて打算的な考えもモリモリ持っている。

 やたら遅かったのはこうした食べ物を色々買ってきていたからであった。


「まずはお野菜です!」


 とりあえず生野菜。

 サラダをフィオスの前に出す。


「私は野菜より肉がいいな」


「私はお野菜好きですけどね」


 ウルシュナとリンデランも食べる。

 野菜があんまり好きでないがゼレンティガム家が抱える料理人が作ってくれるドレッシングは美味しいので野菜もそれなりに美味しく食べられる。

 

 フィオスもお皿に覆いかぶさってサラダを溶かしている。

 お皿を溶かさないあたりちゃんとしている。


「ん?


 こっち食うか?」


「もう、ウルシュナ!」


 とは言えサラダはサラダ。

 フィオスが見ている風を装ってウルシュナはサラダの残っている皿をフィオスに差し出した。


「……ちょっと食べるの早いですかね?」


「ドレッシング付きがいいのかもかな」


 心なしかドレッシングがかかっているウルシュナのサラダの方が溶かすのが早いような気がする。

 微妙な差なので言われてみればみたいな違いである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る