感動の再開! …ではないですねぇ
「ふいー! 今日からよーやくお仕事再開だねーセシリア?」
「私は別に……オークくん達からお金を貰ったわけだし……ゆっくりするのもまた一興だと思うんだが……」
私の言葉を受けたセシリアは、彼女に珍しくうげーと項垂れております。
「えー? そうかな? まだまだ沢山世界を回って行けるんだからさっ!」
「まぁ……それもそうだね。 折角色々と苦労したのだから……楽しまないと損だね」
やれやれとした表情で頷くセシリア。
その通りですよっ! 何のためにこの一ヶ月間苦労したと思っているのですか?
私がオークさん達との取り引きを終えて王都に戻って来た後。
私たちを待っていたのは膨大な数の資料整理でした。
実は私が魔王さんと取り引きを行ったのは正式な手段を踏んでいなかったので……所得を報告するのにめちゃくちゃ時間を要したのです。
それはもうべらぼうに怒られました。 ……今日ようやくオークさん達から金貨を受け取りに行けるくらい、それはもうべらぼうに。
「……さて。 今日から再び募集をかけてもらいたいから……セシリア。 頼める?」
「……了解した。 よし……『我が魔力よ。 従順なる飛蝶となりて求むる者へと届きたまえ』」
セシリアが流麗な詠唱とともに、魔力が右手へと集まり……次の習慣には蝶と変わってめいめいに飛び立っていきました。
わぉ……相変わらず高度な魔法を当たり前のように使ってきますね……。
セシリアが今使った魔法は『魔力蝶』。 教科書に乗っていない、魔法マニア御用達の魔法です。
その能力は単純で『自分の決めた事柄に当てはまる人物に伝言を届ける』というものです。 返信も帰ってくる優れものでもあります。
実は魔王さんの依頼もこのような形で受けることなったのです。
「まぁ近いうちに帰ってくるだろうから今日のところは準備を……あれ?」
「うわっ!? 何だこれは!?」
セシリアの放った蝶が……すぐ近くで降りたのです。
ほぼ同時に聞こえてきた男性の驚く声。
その顔を見て……私は仰天して目を剥きました。
「「あー! あなた(お前)は!」」
男性も私の顔を見て同じように叫びます。
「「魔王城にいた人だ!」」
そう……。 彼は勇者(自称)。
前回の依頼で呆気なく魔王さんに敗北した勇者さんだったのです。
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