第14話 おっさん、足止めされる
■中央ゴレムス暦1582年6月15日 20時 カノッサス
おっさんは盗賊から分捕ったお宝の内、
まずは宝珠であるが、村で少年から購入した銀宝珠の他に、盗賊のアジトで赤と青を1個ずつ入手していた。銀は既に判明しているので赤と青を確認してみると結果はすぐに出た。
赤宝珠 ⇒ 《一騎当千》
青宝珠 ⇒ 《槍兵の進撃》
何となくだが、銀、赤、青の順で良い【
進撃ってお前巨人なのかよと、あーこれ以上は言ってはいけない。
《一騎当千》は【
これらのことから宝珠は対象者に【
後は武器類である。
取り敢えずボードにリスト化された物を1振りのみ持ってきた。全ての武器が表示される訳ではないので、性能に差があったり、有名な刀匠などの作品に該当したりすれば条件を満たすのかも知れない。
全くもって前途多難である。
『
「(んだよ。+4って……一体全体何がプラスされんだよ。ちゃんとしとけよ!そこんとこぉ!)」
もしかすると武力や攻撃力などのパラメータがマスクデータとして存在しているのかも知れないが、何となく武力だったら2桁なのかなと予想してみる。理由は某三国志ゲーではそんな感じだから
それと今、ボードをボーッと眺めていると、カードと言うアイテムが溜まっていることに気が付いた。
そう。たった今である。
おっさんが
カードは47枚あった。
中央ヘリオン平原の戦い後にラグナリオン王国とバルト王国の睨み合いが始まったのが4月30日とのことなので、おっさんがこの世界の大地に起ったのは4月29日である。そして今日が6月15日だ。暦のことは安心と定番のドーガくんに教わったので、おっさんはしっかりと理解している。
6日で1週間、5週間で1か月、12か月で1年だと言う話なので、カードは毎日
所謂、ログインボーナスみたいなものだろうと言うのはおっさんなりの理解の仕方である。
とにかく物は試しとは良く言ったもので、検証して見なければ何も分からないのは言うまでもない話だ。早速、おっさんはカードを使用してみた。
すると、
ただ幸いにもカードには人物像らしき絵図が描かれているので、これから該当する人物がいないか確認できそうである。ちなみに写真ではない。
「あー自軍の兵士の名前か? この世界は貴族社会っぽいから名前的に平民かも知れんなぁ。それとも立ち寄った村人か捕らえた盗賊って線もある。もしかするとまだ出会ってない人物の可能性だってあるしなー」
おっさんは性格的にアイテムをついつい取っておいてしまうタイプである。
ラスボスまで使わなかったアイテムなど掃いて捨てるほど存在するのだ。
人物カード〔ベアトリス〕を使用してみようとしたところ、現在は使用できないと言われた。
誰に言われたか?
もちろん例の声に決まっている。
一体何が決まってんだと言いたくなるが、誰の声か分かんねぇから参ってんだとまたまた独り語ちるおっさんである。と言っても
このままでは何も分からないのでもう1枚だけ引いてみたが、またもや知らない名前であったので、おっさんはしばらくは引かないことにした。
ちなみに寝る前に、あッこれ排出されるのは人物だけじゃねぇかも?と脳裏を過ったのだが、もちろん華麗にスルーするおっさんであった。単に引きが弱いので
おっさんはこうして独り考察を重ねるのであった。
―――
■中央ゴレムス暦1582年6月16日 10時 カノッサス
朝食を頂いた後は、レーベ侯爵からのお悩み相談会と相成った。
そもそもわざわざ早く帰還しようと竜騎兵のみ先行したのに、こんなところで足止めをくらって良いのかと言う話であるが、1番兵の居そうなカノッサスに駐留している訳であるし、北には難攻不落の
領内で栽培しているのはコメ麦、ラナ麦、干シィタケと言ったところで穀物類は国内で消費され干シィタケはグレイシン帝國へ輸出しているらしい。
一応、鉄鉱山があるらしいが、儲けとしてはあまり見込めないと言う。
「うーん。鉄のインゴットを輸出するだけじゃなくて鉄を武具類や道具に加工してから輸出してみるのは如何でしょうか?」
「加工ですか……」
「どこかに腕の良い鍛冶師なんかがいたりしませんかね? 性能面はもちろん、美しさを磨けば芸術性の面でも評価されるんじゃないかと思いますが」
おっさんが想像しているのはもちろん、日本刀である。
実用性に優れ、芸術的な美も備える一級品である。
見る者が見ればその価値に気付くことは間違いないだろう。
「なるほど。鍛冶師ですか。ガーランドにはドワーフなんかも住んでいると聞く……招聘してみるのも良いかも知れませんな」
「(ドワーフ? 異種族なんかもいるのか。ってことはエルフなんかも?)」
おっさんがドーガの方に目を向けると何を勘違いしたのか、ガーランドのことについて説明を始めた。もちろん知らないので有り難いことである。
「ガーランドはバルト王国の北東にある国家です。ドワーフだけでなく多種多様な民族がいる他種族国家ですな」
ドーガの表情は柔らかい。特段嫌そうな顔をしていない辺り、昨夜何か良いことでもあったのだろうかとおっさんは思わず勘ぐってしまう。
取り敢えず、うんと頷いておくと満足気にペコリと頭を下げた。
「後は、近くにあった平原で
「そう言えばカノス平原に野生のモウがおりますな。後は……レストリーム方面の山岳地にはゴウトなんかも住んでいると聞きます。なるほどなるほど……乳モウのように畜産をすると言う手があったのか!」
おっさんの思いつきに満足してくれたのか、レーベ侯爵はうんうんと唸っている。心なしか表情も明るいものに変わっており、嬉しそうに声を弾ませていた。
「(モウとかゴウトとか何か知らんけど納得してくれたようだな……ふっふっふ、自分の才能が怖い)」
ちなみにモウとゴウトは地球で言いうところの牛と山羊である。
他にもプシー(羊)やピグ(豚)、チキータ(鶏)などが存在するようだ。
後でそれを聞いたおっさんが喜んだのは言うまでもない。そのあまりの喜び様にドーガとガイナスが若干引き気味だったのが
昼食を挟んで結構な時間を使ったが、レーベ侯爵にはすこぶる好評であったらしく、手を握って何度も頭を下げられた。感謝されるのは気分がいいし、これで少しは友好的な関係を築けたのではないかとおっさんは勝手に思っている。
この日、おっさんは今までの疲れも手伝って泥のように眠るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます