第34話 先輩、確かめてください2

34話 先輩、確かめてください2



「んっ……」


 人差し指と中指の先で、そっとお腹の縦筋に触れる。


(これが、えるのお腹の感触……)


 余分な脂肪の少ない細い身体の触り心地とは思えないほど、しっかりとした質感。触ってみるとぷにぷにと柔らかく、撫でてみてももちもちとした肌が吸い付くように指先を離さない。


 子供のお腹のようだ、と思った。シルクのような真っ白な肌も、柔らかい肌触りも。細いと柔らかいがお腹で両立するなんてことが本当にあり得るのか、と夏斗は未知の世界にさらに興味を惹かれた。


「あっ……先輩の、熱い……」


「えるのお腹も熱いぞ。ぽかぽかしてて、湯たんぽみたいだ」


 広げた右の手のひらで、お腹を包み込むように撫でる。さわさわと優しく、小動物の頭を撫でる時のようにゆっくりとした触り方に、えるの身体が小さく震える。


 どうやら、声を我慢しているようだった。シャツを抑える手から小さな身体全体までがぷるぷるとしていて、口元は必死に閉じているように見える。


(でも、変に声を抑えてる分……)


 耳まで真っ赤で、恥ずかしさに染められながらも声を出すまいと耐えているその姿。それはむしろ開き直って変な声を出してしまっている時よりも遥かに官能的であり、本当に変な気を起こしてしまいそうになる。


 さっきは役得だと思っていたが、逆だったかもしれない。ここまでの反応を見せられながらもお腹を撫でる以上の事をできないというのは、かなりもどかしい。


「ふっ……んっ! はぁ、ひうっ!?」


「える、変な声出てるぞ。反応しちゃダメなんじゃないのか?」


「わ、分かって、まひゅ。でも、これ……先輩の撫で方、がぁ……っ!」


 まずい。これ、いじめたくなる。そういえば前に柚木が「あはは、ごめんごめん。でもこれだけ可愛くてちっちゃい子、ちょっとイジめたくなっちゃうのは分かるでしょ?」と言っていた。あの時冗談半分で賛同したが、今は心の底から言える。


 こんなに可愛くて小さい生き物、からかっていじめたくならない訳がない。


「っあぁ!? せん、ぱ……ぃ」


 クリッ、クリクリッ。そっと手のひらを離し次は人差し指を小さなおへそに当てる。ピクッ、と一度大きく身体が揺れるのを見てから、そこを重点的に責めることを決めた。


 おへその入り口は優しく引っかき、内側は少し強めに指で弄る。緩急をつけてやるとえるはより反応が良くなって、口元が少しずつ緩み始めているのが見てとれた。


「こ、れダメっ……変な気持ちに、なっひゃぅ。お腹の奥ぽわぽわ、熱いぃ……」


「もう降参か? えるはエッチな子だったんだな」


「ち、違っ、います。まだ、できますからっ。私は、エッチじゃな……ん゛ん゛っ!!」


(意外に耐えるな。でも、もう限界が近そうだ)


 そろそろラストスパート。えるの一番可愛いところを見るため、夏斗は更に指の動きを激しくする。しかもその上で同時に左手も使い、両手で優しい撫でと激しい指クリを繰り返した。


「あっ、あぁっ!? うぁ、う゛ぅ……ダメ、ダメダメダメ、これダメです! なんか、変……にッ!」


 余裕が無くなってきたのか、えるが小さく暴れる。だが逃さずソファーの端に追いやって、トドメの一撃をかけた。


「んぐ、っっっっ!!!」


 ビクンッッ。大きくえるの身体が跳ねる。甘い吐息と共に口の端から一滴の唾液が伝うと、その小さな身体はぐったりと脱力してベッドの端に転がった。


「ひ、ぁう……はひっ……」


「ふふ、どうやら降参らしいな? で、どうだったんだ? 改めてお腹を撫でられた感想は」


「……気持ち、よかったれす。ナツ先輩に、撫でられると……じゅんじゅんって、お腹の中で何かが上がってきて。私、エッチなんでしょうか……」


「そうだな。でも、安心していいぞ」


 エッチだと嫌われる。それが嫌で、えるはこのなでなでを仕掛けてきた。さんざん楽しませてもらったのだ。最後にはちゃんと、安心させてやらないと。


「俺はえるがエッチでも嫌いにならないよ。というか、エッチな女の子が嫌いな男なんていないから」


「ふ、ぇ? そう、なんですか? よかったぁ……」


 にへぇ、と安堵したように笑みを漏らす。それを見て、少しやりすぎだったかもしれないと反省しつつ、そろそろえるが帰らなければいけない時間なことに気がついた。


「じゃ、そろそろ時間だ。また明日、な」


「ひゃぃ……。あの、先輩」


「なんだ?」


「……また、お腹なでなでしてもらっても……いいですか?」


「っ! そ、そうだな。まあまた、な」


「えへへ、やったぁ」



 こんなこと繰り返したら心臓がもたないっての。夏斗はそう心の中で呟きながらえるを立たせ、玄関先まで送って家に帰らせたのだった。

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