第6話 【現実世界】漫画家の信念
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○上手エリア、フェイドアウト、漫画家エリア、フェイドイン。
やよ「楓ちゃんの良いアイデアって借金?」
楓 「どうですか? いいでしょう」
やよ「うぅん……」
矢田「ぴちぴちのラブストーリーが一気に暗い雰囲気になりましたね」
やよ「確かにラブラブ感は急速にしぼんだわね」
楓 「えぇ、そうかなぁ」
矢田「仕方ない。これは諦めて、昔の短編に手を加えて……」
やよ「ううん、時間がもったいないもん。それにね、一度描き始めた物語は終わらせてあげないといけない。登場人物には魂があるの。ちゃんと終わらせてあげなくちゃ、その魂は行き場をなくしちゃう」
楓 「格好良い」
矢田「でも、いいんですか? 借金返済物語で」
やよ「まだ序盤だしね。ここからの展開でどうにでもひっくり返せるわよ」
楓 「二人手を取り合って借金を返していくっていうものありだと思うんですけどね」
矢田「確認ですけど、瞬は仕事してるんですよね?」
やよ「そうね、大手の食品会社の新入社員よ」
矢田「ただのサラリーマンが、地道に一億円返すのはたいへんそうだなぁ」
やよ「たいへんっていうか、年間百万円返すとして百年かかるわよ」
楓 「げっ、それ無理ゲーじゃないですか」
矢田「例え出来たとしても漫画として成立しないですよ」
楓 「じゃ、如月頼みになりますか」
矢田「如月はただの大学生ですよ。それもどじっこ」
楓 「うぅん……じゃ、こういうのはどうです? 宝くじ三億円当選! それか、競馬で万馬券。いいんじゃないですか? これでばっちり完済です」
やよ「それはダメ」
楓 「え、何でですか?」
やよ「主人公の二人が何も努力してないじゃない。宝くじやギャンブルで危機を脱出した主人公を読者が応援すると思う?」
楓 「それは……思いません、ね」
矢田「如月を大学の理系の設定にして、ひょんなことから何か発見とか発明するとかはどうですか?」
やよ「そうね、それならまだあれかな。でも、具体的な素材がないと説得力に欠ける」
矢田「確かに。じゃ、いっそ、会社を起業させちゃいましょうか。それか専門性のある副業をするとか」
やよ「悪くないわね。ちょっと進めてみようか」
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