第405話 二日/夕方/執着に染まる赤き怪物:後

 死。

 それは死だった。


 赤いローブが、畳の上に浮かんで、ユラユラ揺れている。ユラユラ、ユラユラ。

 だが、そのローブの主は鋼の骨を持った、死を告げる絶対の存在。


『アハハハハハハハハハッ! アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!』


 黒ずんだあごを大きく開いて、鉄の髑髏が哄笑を轟かせる。


「――バサラ、」


 笑い続ける髑髏の足元で、カリンが異面体を展開して俺達を景色に隠そうとする。


『カリン・バーンズ』


 だが、髑髏の眼窩がカリンを見下ろす。

 瞳のない穴の奥より放たれる赤黒い光が、黒い和服の少女を捉えた。


「……ぅ」


 カリンが倒れる。

 その倒れ方はタマキと一緒。――つまり、カリンも死んだ。


「視認しただけで発動する『魂喰いソウルイーター』か……!」


 倒れた二人の様子を見て、俺はマレーネの能力を悟った。

 それは、マリクの完全即死魔法よりもさらに高い殺傷力を持つ、絶対即死能力。


『無駄です。無駄、無駄、無駄、無駄、無駄ッ! あなた達が今さらどう抗おうと、私の前には意味をなさないのです。攻撃も、防御も、魔法も、異面体もです!』

「…………試す」


 威張り散らすマレーネにジンギが反発し、異面体を出現させようとする。

 だが――、


『ジンギ・バーンズ』


 現れかけたジンギの異面体が、マレーネの視線を受けた途端、砕け散る。

 こいつ能力範囲は、人の魂に留まらない。

 他人の異面体を、いや、視認した全てを殺す能力……ッ!


「…………くそ」


 異面体を破壊されて、ジンギが意識を失いかける。

 だが、倒れる前にマレーネの視線を受けて、ジンギもまた、魂を喰い尽くされた。


『徒労でしたね、ジンギ・バーンズ。さぁ、次はどなたでしょうか? 私の恨みを受けてくださる方はどなたです? 十萌さんでしょうか? それとも、アキラさん?』


 マレーネは、完全に余裕を取り戻していた。

 それは、当たり前か。あいつは異能態を発動させている。異面体では、勝てない。


「自らの勝利を確信しているようだな、エンプレス・マレーネ」


 だというのに、その右腕を銀色の装甲に包んだヤジロが、マレーネの前に立つ。


「ヤジロ!」

『次はあなたですか、十萌さん』

「ダディ、勝てない相手を前にして逃げられないとき、するべきことは何だ?」


 マレーネの問いかけを無視して、ヤジロはこちらをかすかに向いてきいてくる。


「…………」

「フ、そのまなざし。いいまなざしだ。今さら俺が言わずともわかっているな」


 無言を返す俺に、ヤジロは再びマレーネへ向き直る。


「エンプレス・マレーネ、あんたは言ったな。抗うことは意味をなさないと」

『……それが、何か?』


 ヤジロが、カウボーイハットを左手に押さえて、右手の指先を振って舌を鳴らす。


「チッチッチ……、わかってないねぇ、あんた」

『わかって、いない?』

「そうさ。抗うことはそれ自体がすでに意味をなしてるんだぜ? 俺が抗う姿に、俺を見る者は何かを感じずにはいられない。歯向かうこと、立ち向かうこと、楯突くこと、その全てに意味があるのさ。――『叛逆の意志を示す』という意味がな!」


