俺の王子様-3lover-

三愛紫月

誰かの約束と占い師のおばちゃん

「ちゃんと、わかってるわ」 


関西弁で呟く男の声が響く。 


「しっかりしてくれないと、困るよ。」


標準語になれてしまった男は、眼鏡をあげながらいった。


「わかってるって!でもな、あいつが同窓会にこーへんかったらなんも意味ないやんか」


そう言って、怒る男。



「そこを何とかするのが、君の役目だろ?」


ニヤリと笑う口元。


「そんなん困るわ。ちゃんと来るようにしてくれな。」


男は、頭を掻いてる。


「ちゃんと、振り向かせるんだよ。あの日の約束忘れるなよ」


そう言いながら、肩をポンポンと叩かれた。


「わかってるけど、いじめられてたのにホンマにあいつくるんやろか?」


そう言いながら、また男は頭を掻いた。


「大丈夫だよ。人生をやり直したいって思ってるからきっとくるよ。」


そう言って、男は笑った。


「ほんなら、きたらまた連絡するわ」


そう言って、手をあげた。


「では、連絡待ってるよ」


お辞儀して去っていく男。

.

.

.

.

.


駅からの帰り道、妙な旗を立てた占い師のおばさんがいた。


(人生かえてみませんか?)


占いで人生かわってたら、俺の人生はぜーんぶハッピーエンドじゃ、ボケ。


心の中で、そう呟きながら歩いた。


「兄ちゃん、兄ちゃん、ちょっと話聞いてかへんか?」


横を通りすぎる時に、おばさんに声をかけられた。


「いいです。間に合ってるんで」


そう言った俺におばさんが、


「人生かえたい思ってるくせに、何でそんな嘘つくねん」と言われてドキッとした。


「こんなもんで、俺の人生がかわるはずないわ」


「まぁまぁ、ものはためしや座り」


そう言われて半ば強引に、座らされた。


「じゃあ、手相みせてみ」


そう言われて、手相を見せる。


おばさんは、俺の顔をジッーと見つめた。


「あんた、名前まちごうてつけられたな」


「そんなん、わかるん?」


「全部わかる。今の年齢は35歳やな。彼女も結婚もしてへん。双子の姉は死んでしもた。それから、4つ上のおねーさんがおって、おとんも亡くなってる、今はあんたはおかんと二人暮らしやな?ここまでで、間違ってたら聞くで」


俺は、口が開きっぱなしだった。


こんなにも、占いは当たるのか


「ないんやったら、続けるで

明日の4月5日の同窓会、お花見か。それは、絶対行きや。そしたら、あんたの人生はもう薔薇色やで」


「なんやそれ?彼女ができるって事か?」


「さあ、そこまではわからんけど。とにかく行ったらあんたの人生はかわる。それだけは、間違いない。わかったな?絶対行くんやで」


そう言われて、おばさんは帰れと言った。


なんやねん、占いで人生なんか、かわらんわ。


でも、前に先輩が連れて行ってくれた占いより、よう当たってたな


俺は、コンビニに寄る。


コンビニで、ビールを2本とチーカマを買う。


500ミリのビールを2本飲むのが俺の唯一の楽しみだった。


俺は、関西の田舎町に住んでいる。


神戸には、電車で1時間ちょっともあればつく。



俺は、この街が嫌いじゃなかった。


あの街のうんざりするような日々に比べたら、おかんの判断でこの街に来たのは間違いじゃなかったと思う。


8年前ー


「あんな、おかん引っ越すわ」


「はっ?どこに」


「奈美の近くや」


「ねーちゃんの近くに行くんか?」


「やけど、姫路にきたら殺す言われてんねん」


4つ上のねーちゃんは、お城が大好きな人で結婚するなら大阪城か姫路城の近くに住んでる相手がいいと言って、2年前姫路城の近くの相手と結婚した。


おかんは、ねーちゃんが大好きやった。


だから、ねーちゃんが引っ越してからの落ち込みようは大変やった。


それで、ここになったってわけ。


おかんは、一目でここが好きになった。


お隣さんって言って笑ってた。


俺もあの街から逃げたかったからちょうどよかった。


おかんと一緒にここにこれてよかった。


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