106-あれはPT専用
私はおかしな姿で気絶している二人を叩き起こしてどうして戦闘になったのかを
「ええと、外道丸さんはなぜここへ?」
そもそもの原因である外道丸さんがなぜ店を離れてエードに来たのかを聞いてみた。
「俺はただマルレリンドに会いに来ただけだ」
「何だと!?俺は青鬼だマルレリンドを出せ!といったではないか!どう考えても殴り込みであろう!」
サキさんの方をちらっと見ると、無言でうなずいていたので事実なのだろう。ずいぶんな言い方だけど、いきなり刀を抜かなかっただけましなのかな?しかし私に会いに来た?何か用事でもあるのだろうか?
「確かに言い方は悪かった!だが、お前のへなちょこ[炎拳]を避けながらちゃんと友人だと言っただろ!」
「何だと貴様!やはり決着をつけなくてはいけないようだな!」
レンさんはいつの間にか手甲を装着して臨戦態勢を取っていた。
はぁ~外道丸さんは余計な事を言わずに喋れないものですかね……。どうやら戦闘ではなくただの喧嘩だったようです。
私は次元リュックを開けて修行のついでに作っておいた[使ってみたい武器シリーズ]の中から見た目のインパクト重視で[トゲ金棒]を選び取り出した。この武器は黒い鉄の塊に棘が生えていて、その見た目から鬼の金棒と呼ばれているものだ。この武器は[棍棒]Lv9と両手持ちスキルの[大武]Lv9で振り速度が極端に遅くなるというデメリット無しで扱えるようになるのだが、私の場合は力で解決できるので問題なく使用できる。
凶悪な見た目の武器を今にも喧嘩を再開しそうな二人の間に振り下ろした。ドスンという音と衝撃に二人は静かになった。
「落ち着きましたか?」
「「はい!」」
やはり見た目は大事ですね!もっといろいろな武器を試してみたいですね。
「それで外道丸さんは私になにか用事でしたか?」
「えーとお茶でも飲みながら話でもしようかと……」
へ?お茶?何か重大な用事でもあるのかと思えば……。
「そんな事してる暇があったらあなたは邪竜をどうにかしなさいよ!」
「そんなこと言ったって……あれはPT専用だし!超越者が最低2人居ないと結界が開かねーんだよ!詰んでるんだよ!」
私は任務を開いてワールドクエストのタブを見た。
ーーーーーーーーーー
ワールドクエスト
・最終決戦!復活した邪竜を討伐せよ![PT専用] NEW!
ーーーーーーーーーー
うん……確かにPT専用だわ……。一人じゃPT組めない……。
「あの……私の任務にワールドクエが出ているのですが……」
驚いた顔で外道丸さんは空中で手を動かしてなにか操作しだした。何をしているのかと見ていたらピコンという音がして私の前に半透明のメニューが現れた。
ーーーーーーーーーー
PT申請 外道丸
許可/拒否
ーーーーーーーーーー
私は許可を押してみた。
<PT「これ組めたりすんの?」が結成されました>
「おおおおお!邪竜の結界が崩せるぞ!」
ああああっ!なんとなく流れでPT組んでしまいましたけどもしかして巻き込まれた!?
「結界が崩せるだと!?」
「行方不明の超越者とはあなたの事でしたか」
「あ~あ結局またマルレ巻き込まれてんじゃん!ってか自分から首を突っ込んでない!?わざと?わざとなの?」
レンさんは邪竜に戦いを挑めることに反応し、サキさんは外道丸さんが超越者だったことに反応し、アリッサは私がまた人の物語に首を突っ込んだことにあきれていた。
「えっと……誤解が解けたということで今日は解散で……」
私はPT離脱ボタンを押してPTから離脱し、何もなかったことにして帰ろうとした。
「ちょ!まって!」
「マルレ待ってくれ!」
「待って下さい!」
「はぁ~お姉ちゃんもう観念しなよ……」
どうやら私が邪竜戦に参戦するのは決定事項のようですね……。
乗りかかった船ですこうなったら邪竜でもなんでも退治してやりますわよ!
私はそう決意して、何から話すべきかいろいろ考え出した。転生とかもろもろの話は、どうしようかしら? 私がうーん、うーんと唸っているとアリッサが業を煮やして話しはじめた。
「あーもう!外道丸さんとマルレが話すと、ややこしくなるから全部私が説明します!」
アリッサは、外道丸さんがどうして鬼になったのかを話し、私達が前世の記憶を持っていてみな日本という国に住んでいたということまで話してしまった。
「ちょっと!転生のことまで話す必要あった?」
「超越者じゃないのに結界壊せる理由はなんて説明するのよ!それに先に話しておいた方が良いこともあるのよ」
私とアリッサが言い争いをしているとレンさんが口を開いた。
「そうか……カクドウセイ様が故郷に似せて作ったこの国……。マルレが来たいと言っていた本当の理由がわかった。そうか二人はカクドウ様と同郷だったか……」
「信じられないけど、お二人が鎖国してる我が国の所作が完璧だったことがその証拠ね……」
レンさんとサキさんは突拍子もない前世の話をきいて信じられないといった感じでしたが、パズルのピースがピタッとハマるように色々と疑問が解決し徐々に納得していった。
「私達が邪竜討伐に参加する代わりに1つ聞いてほしいお願いがあります」
「お願い?何言ってるのアリッサ?」
アリッサはなにか考えがあるようで交換条件で何かを叶えてほしいようだ。
「こちらとしては戦力は喉から手が出るほど欲しい……可能な範囲で応えよう」
「この国の食文化や生活様式は私達の住んでいた日本とほぼ同じです。なので[建築許可地域]に日本人村の建設許可と転生、転移者の入国許可がほしいです」
日本人村?アリッサはそんな事を考えていたの?いったい何時からそんな事を……。
「アリッサ?どういうことかしら?説明してもらえる?」
アリッサは私の問いかけに応じてポツポツと語りだした。転生者が自分ひとりだと思っていた頃の孤独感と誰にも言えない悩みに苦しんでいたこと、カクドウセイさんが同じ境遇の人を探し回り諦めた末この国の文化を作った気持ちが痛いほどわかると……。そして彼の真の目的は、日本人転生者の安住の地としてクロービに招待することだったのではないかということだった。
「こちらの世界に来てからずっと孤独だった俺にもその思いは痛いほどわかる……。今思えば、倒れそうな俺に無理やり寄りかかってきた女共も不安でいっぱいだたのかもしれないな」
孤独や拭えない不安があると共感している二人……。
この世界に来た理由をすっかり忘れて冒険者になって楽しむぞー!なんてお気楽な考えなのは私だけだったみたい……。ずっと楽しそうだったアリッサがそんな悩みを抱えてたなんて全然知らなかった……。
「私はさ、マルレが……お姉ちゃんが追いかけてきてくれたから、なんとかやってこれたけどきっと苦しんでる人もいると思って日本人村の計画を考えていたの」
「わかった!そういうことなら私に任せろ!必ず将軍から許可をもぎ取ってみせよう!」
レンさんは胸を張りそう宣言した。日本人村!確かに魅力的です!あの賑やかだったジャオンの[建築許可地域]を思い出すと心が踊る。
「わかりましたアリッサやまだ見ぬ転生者のためにマルレリンド・ドレストレイルは力を貸しますわ!」
いざとなれば家の力を使ってでも協力すると言う意味を込めて家名をつけて名乗った。
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