第83話 怒れるホーネット

明けましておめでとうございます。こんにちは。お久しぶりです。

たいへんお待たせして申し訳ございません。

もうずっと体調不良が続いていますが、まったりと更新していきますので、また読んでやってください。毎日更新できるかは分かりませんが^_^

あと、ストーリー展開少し変えました。

よかったらこっちも読んでね↓

https://kakuyomu.jp/works/16817330651703019304

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■中央ゴレムス暦1583年4月22日

 アウレア


 アウレアではホーネット苦汁の決断により、聖戦への参戦準備が行われていた。


 しかし、そこへヘルシアでの顛末がもたらされた。

 それを聞いたホーネットは激怒する。


「馬鹿なアルタイナ軍と衝突だと!? 何故アルタイナとぶつかる必要があるッ!?」


 急使の弁によれば、一発の銃声がしたかと思うとアルタイナ軍が攻め寄せてきたと言うことであった。

 更に現地にいるラグナロクの一筆がホーネットを混乱させる。


「何……ヘルシアが我が国とアルタイナを戦うようにけしかけた可能性があると? 援軍を頼んでおいてどう言うことなのだ?」


 この場にはホーネットの呟きに答えられる者はいない。

 謁見の間が静寂に包まれる中、ようやく1人の男が声を上げる。


「陛下、これはヘルシアがアルタイナと組んで我が国を滅ぼそうとしているのでは?」

「援軍要請も偽りだったと申すか?」


 ホーネットは自らの爪を噛みながら何かを必死に考えていた。


「情報部ッ! VOEヴォーの見解はどうなのだッ!」


 ヘルシア程度の小国にそれほど諜報員を割いていなかった情報部長官であったが、ここで何も言わなくては無能のレッテルを貼られてしまう。

 情報部長官はわずかな記憶を頼りに声を絞り出した。

 その額からは脂汗が滴り落ちる。


「は……恐れながら申し上げまする。ヘルシアは数年前から先王の父インクムと、妃だったイルヒが対立していると言います。恐らくその対立に我が国が巻き込まれたものと存じます」


「わからん!」


「は……イルヒがアルタイナに我が軍の駆逐を依頼したのやも知れませぬ。イルヒは親アルタイナ派で知られております故」


 ここに至ってホーネットは現状を理解する。

 お人好しにも援軍要請に従ってヘルシアまで行った挙句、そのヘルシアに一杯喰わされてしまったのだ。


「おのれ……舐めおって……ヘルシア如きが……余が直接叩き潰してくれるッ!」

「お待ちください! あの半島までは船旅になります。海戦になるやも知れま――」

「黙れッ! 海戦など何するものぞッ!」

「陛下ッ! 聖戦の方はどうなされるのです!?」

「聖職者どもの戯言など放っておけッ! ヘルシアに攻め込み不義理な輩を誅罰してくれん!」


 ホーネットはそう言うと諸侯たちに軍備を命じて部屋から出て行ってしまった。

 当然、後に残された者たちは慌て出す。


「ああ! なんとしたことだ……誰か説得を……」

「それこそルガール殿の役目でしょう!」

「そうじゃ! テイン侯爵に説得して頂こう!」

「私のような弱輩の言葉は陛下には届かぬでしょう。やはりアルデ将軍に頼むしかありませんよ」


 その後、弱り切った諸侯たちによってサナディアに戻って軍備に励んでいたおっさんがアウレアに呼び戻されることになったのであった。




 ―――




■中央ゴレムス暦1583年4月28日

 アウレア 会議室


 おっさんは召喚を受けてアウレアに戻って来ていた。

 もちろん、今回はドーガも一緒である。


 しかし、軍備を投げ出しての召喚であるから流石のおっさんもあまり虫の居所がよろしくない。一応、ノックスに引き継いできたもののホーネットの癇癪には困ったものだと考えていた。


 おっさんはアウレアの屋敷で一息入れた後、アウレアス城の会議室に通されていた。おっさんとドーガの2人しかいない部屋でおっさんは溜め息をつく。


「陛下にも困ったもんだ。こうも気分で戦略をコロコロ変えられては敵わん」

「このままヘルシアに攻め込めばイルクルスに私的な戦いと見られるでしょうな」

「ああ、下手すりゃ野心を持っていると思われかねん(まぁ持ってるけど)」

「聖戦の方へはどれだけの国が参加するんですかね?」

「VOEのレイス長官はディッサニア大陸の国家の多くが参加するとは言っていた。ただ……」

「ただ?」

「気になったことがある。エレギス連合王国が参加しないと言う点だ」

「世界の盟主が不参加ですか」

「ああ」


 その時、部屋の扉が開いてニワード伯爵とレーベ侯爵(ラグナロク)が入ってきた。


「サナディア卿、お待たせした」

「閣下、私たちの話を聞きたいと言うことのようですが……」


「ああ、お疲れ様です。ヘルシア半島で起こったことを聞かせてもらおうと思ってね」

「なるほど」


 レーベ侯爵とニワード伯爵は頷くと、ことの顛末を細かく話した。

 おっさんは情報長官の話と実際現場に行った2人の言葉から最善の答えを導き出すべく思考の波に身を委ねる。


「(ヘルシアの権力が二重構造になってるのが原因だな。そのせいで民衆の乱が起きてるって話だが……それに地方の豪族も加わってるんだったな。それで自国の乱を鎮圧できないから他国に頼ったと……ラグナロクたちの話からすれば、敵対したのはイルヒの方だ。問題はアルタイナか)」


 レーベ侯爵たちが撤兵させる前に結んだ和議の内容は、ヘルシア国内に干渉する際にはお互いがヘルシアに兵を入れると言うことであった。

 聞けばアルタイナは中国のような華夷秩序かいちつじょの思想がある国家らしい。要は属領に対する影響力を堅持したい思いもあるのだろう。


「(ヘルシアに攻め込めば、必然的にアルタイナとも戦争状態になる。でもアルタイナも決して余裕がある訳ではない。列強国の植民地化が進んでいるからな)」


 この場にいる皆がおっさんの思考を邪魔しないよう沈黙を続けている。

 おっさんは俯いていた顔を上げると皆を顔を見回した。


「この話は一旦私が預かります。皆は引き続き軍備を進めてください」


 この言葉を持って会議は終了した。

 解散した後、ドーガがおっさんに尋ねる。


「どうなさるので?」

「まぁ取り敢えず軍備だ。後は歴史がどう動くかだな」


 ドーガがマジかよと言う顔をする中、おっさんは平然と回廊を歩くのであった。

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