第8話 好きだ!その笑顔

隣りの席になった。

意識なんてしてなかった。

気にもしていなかった。

消しゴムを借りてからに話すようになった。

ちょっと早口で、尚かつ舌っ足らず。

「おい、落ち着けよ。」

それが俺の口癖になった。

なんだよ、嬉しそうにこっち見てさ。 

調子狂うだよ!

勉強大っ嫌いと豪語するお前。

数学が嫌い

科学が嫌い

英語が嫌い

美術が嫌い

歴史は好き

国語は好き

体育は好き

音楽は好き

ちゃんと勉強しろよ

教えてらやるから

ったく高校行けねぇぞ!

そんなことお構いなし。

「今度の歴史の試験どっちが良い点か競争しよう」

「勝ったら何くれる?」

「君が勝ったら、一回だけ何でも言うこと聞く」

「お前が勝ったら?」

「一度で良いから一緒に帰る」

「嫌だ!」

「あっそう……」

それっきりになった話。

なのになんだよ、その笑顔

結果は、俺の惨敗だった。

「おい!あの話の続きするぞ」

「へっ?どうしよか……」

お前のまじな顔怖いぞ

小さな声でゆっくりと

「ねぇ……わたしのこと好き?」

「はっ?お前馬鹿?

本当馬鹿だよ。

お前が階段から落ちて

捻挫したときさぁ

誰が一番に駆けつけた?

保健室におぶって行ったのは

だ れ だ よ~」

「君の声で聞きたいんだ」

煩いよ。

言えるか。

「…きだ」

「早口で判りません

おい!落ち着けよ!」

もう……

「今日から一人下校なし!必ず一緒だぞ」

なんだよ、嬉しそうにっこり

笑ってさ。

その笑顔が良いんだ。

その笑顔を持っているお前が

大好きだぞ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る