 いつの間にか、ヤジロは右手の指に百円玉を挟んでいた。

 それが、強烈な赤い輝きを帯びる。


「エンプレス・マレーネ。あんたの約束された勝利に――、叛逆だッ!」

『愚かな。ヤジロ・バーンズ』


 だが、ヤジロが百円玉を投擲する前に、マレーネが死のまなざしを向ける。


「ククク、いいじゃねぇか。愚か……」


 魂のほとんどを吸い尽くされたヤジロが、俺達の前で倒れ込んでいく。


「ヤジロッ!」

「ダディ――、


 それを最期の言葉として、ヤジロもまた魂を吸い尽くされて死を迎える。

 トモエは、ここにはいない。

 同行したら怪しまれるからと、外に待機させている。それも見事に裏目に出たが。


『ヤジロ・バーンズが死にました。これで――』


 鉄の髑髏が嬉しそうに下顎骨をガパァと開ける。


『これで、残るはあなた達だけ。陛下、アキラさん。……そして、金鐘崎美沙子』


 おそらくは笑っているであろうマレーネと相対しつつ、俺は周りを見る。

 小夜子と美智子、美喜子は眠りに落ちており、欣司は意識を失ったままだ。


 死んだのは、タマキ、カリン、ジンギ、ヤジロ。

 生きているのは、俺とシンラと、お袋だけ。


 いやぁ、清々しいくらいに絶体絶命ですよ、こいつは。

 ヤジロが示しくれた『叛逆』のおかげで、モチベは高いんだがねぇ……。


『殺します』


 マレーネが俺達を前に改めて宣告してくる。


『殺します。アキラ・バーンズを殺します。私のテンラをこの世界から消し去ったあなたを、私が殺します。殺します。シンラ・バーンズを殺します。父親でありながら私のテンラを見捨てたあなたを、私が殺します。殺します。殺す。殺すのです!』


 鉄の髑髏の眼窩から、濁った血の涙が大量にあふれる。


『ああ、テンラ、テンラ! 私のテンラ! あなたが消えることなんてなかったのに、どうして、何故です、何でこの世界はあなたを拒んだのですか! ああ、テンラ、テンラ! テンラテンラテンラテンラッ! 金鐘崎美沙子ォ――――ッ!』


 マレーネは、テンラへの異常な『執着』を見せたかと思えば、お袋の名を叫んだ。

 本当に唐突に、脈絡もなく、テンラの名を呼んだとき以上の感情を宿した声で。


「マレーネ……?」


 これにはシンラも戸惑って、眉根を寄せる。

 だが、今のマレーネには、そのシンラすら見えていないようで、絶叫。咆哮。


『あなたが、あなたが全ての元凶……。あなたがいたから、陛下はテンラを見捨てた。あなたがアキラ・バーンズを生んだから、テンラが抹消された。あなたがッ!』


 血涙を辺りにボタボタと散らして、マレーネが荒れ狂う。


「だいぶ、タチの悪い壊れ方してやがるな……ッ!」


 俺はお袋の前に立つと、シンラがその隣に並んでくる。

 二人でお袋を守るための壁になってるの笑うけど、さ~て、こいつは……。


「なぁ、シンラよ」

「は、何でありましょうや、父上」


「単刀直入にきくわ。……?」

「――


 返ってきた答えは、予想通りのもの。

 何故なら俺も同じだからだ。俺もシンラと同じく、使


「いっそのこと、俺らも忘れてりゃよかったか……?」

「いいえ、そのようなことはありませぬ。父上のご判断は正しきものですぞ」


 俺とシンラはそう言い合って、互いに苦笑する。

 この絶対的窮地で、異能態使用不可ってんだから、もはや笑うしかない。


「じゃあ、どうするよ?」

「諦めるという選択肢はないので、抗うしかありませんな」


 シンラの言う通りではある。

 ヤジロの死に様を見せられて、背後にお袋を置いて、諦めるのはナシだよなぁ。


 だが、どうしたモンかね、こりゃあ。

 あいつの視線を受けたものは、それが何であれ殺される。


 きっとガルさんでも、跡形もなく砕かれちまうだろうなぁ。

 いよいよもって、マレーネへの対抗手段がない。


『考えていますね、アキラさん、陛下。この状況をいかに打開するか、考えているのでしょう? どうぞ、好きなだけ考えてくださいませ。そして、ご自分の無力を痛感してくださいませ。その上で殺してあげます。私が、この私が、テンラの仇を!』

