027-学科選択

 王立魔法学園では3年生で学科選択がある。


[戦闘魔術科]就職先は騎士団と双璧を成す[魔術師団]

 魔法による戦闘技術や高度な戦術を専門的に学ぶ。


[魔道具まどうぐ研究科]就職先は王国直轄の[魔道具まどうぐ研究所]

 魔力を使った道具の開発研究を学ぶ。ポーションなどの薬物そして生活用品から武器にまで及ぶ魔道具まどうぐについて学ぶ。


[公共事業科]就職先は王族の補佐や進言などをする。[枢密院すうみついん]

 自然災害や都市計画などの王族が主だって動く公共事業について学ぶ。


 以上の3種類の学科がある。


「アリッサはどこの学科に行くの?」


 ソファーの上でダラッとしたまま話題を変える。


「私はやっぱり[戦闘魔術科]かな?」


 やはり光属性の強力な回復魔法は、戦闘には欠かせないものですから、予想はしていました。


「マルレは、決めたの?」


 [戦闘魔術科]はそもそも魔法が使えないし、基礎建築学に苦戦した私は[公共事業科]も難しそうです。だから消去法で[魔道具まどうぐ研究科]なのです。しかし、本音は少しでも魔法っぽいことがしたいなんて理由です。この事は、また暗くなりそうだから、伏せることにしました。


「やはり消去法で[魔道具まどうぐ研究科]ですね」

「やっぱりね……。ってことは別のクラスだね~」

「そうですね。寂しくなりますね」

「そうだね~、でも部屋も一緒だしラウンジにも顔出すでしょ?」

「そうですわね。授業中は話せませんから過ごす時間はあまり変わりないかもしれませんね」


 ラウンジまで一緒に行くのが待ち合わせに変わるぐらいかしら? アリッサも「あまり変わらないかもね」と言ってますし、逆に話しの幅が広がるかもしれませんね。


 それにしても、もう3年生ですか長いようで短く感じますね……。冒険者になることを夢見て3年間修行し、2年間勉学に励みあと1年でこの学園も卒業……あれ……。


 追放計画を完全に忘れてました!


 ああああああああああああ! どうしましょう! 1年で間に合うの!?


 ととととっとりあえず現状を把握しましょう。


 ええと! アリッサとの仲……大親友! というか同居中です!?


 イジメの事実……なし!


 周りの評判……慈愛じあい薔薇ばら


 アークとアリッサの恋模様……。皆無!


 私とアークとの仲……誰が見てもわかる仮面婚約者!


 アリッサとの仲に嫉妬してエグい嫌がらせをしたといううそが通用する確率……0%!


 詰んでる! どうしよう! 1年では絶対に無理です!


 なりふりかまっていられません! アリッサ本人に協力してもらう他にありません!


「マルレ!? どうしたの! 顔色が真っ青だよ?」

「いえ重大なことを忘れていたもので……」

「もしかして冒険者になるための作戦の事かな?」

「ええ……。実はまったく進んでいなくて、今やかなりの難題でして……。ぜひアリッサの力を借りたいのです!」


 そうなのです……。進んでいないどころか後退しまくり、スタート地点よりも後ろにいるのです。


「そうなの? マルレの頼みならどんなことでも聞いてあげるよ!」


 やはり持つべきものは親友! もしかしたらうまくいくかもしれません!


「私がアークとアリッサが親しいのに嫉妬するのです。そして、えげつないイジメをして婚約破棄&追放処分になるという計画ですの」


 私は計画していたことをアリッサに打ち明けた。それを聞いたアリッサは涙を流しながら震える声で答えた。


「追放……? 冤罪えんざい……? うそ……まだ終わってなかったの?」


 そう答え終わるとアリッサは親しい人をなくした遺族のように号泣し始めた。アリッサは、とても話が聞ける状態ではなくなってしまった。


『無理でしょ! バカじゃないの?』


 ぐらい覚悟していた私には大泣の理由がまったく思い浮かばない……。


 冤罪えんざい? 確かに冤罪えんざいですが、終わってなかった? いったいどういうことでしょう? 泣き続ける理由がわからず、ただそばにいることしか、できないでいた。


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