3度目の攻略3

『パンパカパーン!


 第一階層攻略おめでとう!


 ご褒美に第二階層への階段を解放するよ!

 これで次からすぐに第二階層からも始められちゃうからね!』


 階段を降り切った途端に聞こえてきた不思議な声。

 何のことか分からなかったけれど見ると階段の横に階段があった。


 今来たのは下に降りてくる階段。

 なので振り返ると上に向かう階段になるのだけどその横にある階段も上に向かう階段であった。


 聞こえてきた内容を考えるとすぐに外に出られる階段だろうか。

 先に確かめておいた方がいい。


 降りてきたばかりだけどこの隣の階段を上っていってみることにした。


「ねえ、あの声って何?」


「何って言われてもな……」


 ウルシュナの疑問も最もだけどそれに対する明確な答えをジも持っていない。

 なんとなくの予想はあってもそれを裏付けるものがないのだ。


「たぶんこのダンジョンのボス……かな?」


 ダンジョンのボスであることはほぼほぼ間違いない。

 あの不思議な少年がなんであるにせよダンジョンにおける支配権を持っている。


「こんなダンジョンあるなんて聞いたことない……」


「落ち込むな、勉強不足なんじゃなくて本当に誰も聞いたことがないようなダンジョンなんだ」


「そうなのか?」


「私も聞いたことがないのでウーちゃんだけじゃないですよ」


「そうだよね。


 ダンジョンが出来て、そこに人が集まる町が出来たっていう話は聞いた覚えがあるけど町があってそこにいきなりダンジョンが出来たって話も聞いたことないもん」


 リンデランが聞いたことがないなら自分が知らなくても当然。

 それなりに勉強はできるウルシュナでも成績はリンデランには敵わない。


 授業で習ったことはウルシュナの頭になくてもリンデランの頭にはあるはずなのだという謎の自信をウルシュナの方が持っていた。


「おっ、階段も終わりそうだぞ」


「ここは……?」


 外かと思ったら違った。

 まだダンジョンの中で今上ってきた階段の隣には上に向かう階段があって、周りはまた迷路のようなダンジョンが見える。


 見覚えがあるとジは思った。


「あっ!


 ここ入り口じゃない?」


 キョロキョロと周りを見回していたエが気づく。

 ここはダンジョンの入り口、入ってすぐの階段を降りてきたところであった。


 地図を描いているのもエなので周りの道の構造を見て気がつくことができたのだろう。


 試しにさらに上に行ってみると見知った扉。

 触ってみると触れられずすり抜けてしまい、向こうにはオロネアを始めとした万が一の事態のために交代で待機している人たちがいた。


 攻略を楽にするためにショートカットのようなものを作ってくれたようだ。

 構造上どうなってるんだと聞きたくなるけどダンジョンにそんなこと突っ込む方が負けである。


「と、いうことで」


 第二階層と言っていたのでそう呼ぶことにする。

 またダラダラと第一階層を行かなくてよくなった。


 まだまだみんなやる気も魔力も十分なのでこのまま第二階層から攻略を続ける。


「スケルトン……スケルトン?」


 全身黒塗りに骨の絵を描いたような微妙なクオリティの魔物人形。

 いやもうそんな服装の人間のようにも見える。


 おそらくスケルトンだと思われる魔物が10体ほどドッと押し寄せる。


「ユディット、ライナス、前に出てくれ!


 俺とウルシュナで撃ち漏らしが後ろにいかないようにして、2人はフォローを!」


 サッと指示を出す。

 ユディットとライナスが前に出て戦い始める。


 ダンジョンはそれなりに広いが4人が前に出て戦えるほどの広さもない。

 ユディットとライナスが戦いつつ無理に全てを相手取ろうとしないで後ろにも流す。


 そうして流れてきたスケルトンをジとウルシュナで相手して、エとリンデランでフォローする。


 そんなに無理しているわけでもないけどユディットとライナスだけでもスケルトンを倒していけている。

 切ると中綿を飛び散らせて倒れるので一応人形は人形のようである。


「3体、どーだ!」


「4。

 まだまだですね」


 いつの間にか競い合っているユディットとライナス。

 実力的には大きくは違っていないが周りを見ている目や倒した後次に移る流れなどはユディットの方が優れていた。


 ユディットに上回られて悔しそうにするライナス。

 反目し合うのでなく、これぐらいの競い合いなら互いを高め合っていけていい。


 ユディットの周りにいるのはリアーネやグルゼイぐらいで同じぐらいの相手もいなかった。

 切磋琢磨出来る相手がいることは大切なことで成長のためには必須だ。


 ちょっと心配だったけどこんな関係もまた上手く付き合っていければ糧になる。


「待て」


「な、なに?」


 先頭を歩むジがみんなを止める。


「下だ」


「下?」


「……あっ」


「罠ですか?」


「そうだ」


 よーく見ると床に四角い出っ張りがある。

 かなり分かりにくいけど目で見ても気づけるぐらいに出っ張っている。

 

 魔力を感知して周りを警戒していたから気がついたけれどそうじゃなきゃ踏んでしまっていたかもしれない。


「わっ!」


 みんなに下がってもらって棒状のフィオスで出っ張りを押してみる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る