たとえそれを恋と呼んでも──、それを愛と呼ぶのでしょうか
津舞庵カプチーノ
第1話『被虐体質なカノジョ』
私こと──夏目巴月は、女色家である。
いや、馬鹿馬鹿しいとか、所詮それはフィクションの中だけかと言いたい事はあるのだろうが、それは胸を張って事実だと言えるのだ。
実際、昨日も巴月の恋人と、一緒のベットで寝たのだから──。
「……もう、朝か」
「……むにゃむにゃ。もう食べれないよぉっ」
「おーい、起きろー。何夢の中で食べているのか知らないけど、そろそろ起きないと大学の講義に遅れるぞー」
「……大学の講義、出たくない」
まるで魘されるように答える、巴月の恋人。しかしてまだ寝ているご様子。
彼女の名前は、“明日葉柚月”。
早秋の草葉の如くくすんだ緑髪に、ごく一般的な茶色の瞳。プロポーションに至っては、特に特質する事のない普通の女の子だった。
しかし、巴月の目に付く、柚月のそれ。
そう、柚月の体には生々しい傷の痕。それらは確かに包帯や絆創膏などで隠されてはいるが、それでも容易に勘で気付ける程度のものだった。
「(……私がコイツの初めて会った時も、──いやむしろ、これよりも生傷が酷かったな)」
/2
巴月が柚月と初めて会った時は、それはそれは酷いものだった──。
それは後から仲良くなってから聞いたものだが、DV元カレに振られたらしい。
何でも元々柚月は、その時の彼から日頃から暴力を受けていたようだ。その時から彼女の体に刻まれている生傷は、消える事のない呪縛の証のようなもの。
しかし、日頃から暴力を受けていても、それでも柚月は元カレを愛していた──。
でもそれは過ちだ。
そして、柚月の対応がつまらなかったのか、そのまま彼女は捨てられてしまったのだった。
『──おい。そんなところで何をしているんだ?』
名前なんて聞かなかった。
最初はただ、気まぐれだった。助けようなんて偽善じみた己惚れ行為をするつもりなんて、巴月はしようと思わなかったのだ。
それでも少しだけ。少しだけは、柚月の事を気にしていたのかもしれない──。
/3
「……んぅぅ? おはよぅ」
「おはよ。今日はよく眠れたか?」
「ぅん。まだちょっと眠いけど、でも寝れたよ」
ようやく、柚月が起きたみたいだ。
過去の柚月は、それこそ朝日で無理やり起きた上に、
しかし今の柚月は、普通の女の子みたいだった。
でも──。
「──ねぇ、いつもの。私の事を、……叩いて?」
「……──分かったよ」
──ぱぁん!
巴月と柚月の二人だけの空間。
そんな蜜月を楽しむのに十分な空間の中で、乾いた音が響いた。
柚月に与えられて衝撃。巴月による平手打ちを食らい、柚月はそのまま先ほどまで寝ていたベットへと倒れ伏した。
──でも、柚月は嬉しそうに巴月を見ていた。
「──私はお前の事を愛しているよ」
「──うん。私も巴月さんの事、大ー好き♪」
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お疲れ様です。
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