2 奇妙な二人組

 小夜せれなは名前こそアレだが、人付き合いが上手うまいわけではない。こればかりは親に散々当てこすっているが。

 そもそも、今回とりあえず待ち合わせということで聞いていたので、よもぎが人を紹介しようとしていたなんて初耳である。いや、音で聞いてるわけでもないけど。


 せめてどんな人たちか教えてくれてもいいのに、と思いながら、スマホの画面から顔をあげて目の前の改札を見る。

 丁度電車がやってきた直後なので、それなりの人が改札から出てきた。

 そろそろ時間だが、さて、この中によもぎの言っていた人たちはいるのか。


 じっと改札を観察していると、不意にばちっと外国人らしい眼鏡の青年と目があった。

 その眼鏡の奥の冷や汗が出るほどするどい目つきに、慌てて小夜せれなは目をそらす。


 しかし、ちら、と盗み見ると、彼は何やら隣の女性に小夜せれなを示すような動作をして、その女性も一つうなずいた。

 そして、そのまま黒髪をショートウルフにしたその女性がこちらに向かってくる。

 小夜せれなよりは少し年上だろうか、シンプルなデニム地のスキニーパンツに、上はややオーバーサイズ気味のパーカーを羽織はおっている。


高里たかさとよもぎと待ち合わせしてる、松波まつなみ小夜さよさんですか?」


 あー、字面じづらしか見てないんだな、と小夜せれなは一瞬にしてさとった。

 そして、その小夜せれなの微妙な表情を察したらしく、女性が首をかしげる。


「あ、ええと、その、小夜って書いて、読みは、せれな、なんです……」

「え、ああー、はい、なるほど? セレナーデ小夜曲……苦労されてますね」


 すぐに答えに行き当たった上で浮かべられた同情的な苦笑に思わず、小夜せれなはすみません、と返す。

 女性の後ろに立っていた、先程目があった外国人がぼそりと小夜せれなに聞き取れない音量で何か言うと、それを聞いた女性の肘鉄砲ひじでっぽうが吸い込まれるような勢いで、青年の上体に入った。

 ものすごく痛そうだし、実際青年はけふけふとき込んでいる。


「失礼。わたしは唐国からくにひろ。こっちのもやしはロビン・イングラム。よもぎさんからの連絡は受けてますよね?」

「あ、はい、遅れるって……」

「ひとまず近場のファミレスにでもいきましょうか。ロビン、よもぎさんにも送っといてください」

「けほ……わかった」


 そう言ってスマホを取り出す様子からして、このロビンという青年は、どうやら素の目つきが悪いだけのようだ。

 ひろのぞんざいなあつかいに文句を言う事なく、したがっている。


「とりあえず一報、送ったよ。後で位置情報も送らないと……」


 またばちりと目が合って、小夜せれなは慌てて目をらした。

 流暢りゅうちょうしゃべるものだなーと思っていただけなのだが、その目を見ると、なんだかとがめられてる気がするのだ。


「ロビンの目つきの悪さは筋金すじがね入りですからねえ」

「否定できないから困る」


 その様子を見ていたひろの言葉に、ロビンがそう返す。

 どうやら、意外と、軽い人たちなのかもしれない、と小夜せれなは思った。

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