創造神の神殿4
出現した扉を潜り神殿内部に足を踏み入れると、レベル1の時は小屋のようだった白い建物に、今度はステンドグラスなどの装飾を交えた立派な一軒家が堂々と建っていた。
小さな教会くらいの大きさである。
だだっぴろい白の空間だけだった庭も謎の草木が生え、どこまでも続くという訳ではないが、そこそこの広さを持つ綺麗に整えられた空間へと早変わり。
神殿の大きさがまだそれほどでは無いから威厳はないが、しかし神聖な雰囲気を感じさせるには十分な面持ちを持っている。
建物内部に入ると以前と変わらず机と椅子にパソコンが置かれており、祭壇のような場所があるだけだが、やはり空間が広くなったことでそれっぽさが出てきていた。
【天使:NoName】
おかえりなさいませ創造主よ、早速ですがお知らせがあります。
創造神の神殿がレベル2に到達したことにより、タイムマシンが使用可能になりました。
タイムマシンはこの時代を中心として、現在は百年後、千年後、一万年後の未来まで時空を超越し移動する事が出来るようです。
ただし時空間移動には制限があり、今のタイムマシンですと移動した人物は凡そ半日で、元の時代へと強制送還されるでしょう。
また、意図的に元の時代に戻りたい場合は、ログアウトを実行して頂ければ搭乗した者も含め全員が神殿内部に送還されます。
ログアウトせずに搭乗者が死んでしまった場合も同じ対応となります。
これらは創造主であるあなた様も、そしてマシンに同乗するお客様も同様の条件でございます。
早速タイムマシンに搭乗しますか?
【《YES》/《No》】
【創造神】
過去に向かうことはできないのか?
【天使:NoName】
現在は出来ません。
しかし創造神の神殿のレベルが上がり、機能が解放されていけば可能性は十分にあります。
過去には戻れないらしいが、だいたいタイムマシンの仕様は分かった。
現在は行動制限が半日というデメリットこそあるものの、それでもこちらの時間軸に戻って来た時に、ベースとなる本来の時代の時間が進んでいなければ、何度でも同じタイミングで向こうに向かえるはずだ。
たぶんこの感じだとクールタイムとかもあるとは思うが、聞く限りだとそれ以上のデメリットは無さそうだな。
やってみて損は無さそうな内容だったので、迷わず搭乗を選ぶ。
乗員は俺と紅葉の二人だ。
時代は一万年後を指定。
【天使:NoName】
承知致しました。
それでは時空の旅をお楽しみ下さい。
そうしてこの神殿から俺達の姿は一瞬で搔き消え、気づくとだだっ広い荒野に取り残されていた。
タイムマシンというくらいだから乗り物を操縦とかするのかと思ったが、そういうタイプではないようだ。
「ふーん、あの国境付近の町って一万年後は滅びて、もう荒野になってるんだな。意外だ」
「な、なんじゃぁ!? 急に目の前の景色が変わったぞい」
案の定いきなり転移してきた紅葉が驚いているが、まあ何回か移動しているうちに慣れる。
それにしてもあの多種族で栄えていた人間種の町が荒野ね……。
いったい何があったのだろうか。
まあ一万年もすれば国が新しく出来たり、また滅んだりしてもおかしくはないが。
町の近くに生い茂っていた草木などの自然も綺麗さっぱり無くなっているのには違和感がある。
考えられる要因としては森林伐採のし過ぎか、戦争なんかで焼き払われたかだろうけど、……さすがに来たばかりでは答えは出ないな。
「大丈夫だ紅葉。ここは俺の力で転移してきた一万年後のさっきの町だよ」
「ふぁ……?」
理解しているんだかしてないんだかは分からないが、とりあえず説明を行っておく。
紅葉は性格が緩く抜けているところもあるが、時間という概念が理解できない程馬鹿ではないので、そのうち落ち着いたら理解するだろう。
あたりをキョロキョロ見回して「ふむ」とか、「一万年かー」とか言ってるから、たぶんもう慣れてきているんじゃなかろうか。
意外と適応力が高い。
「それはともかく、こうして荒野ばかりでは何もする事がないな」
「大した広さじゃが、いかんせん殺風景じゃのー」
とりあえずあてもなく歩くが、草木も含め生命足り得る存在が見当たらない。
岩とか砂とか土ばかりだ。
次に一万年後に来ることがあったら、今度は別の場所でタイムマシンに乗ろう。
そうして特にやる事もなくとぼとぼと辺りを探索していると、突然紅葉が立ち止まり、耳をピクピク動かし始めた。
「お? 何か見つけたのか?」
「うむ。何やら大きな生物が戦っている音がする。それに近づいてきておるな」
音がするという方向に顔を向けると、空に点のような大きさの飛行物体がこちらに向かってきていた。
その飛行する点は徐々に大きくなり、加速度的にその姿を明らかにさせていく。
いや、というかめちゃくちゃデカイ。
既にデカすぎて距離感が分からないぞ。
大丈夫かこれ?
「お、おい紅葉。あれ、なんだと思う?」
「あわ、わわわわわ!! なんじゃあれはああああああ!?」
距離感が狂っているのでどのくらい大きな生物かは理解できないが、明らかにこっちを意識して向かってきている事が分かる。
そりゃ紅葉じゃなくてもビビるわ。
俺だって搭乗者が死んでも大丈夫だと知っていなかったら、こんな呑気に質問しているどころではなかっただろう。
とりあえず危険を感じた紅葉が俺の後ろに隠れる。
まあ、あの点のような大きさに見えた巨体が、こんな馬鹿でかい山みたいな姿になるまで大した時間をかけていないんだ。
その飛行スピードは相当なものだろうし、逃げても隠れても無駄だ。
「GUOOOOOOOOOOO!!!」
「あ、こりゃ強制送還コースだな」
そのまま謎の巨大生物は目の前に迫り、大口を開けて俺達を飲み込み、もとい瞬殺した。
なんだ、このバケモン。
気づくと俺と紅葉は、タイムマシンに乗る前の神殿の内部に戻って来ていた。
【天使:NoName】
おかえりなさいませ創造主。
一万年後の未来はどうでしたか?
なお、タイムマシンの再使用にはクールタイムが必要です。
しばらくお待ちください。
「び、びびったぁ」
「……んぁぁああしぬぅうううううう、う? ……し、しんでない? ……あ、なんじゃ、夢か」
「いや、夢ではないぞ。一旦俺が即死したことで元の時代に戻って来ただけだ」
うん、ということで一万年後に向かうのはしばらくやめよう。
あんなバケモノが跋扈している時代に、今のレベルで向かうのは無謀だ。
たぶんあれ、下手したら龍神と同じくらいか、もしくはそれよりも強いんじゃないかな?
なんか色んな生物が合体したような見た目をしていたし、恐らく個として存在しているような生き物じゃない気がする。
なにかもっと悍ましい、謎の集合体だ。
一応出会った事のある生物なのでリプレイモードで名前を確認してみよう。
えーっと、どれどれ。
【終焉の亜神】
全ての生き物と時代を終わらせる。
あ、うん。
やっぱヤバイ奴だった。
こんなバケモノがどうして生まれたのかは分からないが、未来には終焉を
というか説明が短かすぎて詳細が一切不明だ。
一体何がどうなって、こうなった……?
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