第8話 ケーキと失恋と君
出逢うべくして出逢えた君
奇跡なんかじゃない
あれは必然だったよ
笑うなよ
恥ずかしくなるだろ
あの日相席を余儀なくされ
気まずい空気を
スマホで紛らわせていた
俺と君
幾ら待っても
幾らラインしても
電話しても
繋がらない
やっぱりばっくれられた
そんな気はしていた
思わず舌打ち
帰えろうとしても
立ち上がれない
畜生
結構来てるなぁ
情けな~
君も待ち人は来なくて
思いっきり
ふくれ面している
突然君は
飛び切り大きなケーキ下さいって
注文したのには
驚いたよ
どんだけケーキ好き?
もっと驚いたのは
来たケーキがホールできたこと
変な気を利かせたお店の人が
取り皿とフォークを
ふたり分置いていった
君は当たり前のように受け取り
黙って半分に切り分け
俺の前に置きながら
「まったく 頭にきちゃうよね
馬鹿にしないでよ!ねっ
まあまあ遠慮しないで
召し上がれ」
「ふぇぇ~」
何とも間抜けな返事に
君は大笑い
パクパクパクって
聞こえてきそうな
見事な食べぷり
清々しかったよ
負けないぞ
甘いの苦手なんだけど
頑張った! 完食!
君は拍手じゃなく
握手って言って
ゲラゲラ笑らった
差し出してくれた手
温かったよ
それからたくさん話した
それからたくさん笑った
突然君の電話が鳴る
「あっそうなんだ
うん じゃぁこれで終わりね
バイバイ」
切った後
「スッキリした~」
晴れ晴れとした表情
お店を出たときは
もう自然に手を繋いでいた
出逢うべくして出逢えた俺たち
奇跡なんかじゃない
あれは必然だったよ
喧嘩も沢山した
デートも沢山した
キスも沢山した
でもさぁ
まだまだ足りないんだよ
全然足りないんだよ
だから
結婚しようよ!
そしたら君は
すべての時間が
ふたりの物だねって
朝日も夕日も夜空も
みんなみんな
ふたりで見られるねって
何十年立っても
様子が変わってしまっても
心はそのままでいたい
忘れたらホールで食べた
ケーキを思い出そう
ううん あのお店に行こ
そして食べよう
「有難う!出逢ってくれて
ケーキ 半分っこしてくれて」
「こちらこそ 有難う!
食べてくれて
そして
差し出した手を握ってくれて」
愛している
愛している
ただひとりのひと
世界でただひとりのひと
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