第7話

「えーっと、【飛行】っと」

 魔法を使い飛行し、次の階層への階段へ進む。


「敵が鬱陶しいなぁ……【召喚サモン:暗殺虫】……【闇壊霧ダーククラッシュフォグ】……」

 暗殺に特化した虫を召喚し、万物を壊す闇の霧を発生させ、敵を排除しながら進む。


「よし。到着だ。さっさと攻略しないとな……」

 そう言って少し大きな扉を開ける。

 これがダンジョンボスのいる部屋の印だ。

 そもそも途中から一本道になるので間違える事はないはずだ。


 扉を開け中に進むと、広がっていた景色は広めの空間で、整備されている。床にはなにかの模様が入っており、壁や天井に模様はないが、色は赤と白で構成されている小洒落た空間だ。

 それに灯りは少ないが中々明るい。

 少し見渡していると、後ろの扉が閉まる。

 直後、部屋の中心に現れたのは、見たことのある牛の怪物、

 ミノタウロスだった。


「お、ミノタウロスが相手かぁ! ……でもD級だし弱いんだろうな。

 とりあえず【希望と闇に消える】――――ってうそぉ……これだけで

 終わり? ミノタウロス微動だにせず死んじゃったよ? ……こんなに

 弱いの?」

『いや、貴様が強いからだろう……』

「あぁ、そうだった……悪い癖が……」

 俺が魔術を使った瞬間、ミノタウロスがちりになって消えてしまった。

 なんだかミノタウロスに申し訳ない気持ちなってしまう。

 

 すると、脳内に声が響いた。



〔特定条件下でのダンジョンクリアを確認しました。クリア条件、短時間でのソロクリア、を達成。イクシードボス、ロックミノタウロスを召喚します〕

「イクシードボス? なんだそれは……って調べたやつだ! 通常のダンジョンボスより強化された……ってもうお出ましか!」

 さきほどミノタウロスが召喚された場所と同じ場所に、

 全身が岩で覆われたミノタウロスが出てきた。


「全身が岩で覆われている……!? そうか、そういえばここ地属性が主軸のダンジョンだったか!」

 そうこう言ってるうちに、ロックミノタウロスが動き始め、手に持った戦斧せんぷで襲いかかってきた。


「くっ……! 動きが早い! ちょこまかと逃げ回るのは難しいか……!【岩弾ロックバレット】!」

 俺の放った魔法により、ロックミノタウロスの戦斧せんぷが遠くへ飛んでいく。


「よし! 最後に……【灼熱の鎖】!」

 虚空から真っ赤に燃えた鎖がいくつも現れ、ロックミノタウロスに絡みついていく。そして四本ほど地面に刺さり、完全に拘束する。

 そしてその熱によってロックミノタウロスの岩が溶かされていて、その溶ける音とくぐもった声で叫び声をあげているのが聞こえる。


「うわぁ……ちょっと可哀想になってくるなこれ……」

『だな……』


 少し経ち、ロックミノタウロスは光の粒になり消えた。

 その直後、灼熱の鎖も消えた。


「ふぅ……とまあこれでダンジョン攻略か!」

〔イクシードボスの撃破を確認。各種処理を終了。ダンジョンクリアおめでとうございます〕

「あ、あぁ……どうも……」

 ロックミノタウロスがいた場所に、宝箱のようなものが二つ現れた。

 片方は木の、片方は岩の箱だ。


「木はわかるけど岩って……まあ多分岩のほうが特別な報酬だったりするんだろうな……まずは木から開けるか……」

 木の宝箱に近づき、そっと触れ、恐る恐る開けてみる。


「お、これは……アンクレット、かな? 多分そうだろうな。ネットに書いてあったし。てかこれって結構な当たりでは? 世の中にほとんど流通してないって書いてあった!」

『良かったではないか。効果はどんな感じなのだ?』

「えーっと、確か移動速度上昇だった気がする。あと地属性魔術師がつけると攻撃力上昇だったかな」

『それは本当か? 調べてみるが良い。貴様、”鑑定”が使えるであろう?』

「え、マジか。確かに使えた気がするわ。どこかの魔皇のおかげでね。【鑑定】」

 俺が魔法を唱えると、目の前に画面のようなものが現れた。

 そこにはこうあった。


 ☆地のアンクレット(第二位階魔導具)

 効果:

 ・移動速度上昇(×1.2)

 ・地属性魔術の攻撃力上昇(×1.3)



「おぉ! こんな感じなのか。便利だな」

『さぁ、次の宝箱だな』

「そうだな」

 次に横にある岩に覆われた宝箱の前に行く。

 そしてゆっくりと開けると、その中には――


「うん、なんか既視感あるねぇ」

『それはまあ、先程戦った牛もどきの戦斧だからな……』

 俺が魔法で吹っ飛ばしたロックミノタウロスの戦斧があった。


「でも一つ違うところと言えば、戦斧の持ち手に腕輪が通されていることだな……これは一体なんだ?」

『とりあえず手に取ってみたらどうだ?』

「それもそうだな……ってありゃ? 斧が消えたぞ?」

 宝箱の中に手を伸ばした瞬間、戦斧が忽然こつぜんと消えた。

 中には腕輪しか残っていない。


「えっと……とりあえず【鑑定】」


 ☆戦斧の腕輪(第五位階魔導具)

 ・”魔岩まがんの戦斧”の収納可能

 ・下級【アイテムボックス】使用可能

 ・不壊


 ☆魔岩まがんの戦斧(第五位階魔導具)

 効果:

 ・攻撃力上昇(×1.5)

 ・魔力増幅(×1.5)

 特殊効果:

 ・”戦斧の腕輪”への収納可能

 ・一定距離離れた際の自動収納

 ・自動修復(代償に魔力が必要)


「えっなにこれすっごい便利……しかも強い……大当たりだな……」

『つけてみてはどうだ?』

「そうするか……!」

 宝箱の中の腕輪をとり、ゆっくり腕にはめていく。

 すると、少し大きかった腕輪が腕にぴったりのサイズに変わった。


「おぉ! サイズ合わせてくれる機能もあるのか……! 便利だな……」

『そういえば気になっていたのだが、第五位階魔導具、というのは何だ?』

「あぁ、それは魔導具――魔法の力が籠もった道具の事で、位階は全部で第十位階まである。そんな感じだ。魔導具の種類は剣、靴、腕輪、など何でもありって代物だ」

『なるほど、理解した。ということはこれは結構高位階のものではないか? ここはD級であろう?』

「そうだよな……今まで報告されたのはD級で最高第四位階なはず。つまりこれはそれ以上の……とんでもない事になったな……とりあえずこれは隠して帰ろう。【空間収納】っと」

 魔法で作り出された亜空間に腕輪を放り込み、閉じる。


「さぁ帰ろう!」

『そうだな』

 奥側に出現していた、水色に光る魔法陣の上に行く。


〔帰還しますか?〕

「あぁ」

 俺がそう返すと、魔法陣の光が更に強くなり視界を覆い尽くした。


「眩しいっ……!」

 数秒後、浮いた感じがして目を開けると、ダンジョンへ入る前のスペースに飛ばされていた。


「戻って……来たのか……?」

『どうやらそのようだな』

「ふぅ……疲れた……さ、組合に納品したら終わりだ。【健やかなる夢ヒーリングドリーム】、【転移】……!」

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