蒼い恋

紫陽花の花びら

第1話 桜なんて

ふわりさらりひらりと

舞う花びらが

君の唇に優しくキスをした


俺だって触れたこともないのに

お前はそんな簡単に

ファーストキスを奪うのか?

勇気を振り絞り告白して 

ふたり笑顔になって


何でもなかった日常が

特別なものになった


肩が触れて ときめいて

次は 次はと そう思いながら


いつだってヘタレな俺


そしてあの雪の日

雪投げしながらの帰り道


両手が真っ赤に悴んで

はあはあ息吹きかけ

温めていたから


君は俺の手をとり

オーバーのポケットに捻じこんだ


驚いて声も出ない俺に

「カイロ!温かいでしょ?」だって


ポケットの中

カイロを挟んで恋人繋ぎ


言葉もなく歩く帰り道

少しだけど強く握りしめたら

優しく握り返してくれた君


それから時間はどんどん

俺を置き去りした


ああ もう春だ 春なんだ


桜…咲くな 咲くなよ


卒業 この二文字に心剔られる


これがふたりで帰る

最後の特別な日


桜の下で待ち合わせ

君の後ろ姿に走り寄る


振り返る君に

桜の花びらが舞い落ちていく


なんて綺麗なんた

思わず両手を摑み引き寄せ


見つめ合う


潤んでいる瞳には俺がいる


一瞬の隙を突き桜の花びらが

君にファーストキス


君は花びらを摘まむと

俺の唇にそっとつけて


「ファーストキス

とられちゃった お相子だね」


頷く俺の唇に

柔かな唇が重なる


何時までも続け


君と抱き締める

俺たちの初恋




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る