第1章〜学園一の美少女転校生が、休み時間の度に非モテのオレに話しかけて来る件w〜⑨
クラス委員経験者二名の進行ぶりもあり、二年A組の各委員は順調に決定していった。
ホームルームを終えて、休み時間になると、前年度に続いて学内外への広報活動を担う、広報委員を務めることになった壮馬は、上機嫌で、
「委員会も決まったし、今年も楽しい学園生活が送れそうだね」
と、進行役の仕事を終えて席に戻ってきた竜司に同意を求める。
(コイツは、オレの気も知らずに……)
言葉に出さず、チベットスナギツネのような冷たい視線を送る竜司に顔を寄せ、
「大丈夫! 竜司の気持ちは、わかってるって! 紅野さんとクラス委員の仕事をするのが、気まずいんだよね!?」
いたずらっぽく笑いながら、小声で話しかける。
「わかってるなら、なおさら問題だわ!!」
手刀を切って、ツッコミを入れる竜司に、悪びれることなく笑顔を向ける壮馬。
そんな二人の元に、再び、転入生が訪問してきた。
「二人とも、動画の中だけでじゃなくて、学校でもホントに仲が良いんだね?」
と、白草四葉は、さわやかな笑顔で語りかける。
「ん? 今度は、何の用だ、白草四葉!?」
周囲の光に目を細めるシロフクロウのような目付きで返答する竜司に、彼女は、臆する様子もなく、
「少しでも早くクラスに馴染もうと努力する転入生相手に、そんな顔しないでよ黒田クン…!? クラス委員なのにさ……」
可愛らしい仕草で不貞腐れた表情を見せる。
その様子に、竜司が表情を変えないまま、
「誰のせいで、こんな事になったと思ってるんだ!?」
と、不機嫌さを隠すことなく返答すると、
「え〜!? これが、黒田クンのためになる方法だと思ったんだけどな〜」
四葉は、心外だという風に反論した。
「ハァ!? オレのため……? いったい、どういうことだ!?」
想定外の返答に、疑問を口にした竜司に、
「そのことも含めて、ちょっと、話したいことがあるんだけど……今日は、午前中で学校も終わるよね? 黒田クン、黄瀬クン、二人とも放課後に時間はある?」
彼女は、意外な提案をしてきた。
「え!? ボクにも用があるの?」
予想外の誘いに、今度は、壮馬が聞き返すと、
「うん!? 転入生の白草四葉としても、《クローバー・フィールド》のヨツバとしても、二人とは、色々と話したいことがあるから……」
白草四葉は、そこまで言ったあと、「ダメ、かな……?」と、憂いを帯びた表情で二人にたずねた。
彼女の仕草に、一時間前の初訪時と同じく顔を見合わせる。
「クラスに馴染みたいなら、紅野や天草に頼んだ方が良いんじゃないのか?」
およそ《忖度》という言葉に無縁な竜司が、そんな逆提案をしてみると、
(ホントに、空気が読めないヒトね……)
と、一瞬、表情を曇らせた四葉は、
「わたしは、
こめかみの辺りに、目には見えない青筋をたたえ、笑みを作り直して訴える。
「まあ、そこまで言われちゃ、クラス委員として断るわけにはいかねぇか」
鷹揚に応える竜司に、
「そこは、『男子としては……』と言っておいた方が良いんじゃない? まぁ、今日は、ボクたちの部活も休みだって部長が言ってたし大丈夫だよね」
友人と転入生のやり取りを観察していた壮馬が、苦笑しながら語る。
こうして、なかば強引に、動画サイトで《竜馬ちゃんねる》を運営する二人は、新学期初日の放課後に、同世代のカリスマであり、インフルエンサーでもある転入生と午後の時間をともにすることになった。
昼過ぎからの予定が決まったことで、黄瀬壮馬は、
「二人とも、昼食をどうするかは、放課後に決めるってことで良い?」
と、竜司と四葉に問い掛ける。
「ああ、イイぜ!」
「うん、そうしよう!」
二人の返事を確認した壮馬は、
「了解!」
と言って席を立ち、廊下に向かう。休み時間の間に、用を足しておこうと考えたのだが、教室から出ようとしたとき、彼を呼び止める生徒がいた。
「黄瀬くん、ちょっと良いですか?」
その声に振り向くと、始業前のクラス編成の確認時に言葉を交わした天竹葵と紅野アザミが立っていた。
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