第11話 物件探し

 レリームの街に来て一日。

 今日はテイマーギルドに物件の紹介をしてもらう予定だ。


『オレがくつろげるくらい大きな屋敷にするんだぞ』

「無茶言うな……」


 ルークが一体どれほどの物件を想像しているかはしらないが、屋敷というくらいだから王侯貴族が住むような居住を求めていそうだ。

 太一は誰が掃除をすると思っているんだと言いながら、ルークと一緒にテイマーギルドの受付へと向かった。



 ***



「おはようございます」

「タイチさん! おはようございます!」


 テイマーギルドは、今日も人がいない。


(まあ、空いてるから俺はいいけど……)


「何かいい物件ありましたか?」

「はい!」


 太一が声をかけると、シャルティが三枚の用紙を取り出した。実は昨日、カフェを開けるいい物件がないか探しておいてもらったのだ。


「ありがとうございます!」


 目を通すと、どれもカフェとして使えそうな物件だった。


「私的には、ここがおすすめですよ。テイマーギルドからも近いですし」


 シャルティが指さしたのは、街の中心部にある建物だ。二階建ての物件で、一階部分を貸し出すことができるようだ。

 周囲には飲食店や雑貨屋などもあり、人通りはかなりいい。


(ん~、カフェをやるなら申し分はないけど……)


 これから魔物を増やす予定だし、何より……街の中心だと人気店になって休む暇がなくなってしまうかもしれない。

 飲食系統がブラックというのは、よくある話で。


「……個人的には、もっと落ち着いた場所がいいですね」

「残念です。でしたら、街のはずれか、外壁から出たところにある物件がいいと思いますよ」


 街の外れにある物件は、間取りを見る限りなかなか広そうな一軒家だ。店舗部分も広いし、休憩室にできそうな部屋と、二階にも三部屋ある。


 郊外にある物件も、同じく一軒家。広さも同じくらいなのだが、違う点が一つある。


「この物件、庭がついてる……!」

「裏庭ですね。従魔の鍛錬などにも使えますし、井戸もありますよ」

「運動する場所は必要だと思っていたので、すごくいいです!」


 太一が乗り気な返事をすると、シャルティは「ただ……」と言葉を続ける。


「ここは外壁の外なので、魔物が出る可能性もあります。もちろん、兵士や冒険者たちが多くいるので、そうそうそんなことは起きないと思いますが……」

「魔物か……」


 しかし、太一には相棒となったルークがいる。ドラゴンすら倒してしまうのだから、街近辺に出てくるようなおそらく雑魚のスライムなんて敵ではない。


(問題なさそうだ)


「ルークがいるので、大丈夫だと思います。ひとまず、物件を見せてもらってもいいですか?」

「はい、もちろんです!」



 ということで、太一はシャルティに案内してもらって郊外の物件までやってきた。


 街の門から歩いて約一〇分。

 物件は二階建てで、温かみのある木造タイプ。ところどころに蔦が絡んでいるけれど、それもまたファンタジーのいい味を出している。

 大きな窓からは中の様子を見ることもでき、もふもふカフェをするならちょうどいい。


 太一は大きく頷いて、心の中でイイ! と大絶賛だ。

 ルークは裏庭に駆けていき、『まあまあだな』とまんざらでもない様子を見せている。


「タイチさん、中をご案内しますね」

「あ、はい!」


 裏庭を見たところで、シャルティから声がかかった。


 中に入ると、店舗にするスペースに暖炉が設置されていた。冬につけたら、もふもふが暖を取ってそれはそれは可愛いのでは……と、想像してしまう。


(いいぞ、最高だ……!)


 奥に続くドアを開けると、キッチンになっていた。その横には小さな部屋があり、物置として使うこともできそうだ。


「ここは昔、食堂をしていたそうですよ。旦那さんがテイマーで、従魔と一緒に食材の調達をしていたとか」

「そうだったんですか。店舗として使いやすそうなので、飲食系かなとは思っていたんです」


 本格的な料理メニューを提供するつもりはないが、軽食くらいは出せるようになりたいと思っていたのでありがたい。


『ふん、狭いな……。高貴なオレに、ここに住めというのか?』

「大丈夫、俺の故郷には住めば都っていう言葉があるんだ。きっとルークも気に入るよ」

『……ふん! 四六時中お前が近くにいるなんて、疲れるだけだ!』


 と言いつつも、ルークの尻尾は嬉しそうに揺れている。


(このツンデレめ!)


 そう思ったが、太一は考えるように首を傾げる。


(デレたことはないから、ツンツンか……)


 まあ、ルークはそれでも可愛いもふもふなので余裕で許してしまえるけれど。


「二階は居住スペースですよ」


 キッチンにある階段を使って二階に行くと、リビングと簡易キッチン、六畳ほどの部屋が三つあった。

 簡易キッチンなのは、料理関係をすべて一階で行っていたからだという。


(少し古くなってるところはあるけど、全然問題なさそうだ)


 太一が満足そうにしていると、シャルティが説明をしてくれた。


「一ヶ月の賃料は、テイマーギルド所属であれば一〇万チェルです。購入もできますが、その場合はテイマーギルドランクをD以上にしていただく必要があります」

「賃貸で問題ないので、お願いしていいですか?」

「はい、もちろんです」


 仮に購入可能なランクになったとしても、この世界に来てまだ二日目。嫌になって拠点をほかの街に移す可能性もあるので、今はまだ身軽でいたい。


(まあ、昨日見た感じだとよさそうな街だけど)


 国で二番目に大きいというところも、不便なく落ち着けそうで気に入っている。王都だと、王族などもいるだろうし、あまり近づきたいとは思えない。


「それじゃあ、ギルドに戻って手続きをしましょう」

「お願いします」


 物件を手に入れたので、これでもふもふカフェに一歩近づいた。


(もふもふも増やさないとな!)


 まだまだやりたいことは山積みだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る