ジュラシック・テイル ～猫耳転生と恐竜少女～

第108話・ご先祖様

「マジ？」

「ああ……マジで」

　やはり労働環境に問題が？　もしかしたらティラノだけじゃなくて皆も続いて離れて行ったり……

「うう……かんにんやで～」

「お～い、亜紀っち～。戻って来てくれ～」

「また妄想暴走しているだすな（キリッ）」

「離れるっつってもよ、なんつーかアレだ。俺様の折れた木刀の代わりを探しに行きてぇんだ」

　ああ、そうか。バルログとの戦いでティラノの木刀はポッキリと……。ガイアの虹羽根（アイリス・ウイング）みたいに“本人が傷つく仕様”の武器じゃなくて良かったけど、替えが利くものなのか？

「何か心当たりあるの？」

「一応。ジュラっちに相談したらさ、なんかエクスカリバーってのを手渡されたんだけど」

「なんでも出てきそうだな～、アンジーの四次元フードは。つか、エクスカリバーって伝説の剣じゃん……」

「木刀よりもパワーは感じたんだけど、どうも手に馴染まなくてな」

　俗にいう“コレじゃない感”ってやつなのかもしれない。何にしても、ティラノのオーラ量に耐えられるだけの強度があるのは当然の条件として、ティラノ自身の“手に馴染むかどうか”が重要って話なのだろう。

　しかしそれにしても……

「エクスカリバー（あんなイケメン）を振るなんて、ティラちゃんって罪な女よね～」

「訳わかんね。話進めていいかー？」

「あ、はい……」

「それでさ、いつも煙噴いている北の山あんだろ？」

「あのめちゃくちゃ遠くに見える山？」

「そう、あそこに恐竜達の墓場があるんだ。そこにならレックス・ディザスターに耐えられる武器があるかもしれないって思ってな」

　聞いた事あるな。映画か漫画だけど。死期を悟った恐竜が、先祖の眠る墓場に行く……映画はマンモスだったか。そこは“その生命”が始まってからの骨が何十何百と積み重なっていく聖地。それが火山の麓にあるのか。

「そこには俺様の遠いご先祖様、ダスプレトサウルスの爺さんが眠っているらしいんだ」

　普段は解りやすく“オーラ”なんて呼んではいるけど、結局はその個人が持つエネルギーの事で、ところ変われば生命力とか霊力とか気とかいろんな呼ばれ方をする。自然のエネルギーも、地球という“個人”が持つオーラと言えなくもない。そのオーラが噴き出す火山の麓に眠る先祖達。そこに力が集まるのは道理だ。

「それ、自分も聞いた事あるっス。歴代最強の初代総長っスよね、ティラさん！」

　流石先輩後輩の間柄。ルカも知っていたか。って、初代総長ってなんぞ！？

「自然に生き、自然に還ったご先祖様達が、自然のエネルギーが溜まる場所に眠っているんだ」

「ティラちゃんが求める武器が、そこから生み出されるんじゃないか、と？」

「ああ、レックス・ディザスターは自然を味方にしないと撃てないと思うんだ。だから……だから頼む。俺様に、武器を探しに行く時間をくれ」

　もちろんウチも行かせてあげたいとは思う。武器がないとティラノも力を出し切る事は出来ないだろうし、この先、今迄と変わらない技のままでは魔王軍に勝てない場合も出てくるだろうから。

「でも、確証もないし……それに、その間に魔王軍が攻めてきたらと思うと、ねえ」

「姐さん、行かせてあげてくださいっス！　ティラさんの抜けた穴は自分達で何とかしますから」

　自分……達（・）？　ルカの声に振り返ってみると、そこにはプチやガイアをはじめ、恐竜人（ライズ）達が全員集合していた。ラミアやバルログまでもだ。

「マ、マスターさん、ティラノさんを行かせてあげて下さい～」

「やっとバカティラノがやる気になったのニャ！」

　といってティラノの尻を“ぽふんっぽふんっ”と叩くベルノ。

　う～ん、皆に懇願されてしまった。これで断ったらウチ悪人じゃんか。……あれ、いやまてよ。この状況って……この外堀を埋めて逃げ場をなくす交渉の仕方ってさ。

「アンジーの入れ知恵だろ」

「あ、やっぱりわかっちゃった？」

　ったく、『わかっちゃった？』とかいいながらアゴチョキでドヤるアンジー。しかたねぇ。アンジーもこき使うぞ。

「わかった。だけど、一つだけ条件があるから」

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