第26話 【現実世界】やよい先生への想い
26
矢田「ちょーい!」
やよ「あぁ、もうなんで止めちゃうの?」
矢田「火星人って!?」
やよ「おかしい?」
矢田「おかしいでしょうよ」
やよ「矢田ちゃんの方がキャラクターがおかしくなってるわよ」
矢田「おかしくもなりますよ。何ですか、火星人ってSFですか?」
楓 「私はいいと思いますけど……」
矢田「あんたは黙ってなさい!」
平輔「いや、僕も好きだけどな」
矢田「あんたも黙ってなさい!」
平輔「あ、あんた……」
やよ「戦隊モノに対抗できるパワーがあるっていうと火星人ぐらいしかないじゃない!」
矢田「そんなこともないと思いますけどね。それにめりめりめりって言って、火星人に変身って、おっさんになっただけじゃないですか!?」
やよ「描き進めろって言ったのは矢田ちゃんよ」
矢田「そ、それはそうですけど。火星人のおじさんっていうのは違うと思います」
やよ「ダメかなぁ。矢田ちゃんが納得してくれないと、これ以上描き進められないなぁ」
矢田「そんな言い方ずるいですよ。……わかりました、わかりましたよ。このまま進めてください。先生のことです。どうせまだこっからでも巻き返せるとか言うんですよね?」
やよ「正解。やっぱ一緒に仕事やるなら矢田ちゃんだ」
矢田「昔、自分も漫画家になりたいって思ったのも、ここの出版社を選んだのも先生がきっかけだったんです。もしこれで、クビになるなら、それはそれで満足です」
やよ「矢田ちゃんをクビになんてしないわよ」
矢田「わかりました。好きに描いてください。でも、一つだけ言わせてください。今日の先生……いや、こんな大事な時期に旅行に行っちゃったっていうのも含めて、私の知っている先生とは違います。この八年間、先生が新作を描けずに苦しんだのは私 が誰よりも知ってるつもりです。今回にかける強い思いも知っています。絶対描き上げようっていう情熱も見てきました。なのに、今日の先生は投げやりっていうか……」
平輔「矢田、先生に失礼だぞ!」
やよ「いいの、いいの。正直な気持ちを言ってくれて、ありがとう」
矢田「さっきも言いましたけど、信じて、見守ります。後半に入って、ページ数も残り少しです。悔いのないようにハッピーエンドを迎えてください」
やよ「……ごめん、ごめんね」
矢田「何謝ってるんですか? さぁ、原稿に向かってください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます