異世界創造のすゝめ
たまごかけキャンディー
プロローグ
「なあ、魚って空を飛んだりすると思うか?」
「何言ってるんですか先輩? というかなんで魚が空を飛ぶんですか、完全に物理法則とか無視してますよ」
とある会社のオフィスで、二人の男が呟く。
片や黒髪に黒目の標準的な出で立ちの中年男、三十二歳独身の
最近ちょっと腹が出てきたのが悩みらしい。
片や茶髪にカラコンの、一見するとガラの悪い不良にも見える出で立ちの若手社員、後輩の
ちなみに斎藤の部下である。
「そ、そうか……、そうだよな。いや最近やってるゲームでな、そういう生き物がいるんだよ」
「へぇ~、ファンタジーものですかね? ちなみにタイトルは何ですか?」
「異世界創造のすゝめ」
「え?」
宮川は聞き返す。
「いやだから、異世界創造のすゝめっていうアプリ」
「いや、知らないゲームですね。俺が知らないなんて、よっぽどマイナーなのかなぁ」
斎藤の言葉を聞いて宮川はさっそくアプリを検索するが、どうやらヒットするものが無いらしく、険しい表情を浮かべる。
「……見つかったか?」
「いや、見つかりませんね。……もしかして先輩、俺のことからかってますか?」
「そうか。いや、見つからないならいいんだ。忘れてくれ」
「はぁ、そうすか?」
二人は斎藤の持つ謎のアプリ『異世界創造のすゝめ』について議論を交わす。
宮川は何か腑に落ちない様子のようだが、見つからないものは見つからないのでそれ以上の詮索は控えたようだ。
そして切り替えるように次の話題へと移る。
「というか先輩、今日の昼ヒマですか? メシ食いに行きません?」
「いやパスで、今日は残業したくないしな」
「えー、たまには後輩を連れてってくださいよ。もちろん先輩の奢りで」
その言葉を聞いた斎藤は露骨に面倒臭そうな顔をした。
「ダメったらダメだ。また今度な。せっかく仕事も残さず帰れるんだ、俺にもプライベートの時間くらいくれ」
「へーい、わかりやしたー」
「なんか山賊の下っ端みたいな喋り方だぞ」
「気分ですよ、気分」
斎藤は部下の軽い態度に溜息を吐きつつも、確かに飯くらい奢ってやるべきだったかと反省し、この埋め合わせはまた今度しようと考える。
一応は上司としての責任も感じているようだ。
なんとも苦労人な性格である。
意外と真面目なのかもしれない。
しかしそんな日常を満喫しながらも、『異世界創造のすゝめ』をやり繰りする平凡な中年の男性である斎藤健二は数日後、突然地球上から姿を消すこととなる。
手塩にかけて育てた惑星、『異世界創造のすゝめ』のゲームデータと共に。
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