脳が天使に殴られる

食後の片付けをしようと

座卓から立ち上がるとき

我が脳は天使に殴られて

意識が真白に奪い取られ

揺れる体に戻ってみれば

残飯がぶち撒かれていた


トイレ便座から上がるとき

我が脳を天使が引っぱたき

精神の連続がぶつりと切れ

半裸のままの肉体が床の上

汚れに這いつくばっている


駅のホームで椅子から立ち上がる

我が脳に天使の指がずぶりと沈み

五感と平衡を取りこぼした自認が

黄色線前で四つん這いの身に復し

車両が逃げ去っていくを耳にする


日々につれて我が頭上に

天使が降りる時が増えて

我が魂が肉より弾かれし

事案は比例して来ている


おお、天使よ

この能無しの脳に

真実と贖罪を告げるものよ

汝の主の申すことは

彼の家にいまだ訪れぬとも

既に思い知らされている


だが天主の教えだけでなく地上は

法律という罪と罰の秤があるのだ


私が暗き所へ落ちるは是なろうと

親類と隣人を巻き添えにはできぬ


故に我が脳を挽き潰して

魂を裁きの元へ送るなら

しばし待て

孤独のみが友となる日まで

迷惑を隣人へ分けたもうな


もう良く分かっていますから

時分を弁えずに脳を殴るのは

いい加減に止めろ

神託を雑に実行するしか出来ない

粗製で時代遅れのロボット野郎め

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