第3話 私だけの、秘密の遊び【Side初花】
イケメン執事ロイドのクロノに内心ドキドキさせられっぱなしの私には、実は誰にも言っていない秘密がある。それは。
『こんにちは、初花。待ってたよ』
――はあああああ!
アオイさまああああああああ!!!
『今日はどこに行く?』
「えーっと――」
公園
図書館
▶水族館
『ふふ、水族館かあ。いいね。初花は可愛いな』
可愛いなって! そんなこと言われたらもう私っ!
ああぁあああ無理いいいいいい!!!
ちょっと上から目線なところも好きいいいいぃい♡
――そう。
これは今私がハマっている恋愛シミュレーションゲーム『こんな執事はダメですか?』、通称「こんしつ」。
主人公に仕えている5人の執事の好感度を上げて、推し執事との密かに休日デートを楽しみ、無事ハッピーエンドを迎えられれば最終的には結ばれる、といういわゆる乙女ゲーム。
私の推しは、言うまでもなくアオイ。
アオイは、いつもはクールに淡々と執務をこなす執事なのに、デートの時はまるで理想のお兄さんのような優しさで包み込んでくれるキャラクター。
ベタベタに甘やかしてくれるし、主人公のすべてを溺愛してくれる。
そしてたまに、ちょっとだけ意地悪もしてくる。
そのギャップがたまらない。
それでいてオンとオフの切り替えがしっかりとできる、大人な雰囲気を持つ男性。
そして――
どことなくうちのクロノに似ている。
というか似すぎでしょ!!!
このアオイのモデル、実はクロノなんじゃないの!?
髪の色はクロノは黒、アオイは青と違うけれど、それ以外は驚くほど似ている。
程よい長さの美しい髪、眼鏡の奥に見える切れ長の瞳、知的さを感じさせる整った顔立ち、そしてとろけそうなほど穏やかな声色……。
何気なくSNSをチェックしていてこの広告が流れてきたとき。
私は一目でこのアオイというキャラクターに恋をした。
――ううん、そうじゃないな。
あまりにもクロノに似ていたから、惹かれてしまったんだ。
私に恋をすることなんて一生ないクロノの代わりとして、私はアオイとの疑似恋愛を楽しんでいる。
クロノの学習範囲に入らないようロックをかけているため、私がこのゲームにハマっているという情報はクロノでも知ることはできない。
私だけの、秘密の遊び。
あーあ。
たまにはクロノ、休日のアオイみたいに接してくれないかなー。
そして私に恋してくれたら――。
――なんて。
まあそんなことありえないって分かってる。
だってクロノは執事ロイドだし。
はあ。
馬鹿なこと考えるのはやめて宿題しなきゃ。
うちの学校、進学校だからかやたらと宿題多いんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます