航海第十五日目 勝負

(平成11年9月24日〔金〕晴れのち雨)

 “ビールへべれけ地獄”は文字通り地獄へと様変わりした。でも、まあ、それはそれ、苦しむ左足小指をつまみ、その場を去った。


 しばらくして、左足小指の酔いが醒めた。


「私の力が必要になったら呼べ。ともに戦おうぞ」


 左足小指は光と化し、西の空へと消えていった。


 次の身体の一部を探し、私は今日も地獄を行く。しばらく行くうちに、私は“電気びりびり地獄”へと辿り着いた。そこの人々は皆、電気によって苦しめられている。

 まあ、地獄なら当然の光景だ。とはいえ、私の身体の一つとなると別である。私は私の腹を発見し、連れて帰ろうとした。


 しかし、その行為を止めようとする者がいた。鬼である。鬼は私の頭を棍棒でかち割り、私の腹を電気刑に戻した。

 私は頭から脳味噌を出しながらも立ち上がる。私は刀を居合流に構えた。鬼も棍棒を片手上段に構える。


 勝負は一瞬で決まった。

 私には居合なんて出来るはずがなかったのだ。


(十六日目につづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る