第24話 奇抜すぎる作戦(ヴィラン視点)




『私がブチギレるわ!』


 どうして、そういう方向性になったのかを問いただしてやりてぇな。

 しかし、モナの堂々とした姿に意見する気にはなれなかった。

 ダメ出ししたら、絞められそうだからだ。

 モナは、「反論はあるのか?」と尋ねるかのように、俺、アレン、アイリスの順に顔を見回していく。


『異論はないみたいね!』


 んなもん。

 異論の出し方がわかんねぇよ!

 突拍子もなさすぎること。

 それがどうレオにスタンピードの情報を隠すということに繋がるのか。

 ……俺には、さっぱりだ。


『えっと、それでそこから僕たちはどうすれば……?』


 アレンの疑問符をかき消すように、モナは告げる。


『私がパーティハウスを飛び出すのよ。アイリスを連れてね!』


『ええっ、私を⁉︎』


 アイリスは明らかに動揺した声を出す。


『何ビックリしてるのよ? スタンピードといえば、パーティを分割して、効率よく潰していくものでしょ? となれば、私とアイリスが一緒に動くのは自然なことだわ』


『そんなことないと思うけど』


『口答えしないで、決定事項なの!』


『えぇ……』


 急にそんなことを決められても、アイリスが困惑するだろう。

 普段のスタンピードと違って、今回の難易度はかなり跳ね上がっている。


『2人だけじゃ危ねぇぞ』


【エクスポーション】のリーダーとして、そう忠告をする。

 すると、アレンが口を開いた。


『なら、僕が2人に付くよ。リーダーはレオと行けば、ちょうどいいんじゃないかな?』


『……そうね。アレンがこちら側に来てくれれば、ヴィランの不安も解消されるわ。ヴィランとレオ、私とアイリスとアレン。この組み合わせで行くわ!』


『えぇっ、もう決定なの?』


 トントン拍子に決まっちまう。

 なんというか、バッサリしてんなぁ。

 アイリスは未だに状況が読み込めてないような動きをしている。


 ──まあ、仲間を気遣ってのことだから、否定はしねぇけどな!


『よっしゃ! 俺も賛成だ! モナのレオを案ずる気持ちも分からんでもないしな!』


『流石、よく分かってるじゃないの!』


『まあ、俺は【エクスポーション】のリーダーだからな! ガハハッ!』



 レオは確かに調子を崩している。

 精神的な負担は少ないに越したことはない。

 モナの精神安定を図ろうとしている考えは、悪くない。

 


 ──まあ、アイツなら、何かがおかしいと勘づいちまう気もするんだがな。


 だが、そんなことは口に出さない。


 普段通りのハイテンション。

 決断は早いうちに下してやるべきだと、ガハハッと笑いながら、モナの話に乗じてやる。

 俺が賛同したことにより、アイリスも逃げられない状況になった。


 その結果、


『ううっ……分かったよ』


 モナの決定に全員が従う形となった。


『やった。じゃあ作戦会議よ! どうやって話題を切り出して、どう自然な形でパーティを分けるか。……もちろん、レオにバレないような工夫もそれぞれ考えてみて』


 モナの一声によって、俺らは『スタンピードは秘密大作戦』を計画することになった。

 誰だこのダサい作戦名考えたやつは、とかは言うなよ。


 考えたのは、俺だからなぁ!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る