欲にまみれた世界へようこそ。〜山寺ミコの物語〜

ゆ。

第1話 プロローグ

 くすくすと、殺風景な真っ白い空間では子供の様な笑い声が木霊していた。地面も天井も分からない空間の中で一人、宙に浮いているのか、ふわふわと上下に揺れる少年がいた。


 目の下まで覆う紫色の髪。ぼさぼさであるにも関わらず、どこか神秘性を感じさせる程の紫色。その髪の隙間から覗く濃い紫色の瞳は妖しく歪んでいた。


 ブカブカの白い服を身に纏ってるため首筋も鎖骨も見えている。真っ白い肌。子供のようなその柔肌からは、言葉に出来ぬ色っぽさを感じられた。


「ふふふ……。やっとだ……。ちゃんと二人……!!あぁ……!!'彼ら'はどんな反応をするんだろうなぁ……!!」


 三日月のように口が裂ける少年。その紫色の瞳はベッドに眠る二人の男と少女を見ていた。

 森の中で気持ちよさげにぐっすりと眠る身長百七十程の黒髪の男性……時宗黒トキムネ クロ

 質の良さそうな大きなベッドの上でうんうんと悪夢にうなされ、額に汗を浮かべている身長百五十程の茶髪の少女……山寺ミコ。


「ぁはっっ!ぁははははっっっ!!ぃい!凄くぃい!!僕の思い描いた通りだ!!」


 紫色髪の少年は三日月のように口端を吊り上げ、その紫色の瞳を愉悦に染める。


「君達の運命が大きく狂わされた今日という日……僕はたまらなく嬉しい!!何百年……この日を待った事か!!」


 両手で自分を抱き締め喜びを体全体で現す少年は、どこか狂気に満ちていた。


「ぁあ……ぁあぁあぁあ!!ようこそ!!……僕の世界へっっっ!!」


 バッ!と広げられた手。感極まった様子の少年。その紫色の瞳をぐにゃりと歪めて何を思うか。


「ぁはは!ぁははははっっ!!ぁっっははは!!」


 口を大きく開けて笑いだした。少年の愉悦に満ちた笑い声が真っ白い空間を満たしていく。

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