「……チッ」


 イカレてるように見えて、なかなか冷静じゃねぇか、マレーネ。

 この絶対的な余裕。こいつ、俺とシンラが異能態を使えないことに感づいてるな。


『テンラ――』


 また、マレーネが自分の子の名を口に出す。


『もう少しです。もう少しであなたの仇を討てます。見ていてください。私は、母は、理不尽にもこの世界から消し去られたあなたが受けた苦しみを千倍に、万倍にして彼らに返します。母があなたの仇を討つところを、天国から見ていてください!』


 異能態を行使して、人ならざる姿をなったマレーネ・ヴィルシャが吼える。

 それだけで、場には赤い風がまた吹き荒れて、畳や壁に細かい傷が刻まれていく。


『そうです。許してなるものですか。テンラを見捨てた陛下を、テンラを消したアキラ・バーンズを、陛下にテンラを捨てさせた金鐘崎美沙子を……、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許して、許してなるものですかッ!』


 俺達にさらなる激昂を見せたマレーネがそこでピタリと動きを止める。

 そして、いきなり不思議そうに首をかしげて見せる。……何だ?


『どうして、私はこの人達を生かしているのでしょう? 最も憎い三人を、何で未だに? 不思議です。不思議ですね。不思議です。――殺してしまいましょう!』


 急に疑問を覚えて、急に喜悦にまみれた声を出して即殺の結論を出す。

 こいつは、さすがに情緒不安定甚だしい。

 好きなだけ考えろと言ってから、まだ一分も経ってねぇんだが?


『それではテンラのために死んでくださいませ、お三方』


 マレーネが、眼窩の奥に赤い光を瞬かせる。

 そこに輝きが奔れば、俺達は死ぬ。

 異能態以外のあらゆる防御を貫通する、絶対的な死のまなざしによって。


「シンラッ!」

「はい、父上!」


 しかし、今さら命を惜しむ俺達ではない。

 できることはなくても、せめてお袋は守ろうと、俺とシンラは壁になろうとする。


『さようなら』


 そしてマレーネが、死のまなざしを解き放つ。

 俺も、ここまでか――、覚悟した、そのときだった。


「……え?」


 お袋の前に立つ俺達の前に、さらに誰かが立ちはだかる。

 それは和服を着た、老年の女性。……まさか、金鐘崎美喜子ッ!?


「お母さんッ」


 お袋も、美喜子の行動に驚きの声をあげる。

 すると美喜子はこっちを振り返って、優しい微笑みを見せながら一言。


「ごめんなさいね、美沙子」


 直後、マレーネのまなざしに魂の全てを奪い取られ、美喜子は倒れ伏した。


『……あら?』


 死した美喜子を、マレーネが不思議そうに見下ろす。

 俺とシンラも、ただただ唖然となって、目の前に倒れた女性を見ている。


『美喜子さん、目覚めておられたんですねぇ。でも、何でわざわざ壁になったのでしょう? 意味がわかりませんねぇ。そんなことをしたって無駄なのに。全員、死ぬしかないのに、ねぇ? 本当にわかりません。けれどもどうでもいいことですね!』


