104-贈り物
生産ギルドで奥義を習得した私は武器を売ったお金で豪華な昼食を済ませた。それから魔法ギルドに行き奥義試験を受けた。試験はギルドマスターに増強魔法Lv9の鬼人化をかけるだけで終わってしまい無事に奥義を習得した。しかしこの奥義[信頼譲渡]は私が使うとものすごい危険なので使わないほうが良さそうだ。
私はとりあえず魔法露天を出しながら、レンさんへの贈り物を考えることにした。すぐに移動してエードの転移門広場にいたアリッサと合流した。広場で露天を開いている彼女の隣には、また新しい召喚生物がいた。タテガミの部分や肩口に炎が揺らめいていて、体には鱗がある馬がいる。いやどちらかと言うと馬の形をした龍と言った方がしっくり来る。あれは召喚Lv9の[
「お帰りマルレ試験どうだった?」
「楽勝でしたわ」
「そうだよねなんか拍子抜けって感じするよね」
「そうですわね、ゲーム通りなら魔力調和なんかステータスを見られるだけよ。でも召喚は厳しいので私も一緒に行きますわ」
「見られるだけって……やっぱりLv8、9が魔力増加だからしょうが無いかもね。でも召喚は厳しいんだ~楽しみだな~」
「初PTになるわね!」
「お~!ますます楽しみ!」
さて、そろそろレンさんへの贈り物を考えましょうか!彼は武器も防具もいらなそうですよね?でも素手戦闘なら手甲が使えそうだけど……。普通のものじゃ魔法を妨害しそうよね。そうなるとクロービとレイクランドの技術を組み合わせるべきかな?
とりあえず私は魔法と相性の良さそうなミスリルで手甲を作った。
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ミスリルの獣王手甲
地下に住む一族が愛用した白銀色の金属で出来た獣王の手甲。拳で殴ることも指先についた爪で切り裂くこともできる手甲型の武器。ミスリルで作られた手甲は空気中の魔力を吸収する。
(魔力自然回復量1%上昇)
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よし!これを素材にレイクランドから持ってきた火の魔石でも組み込んでみようかしら?
私は次元リュックから作業台を取り出しその上に手甲を置いてどのように改造するか思案した。
まずは手甲の内側に魔力回路を彫り込んで……。
「マルレ?それなにしてるの?」
「お世話いなっているレンさんに贈り物するために手甲を改造するのよ」
「そうなんだ、それで道具も何も持ってないけど、どうやって改造するの?」
「道具なんかいりませんわよ私の研究室に道具があったの見たことあります?」
「そう言えばないけど……まさか金属加工を……」
「そうよ、エンド・オブ・ブラッド!」
私は流魔血を全開にし指先に魔力を集中させ手甲に爪で跡をつけるようにして魔力回路を彫り込んでいく。
今回はそんなに難しく考えずに杖に使用する方式をそのまま使うことにする。これは魔石に術者の魔力の動きと同じ動きをさせ単純に威力を上げる方法で、どんな魔法にも対応できる広く浅く補助する初歩的なものだ。
よしこれで溜められる魔力が増え火属性拳法の威力も上がるはずです。
「あの……マルレ?素手でミスリル傷つけられるってことは……相手が防具を着てても……」
「そうですね……じっとしてくれていれば変形させるぐらいできるわよ、でも殴ったほうが早いですけどね」
私は甲の部分に魔石を入れる穴を開けながらそう答えた。
「そっか~鎧のように硬そうな大蛇を粉砕してたもんね」
よしここに火の魔石を入れて完成ね。インベントリに入れてメーニュー表示して性能を見てみましょ。
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ミスリルの炎獣王手甲
地下に住む一族が愛用した白銀色の金属で出来た獣王の手甲を改良した武器。拳で殴ることも指先についた爪で切り裂くこともできる手甲型の武器。火の魔石により火系魔法の威力が上がる。
(火系魔法の威力が20%上昇する、火系魔法の魔力使用量が4%上昇する)
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「うん!力作が出来たわ!」
「へ~すごいね私にもなんか作ってよ~」
「アリッサのならLv10になって真っ先に一番貴重な金属使って作ったわよ」
「え!?」
私は[陽光の指輪]を取り出しアリッサに見せてあげた。
「この指輪は時間によって色が変わるんですよ綺麗でしょ?」
「うん……すごくきれい」
「ほら手を貸して、私がつけてあげますわ」
私は杖をもたないアリッサの左手を取り指輪をはめようとするも人差し指には入らなかった。適当に作った弊害ね……とりあえず入る指に入れておきましょう。
「どう?」
アリッサは黄色から夕焼け色に変わりつつある指輪をしばらく眺めると、とろけるような笑顔になり私にガバっと抱きついてきた。
「お姉ちゃん大好き~」
「ふふふ、喜んでくれたみたいで嬉しいわ」
すっごく喜んでくれたわね!贈り物ってなんだかこっちも嬉しくなりますね!なんだか癖になりそうだわ。よし!さっそくサキさんとレンさんにも届けに行きましょう!
