熊さんはピンクのパールをつけた

あいつは親切なやつだったが

なにせ熊なので

落し物を届けるだけでも

怯えられて叫ばれて

少女達はいつも逃げ出してしまう


だから愉快なやつだと示したくて

その手には小さすぎるキラキラを

海辺で必死で拾い集めて

不器用に毛に絡ませて飾ってみせたんだ


そしてある日の森の中で

落としたハンカチを少女に渡し

初めて親切を遂げられた

受け取った少女はお礼を言って

もう一言

「アンタ怖いよ。ピンクのパールをつけた熊ちゃん」


やつはショックで走り出していた

逃げられる方から逃げ出す方へ

せっかく集めた装飾を振り落とし

森の木陰へ逃げ込んだ


そこへ少女が息せき切り

「お待ちなさいよ」

ずんずんと近づいてくる

さっきのハンカチを出し

落し物のピンクパールを

ハンカチに縫い長く裂き

熊の首元へリボンに結ぶ


可愛いリボンで飾られた熊

もう誰からも怖がられない


「同じ女のよしみさ」と

獣毛だらけの髪を払って

口の端上げる

人間の少女の笑顔が

熊の少女の瞳には

木漏れ日よりも暖かく

キラキラと光って見えた




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