 マレーネが美喜子の行いを無駄と断じ、どうでもいいと言い放つ。

 それに対して真っ先に反応を見せたのは、俺でもなければ、シンラでもなかった。


「――ハハンッ」


 聞き慣れた、その笑い声。

 俺とシンラはハッと我に返って振り向くと、そこには、野太く笑うお袋がいた。


「そうかい。アンタ、今の美喜子の行動の意味が、わからないのかい」


 言って、今までずっと口を閉ざしていたお袋が前に踏み出す。


「お袋!」

「美沙子さん!」


 俺とシンラは止めようとするが――、


「大丈夫ですよ、シンラさん。見てなよ、アキラ」


 逆に、お袋に止められてしまった。


「アンタ達二人とも、異能態が使えないんだろ? 多分、テンラって人が原因で」

「ぐ……」


 見事に理由を言い当てられて、俺は小さく呻いてしまう。

 そうだ、俺とシンラがこの現状で異能態を使えない理由は、テンラにある。


「アタシが忘れちまってるその人の記憶を、アンタ達二人はまだ覚えてるんだろ? それがトゲになって、異能態を使えなくさせてるんだろうねぇ」


 ヤッベェ、全部、言い当てられちまったよ。100%正解だよ。

 そうだ、俺もシンラも、テンラに対して下した決断に後悔と罪悪感を抱えている。


 確かに、あいつがしでかしたことは到底許せることではない。

 それに対する決断を、俺もシンラも、正しいと思っている。確信している。


 だが、それで平然としてられるかと問われれば、そりゃさすがに無理ってモンだ。

 テンラは俺にとって大事な孫で、シンラにとっては大事な息子だったのだから。


「悪ィ、お袋……」

「美沙子さん、余は、俺は……ッ」


 共に唇を噛むしかない俺とシンラに、だが、お袋はニカッと明るく笑う。


「いいんじゃないかい、それで」

「お袋……?」

「え、美沙子さん、しかし――」


 お袋は、至極あっさりと俺とシンラの弱さを認めてくれた。

 シンラがそれに言い返そうとするも、


「いいんですよ、シンラさん。それでいんです。だって、それがなんですから」

「人情、ですか……?」

「そうですよ。それは人が当たり前に持ってる、人間らしい、人間臭さですとも」


 そう言って笑みを深めるお袋の足元から、目に見えない力が立ちのぼる。

 それは渦を巻いて、そして、そして――!?


「み、美沙子さん!」

「やっぱり、親子っていうのはどうしても似るモンなんだねぇ」


 呟き、再び歩き出したお袋が、倒れている美喜子へと目をやる。

 次いで、布団に寝かされている欣司へと。


「結局、嫌いな二人に助けられちまったよ」


 轟々と唸りをあげるのは、マレーネが放つ赤い風ではない。

 それは、猛烈な勢いで圧を増していく、お袋が放つ、蒼い輝きを伴った風。


『何ですか、それは……? それは何です、金鐘崎美沙子ッ!』


 マレーネが、お袋が見せる変化に初めて狼狽を示す。


「美沙子さんが、異能態を? ……新たな『真念』? ……違う。これは、違う!」


 シンラが、何かに気づいたように声を荒げる。


「どうしたよ、シンラ……?」

「父上、美沙子さんはとっくに獲得していたのです。『殺意』に代わるものを』

「『殺意』じゃない、新しい『真念』を、か……!」


 俺は、弾かれるようにして、お袋の方を向き直る。

 その足元から巻き起こる輝ける蒼い風が、その強さを増して、赤い風を押し返す。


「ヤジロちゃんが言ってたっけねぇ、アンタはだと」


 言っていた。ヤジロは倒れる間際、確かにそんなことを言っていた。

 俺は、てっきりマレーネがそう形容されるくらいのバケモノなんだと思っていた。


 しかし、もしや、違うのか?

 ヤジロが言っていた『怪物』という言葉は、別の意味を持っていた?


「要するに、アンタはもう人間じゃないんだよ、マレーネ・ヴィルシャ」

『何ですって……?』

「テンラって人の仇をしつこく訴えてるアンタだけどさ、でも、アンタは美喜子のやったことの意味がわからなかったんだろう? 


