第9話 虫達に食われる盗賊たち
西のダンジョンにいったが、入口や周りに魔物の像は無かった。
「やっぱり簡単には行かないわね」
「そりゃそうさ」
「ねえ、何でダンジョン探しているの?」
「僕達はあるアイテムを探しているんだけど、そのダンジョンでしか出ないんだよ」
「どんなアイテムなの?」
「内緒だよ?」
「うん、絶対に言わない」
「異世界に転移出来るアイテム」
「えっ、そんなのあるの」
「有るんだな、これが」
「分かった、協力する」
「リック、これからどうする?」
「今日はここに泊まって、明日、隣のダドウサ王国に行こう、そこには3個のダンジョンが有る」
「OK」
「OK?」
「私達の村の方言で、"良いよ"とか"了解"って意味」
「面白いわね」
「ミリカも私達の方言を覚えてね」
「OK、で良いのかな?」
「その調子」
馬車で移動する事にしたので、運行商会に予約をしに行った。
「ダランの街まで3人分」
「お客様、申し訳御座いません。現在、ズクロールの街とダランの間は通行止めになっております」
「どうして?」
「大規模な人身売買をする盗賊団を、冒険者達が追い詰めたのですが、後一歩という所で逃げられてしまい、途中にあるラウロの森に立て籠られてしまったのです」
「だから討伐するまでは通行止め?」
「はい、通ろうとした者は全て捕まるか殺されたそうです」
「分かりました、ではズクロールまで3人分」
「かしこまりました」
「どうするつもりよ?」
「行ってから考えるさ」
「お気楽ね」
直ぐに出る馬車があったので乗り込む、暫くはのどかな田園風景が続いた。ズクロールまでは1日半かかる。
「ねえ、リックはいくつ?」
「10才だよ」
「えっ、うそ。私と同い年と思ってたわ。じゃあ、12才になったら私と結婚して」
「なっ、なに言ってるのミリカ?」
「あら、私の国では12才で結婚なんて当たり前よ、サキも一緒にしなさいよ」
「そう言う話じゃなくてね」
凄い話になって来たな。悪い気はしないが、ミリカは俺のどこが気に入ったのか?不思議だ。
「もう、サキは頭が固いのね。そんな事を言っていたら婚前交渉も出来ないじゃない」
「ああ、頭が痛くなって来た」
サキは意外と真面目だな、やっぱりスケ番は仮の姿か。
「2人とも、その位にしたら、そろそろ野営の準備するみたいだよ」
この世界は電気の概念が無い、夜の街道は盗賊や魔物に襲われるので野営をする、護衛の冒険者が準備を始めた。
「何でリックの事なのに冷静なのよ、興奮している私がバカ見たいじゃない」
「まだ2年も先の事だろう」
「もう憎たらしい」
「可愛さ余って憎さ百倍、なのかしら?」
「くう……もう」
それって、俺の世界の格言ではなかったっけ?
「さあ、手伝うよ、2人とも」
「分かった。ミリカ、やるわよ」
「は~い」
こういう所はサキの良い所だ。きっと元の世界でも、面倒見の良い姐御だったのだろう。
結界を張ればいいのだが、何か有った時にスキルを人に知られたくは無い、虫を回りに配置しておく。
夜は何事もなく過ぎ、昼前にはズクロールの街に着いた、街はそこそこの大きさだが、足止めをされた人達で賑わっていた。
しかしギルドの前は、別の意味で大変な事になっていた、どうやら盗賊討伐の冒険者達が返り討ちにあったらしい。
皆、何処かしらケガをしている。盗賊達はゲリラ戦が上手い様だ。
ケガをしている冒険者を見て、泣いている男の子と女の子がいる、手をつないでいるので兄妹か?
「僕達どうしたの?」
サキが気になったらしく、男の子に聞いた。
「おじいちゃんが、今度は父ちゃんと母ちゃんが帰って来るって言ったんだ。だけど……」
「そうなの」
そんな顔で俺を見なさんな、サキ。
「分かった、見に行こう。いいか?ミリカ」
「もちろん」
街を出て西に20分程度の所、ここからがラウロの森だ。
「虫を偵察に出して、盗賊の人数と捕まっている人の数を調べるよ」
30匹の虫を森の中へ飛ばす。
「馴れれば可愛いものね、優秀だし」
「そうね、後は"ギギ"って言う鳴き声がね……」
「2人にもその内、なんて言っているか解るよ」
「「え~、ホント」」
「あ、映像が送られて来た、木こり小屋をアジト代わりに使ってる様だ。見張りと合わせて10人位かな」
「少ないわね、捕まっている人達は?」
「小屋には居ないな、横にある岩山に洞窟がある。入って見るよ」
奥に行くにつれ、灯りが大きくなる。居た、盗賊30人と捕まった人達、30人はいるな。
「見つけた」
「じゃ、突撃する?」
「いや、罠もたくさん有りそうだし、人質がいるようなものだ。ここは全て虫に任せよう」
「そうね、下手に突っ込むと冒険者達の二の舞だわ」
ジャバネと同じ種で一回り小さいコマジャバネを出す、こいつは小さいが獲物を捕える顎が大きく発達している。
「大きくしないの?」
「うん、洞窟に入れなくなるから数で勝負さ」
「ふ~ん」
2匹出して複製する。
2、4、8、16、32、64、………………2048、4096………………32768、65536、131072。
このくらいでいいか。
「うひゃ~」
「やっぱりダメ。前言、取り消し」
「では出発!」
10万匹以上の虫が一斉に飛び立つ。
[ブゥ~ン] 巨大な黒い帯の様だ。
「頭、変な音が近づいて来ますぜ」
「ん、ブーンって虫だろ。窓開けて見てみろ」
「へい、うわ、グェッ」
「なんだ?ひぃぃ、目が、目が」
身体じゅう虫に取り付かれて、口から、鼻から、耳から入り込まれ中からも喰い荒らされて行く。
1人が骨になるのが約5分だった。次は洞窟に飛んで行く。洞窟内に悲鳴と虫のはい回る音や、"グチャグチャ"という咀嚼の音が響き渡る、静かになった。
音を聞いて、捕まっている人達がトラウマにならなければいいが。
盗賊は全員、虫のお腹に入った様だ。
「終わった見たいだよ、罠に注意しながら行こう」
「よっしゃ」
木こり小屋の中は服を着た骸骨が寝ていた、血はあまり出てい無かった。
俺とサキは合掌しながら通り過ぎた。
「何のおまじない?」
「アンデッドにならないでね。ってお願いしてるの」
「良いわね、それ」
洞窟の中も骸骨が重なり合っていた。踏まない様に奥に進むと映像で見た通り30人が縛られていた。
「ギルドに説明するの面倒くさいし、お金に困って無いから、街に送るだけで良いよね」
「そうね、盗賊どもは骸骨だしね」
「いいわ、賛成」
よし、みんなを送ったら一件落着、ダランに向けて出発だ。
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