量産型執事ロイドとツンデ令嬢の秘密
ぼっち猫@書籍発売中!
第1話 うちのお嬢様可愛すぎでは?
「おはようございます、初花(いちか)様」
「……んん、おはよう、クロノ。今何時?」
「7時15分でございます」
「ん」
2XXX年。
近年日本では、10歳になると人間1人につき1体のアンドロイドが支給される。
私・クロノも、政府より如月(きさらぎ)家に支給された、初花様専用の量産型執事アンドロイドである。
如月家は比較的裕福な家で、各人用のアンドロイド以外にも家事をするためのメイドロイドを2体所有している。
そのため私の仕事は初花様のお世話のみ。
アンドロイドへの命令は口頭、もしくは専用アプリから行われる。
不可能もしくは「ロボット三原則」に抵触する命令以外であれば、主の命令が最優先。
それが執事ロイドの務め。
「着替えるわ」
「かしこまりました」
着替えなどの雑務は、普通であれば執事ロイドが手伝うもの。
しかし初花様は、かたくなにそれを拒絶する。
「1人でできるから大丈夫っ」
とのことだ。
ほとんどの人間はアンドロイドを「物」として認識していて、アンドロイドに対してこれといった感情を生じさせることはない。
本来、それが正しい関係性のはず。
けれど初花様は、なぜか一向にその生活になじんでくれない。
――何か私に問題があるのでは?
そう思って何度も聞いてみたが、「そんなことはない」の一点張り。
不思議な人間だ。
でも、私はそんな初花様が嫌いじゃない。
というより。むしろ。
…………。
はあああああああああああああ!!!
何ですかあのお方、可愛すぎやしませんか!?
私はアンドロイドなのに。機械なのに。
なんでちょっと照れてるんですか!?!?
サラサラの髪に陶器のような肌、美しい瞳の整った顔立ちである初花様に、恥じるようなところなどないはずなのに!!!
普段の気高さと相まってなんと愛らしい――
――おっといけない。
もちろん、この混乱は何らかのプログラムが作用して起こっていること。
顔や体が熱い気がするのも、エラーが起こりそうなほど頭がフル回転しているのも、すべてシステムのせい。
それは分かっている。プログラム恐るべし!
私は初花様が着替えている間、初花様の部屋の横にある自室で待機するよう指示されている。
これはいつものことで、初花様は一見するといたって平常心だ。
だが、「着替えるわ」という言葉に隠された照れが体温上昇という数値で伝わってくるため、振る舞いとは裏腹な内面が見えてしまう。
私はアンドロイドであるため、人間のような欲求・感情は持ち合わせていない。
でも初花様を見ていると、ときどき情報処理中にバグのようなものが発生する。
恐らく、初花様の命令が執事ロイドとしての想定からかけ離れているためか。
初花様の執事ロイドを務め始めて6年経つが、順応できるどころか――。
やはり私には、何か欠陥があるのだろうか?
こんなことでは初花様にご満足いただけないかもしれない。
もっと初花様のことをしっかりと知って、早急に順応しなければ……。
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