ずっと指輪を見ながらニヤニヤしているアリッサを広場においてガオゴウ家に戻った。
仲居さんにサキさんとレンさんの居場所を聞いたところ、サキさんは道場で鍛錬中でレンさんは、自室で書類仕事をしているというので、まずはサキさんに会いに道場に行くことにした。
道場に入るとサキさんは拳法着姿で刃のついた薙刀を振り回していた。訓練用のものより重いはずなのにその動きは変わらず鋭い……。今から贈る武器も使えそうで一安心です。どうやら一息ついたようで、見学していた私に気がつくと手ぬぐいで汗を拭きながら私のところに来てくれた。
「こんにちはマルレリンドさん、あなたも訓練ですか?」
「いえ、鍛冶師スキルがLv10になった記念にお世話になっている人に贈り物をしたいと思いまして……」
「あら!そんなお気遣いなさらなくても良かったのに!」
「これなんですが、どうでしょうか?」
私は、インベントリからオリハルコン青龍偃月刀を取り出しサキさんに渡した。
「この吸い込まれるような刃、片手でも両手でも扱えるちょうどよい柄の長さ、そしてこの重量感」
うっとりとした表情で武器を眺めるサキさん。装飾品より武器のほうが良いだろうという直感は当たっていたようで嬉しかった。
「この武器の真価は振ってこそわかります!どうぞ試してみて下さい!」
「そうなの!?ではちょっと失礼します」
そう言って彼女は嬉しそうに青龍偃月刀を構えて最初の一振りをした。
あの大きさの武器からは出るはずのないヒュン!という高い風切り音がした。
「軽い……振るときだけ軽い……。でも重さはそのまま……威力を落とさず速度が上がった……すごいわ」
「喜んでいただけたようで嬉しいですわ」
「素晴らしい武器をありがとうございます」
お礼を言うとすぐに手になじませようと一心不乱に武器を振り始めたサキさんに気が付かれないようにそっと道場を後にした。
さて!次はレンさんですね!初の改造武具が上手く行くかどうか……。製法はレイクランドの杖とほとんど同じなのできっと大丈夫なはず!?
私は、少々の不安をいだきながらレンさんの部屋へと行くことにした。襖の前の畳張りの廊下に正座し「失礼します」と声を掛け襖を開ける。するとそこには書き物机の前であぐらをかき書類に目を通しているレンさんがいた。
「おお!今ちょうどマルレが作った武器の納品書を確認していたところだ」
「そうですか武器の行き先はこちらでしたのね」
私はそう言いながら書き物机の向かい側に座った。
「毎週邪竜の手先を相手に武器を消耗するからな、それでなにか用事かな?」
「はい、お世話になっているお礼に、これを作ってみたのです。」
私はインベントリからミスリルの炎獣王手甲を取り出すと、レンさんが書き物机から書類をサッとどかしたので、そこに手甲を置いた。
「獣王手甲?とは少し違うようだが?」
「はい!これは炎獣王手甲と名付けました!クロービの技術で作った手甲にレイクランドの技術で魔石を取り付けました」
「なんと!そんなことが可能なのか!?」
「完成はしましたが私は火属性がないので試せていませんが……」
「そうか、なら私が試してみよう」
レンさんは書類をほったらかしにして、私を屋外訓練所と呼ばれている広場に連れて来た。訓練場は何体もの木人形が立っており、夜になったら不気味な雰囲気になりそうでした。
レンさんは、口元を緩めながら手甲をはめると、鋭い爪のついた指をワキワキと動かし、具合を確かめている。獅子のようなレンさんの姿に爪付きの手甲はすごく似合っていた。
「よし……魔法を使ってみる」
私はピクツを作り上げたときのような高揚感を感じながらレンさんをじっと見つめた。
「
拳を覆うはずの炎は、違った形で発現するのだった。
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