 お袋が、鋼の骸骨となったマレーネに、その事実を叩きつける。

 ああ、そうだな、俺もダブったよ。

 お袋に謝った美喜子の姿が、百回目の死を迎えたときの『お袋』と重なった。


 同じだった。

 俺達の前に立った美喜子が見せた顔と、あのときの『お袋』の顔は、同じだった。

 今、お袋が言ってることって、つまりそういうことなんだろうな。


「美喜子の行動が理解できないなら、アンタのやってることは何なんだい?」

『何ですか、何を言っているのです……?』


 だけどそれを、マレーネはわかっていない。

 誰よりもそれを理解してなくちゃいけないのに、全くわかっちゃいない。


「わからないのかい? それとも、わからないフリをしてるだけかい?」

『妄言で私を惑わせるつもりですか、金鐘崎美沙子ッ』


 余裕を崩さないお袋に対し、マレーネは徐々に声の調子を激しくしていく。


「もう一度言うよ、マレーネ・ヴィルシャ。アンタのやってることは何なんだい?」

『やめなさい……ッ』


「アンタはテンラって人のためにやってるんじゃないのかい? 違うのかい?」

『やめなさいと言っているでしょう!』


 ついに、マレーネが大声で叫び出した。

 身を震わせ始めている鋼の骸骨にも、だが、お袋は動じずにさらに追求を強める。


「そもそもね、アタシはずっと考えてたよ。アンタが異能態を使ってから、ずっと考えてたんだ。どうしてアンタは、あのとき、その場にいなかったんだい?」

『あの、場……?』

「そうさ。テンラって人がアキラに仕返しされた現場さ」


 その指摘に、俺とシンラは、同時に「あ」と声をあげた。

 そうだ、その通りだ。

 テンラのことを知っている以上、マレーネはテンラと連絡を取り合っていたはず。


 にもかかわらず、この女は『Em』に参加していなかった。

 こいつが見せる息子への激しい『執着』を考えれば、絶対に参加してそうなのに。


「同じ『母親』のアタシにはわかるよ。アンタがあの現場にいなかった理由が」

『やめろ』


 語るお袋に、マレーネが声を硬くして拒もうとする。

 だが、お袋は止まらなかった。鋼の髑髏を睨みながら、その顔には笑みが浮かぶ。


「子を想う母親が、それなのに子供の近くにいられない理由なんて、一つだけさね」

『やめなさい。言うな。やめろ、やめなさい。違う、違う! 違うッ!』


 そしてお袋は、拒み続けるマレーネへ、トドメとなる一言をブチ込んだ。


「アンタは、テンラって人に嫌われてたんだよ」

『違う、違ァァァァァァァァァァァァァァァァァ――――うッッ!』


 マレーネが、お袋に向かって赤き死のまなざしを迸らせる。

 だがその瞬間、お袋が放つ蒼い風がいよいよ臨界に達してまなざしを跳ね返す。


『お、ぉぉぉ、こ、金鐘崎、美沙子ォォォォォォォォォォォ――――ッ!』

「子供に嫌われるような愛し方しかしないなら、アンタは母親失格さ、マレーネ!」


 部屋を満たしていた赤い風が、蒼い輝きに上塗りされていく。

 それは激しくも心地よい、護りの風。人を安心させる、あたたかさを内包した力。


「アタシはかつて、十歳で『殺意』の『真念』に至った」


 お袋の髪が、蒼く染まっていく。


「けれど、人間になりたかったアタシはそれを封印して、新しいアタシになった」


 蒼く光るその髪は長さを増して、そして広がっていく。


「アタシの『殺意』はアキラが継いでくれて、でもね、本当は不安だったさ。アタシはこれから新しい『真念』を見つけられるのかって、不安だったよ。だけど――」

「そうです。美沙子さん。見つけるまでもなく、あなたはとっくに持っていた」


 シンラがうなずくと、お袋が笑う。

 その瞳をも、空色に似た蒼に変えて、とても嬉しそうに笑う。


「アタシは人間になれた。この胸に、誰しもが持つ当たり前の『人情よわさ』を宿して」


 結実する。

 金鐘崎美沙子とミーシャ・グレンの長かった道行きが、ここに結実する。


「アキラ、シンラさん、お父さん、お母さん――、ありがとう」


 そこに立つは、ヴェールのように広がる長い蒼い髪と蒼い瞳を持った、美しき人。


異能態カリュブディス――、『曙天裟々銘器アクルソラノサザメキ』」

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