第106話帝国へ(帝国に到着13)


次の日の帝国観光はとても楽しかった。

これよ、ここに行きたいの!

私がガイドブックを見せて、フィーとカレン、ザんとターニャに説明すると、少し嫌そうな顔をされた。

こんな所行っても楽しくない、という表情だった関係ない。

帝国に産まれた人達にとっては、観光地、と言うよりも普段の街並みかもしれないが、が、私にとっては大都会である。

次にいつ来れるか分からない。

もしかしたら、二度と来れないかもしれない。

連れてってくれないなら一人で行く!

と言うと、慌てて頷いてくれた。

ふん。当然よ。

ここは、譲らないわよ。

勿論、一杯お土産も買ったわ。

クルリにも、好きなだけ買わせてあげた。

かなり高価な生地や飾りなど、私だけでなく、フィーとカレンも賛同してくれてお金を出してくれる、と言ってくれたから、遠慮なく買いますね、と馬車に乗らないくらいに色々買い物した。

うん。いいよ、どんどん買ってね。

ちなみに5度ほどコリュは、おいてけぼりくらい、

「まって―――くだ―――さ―――い―――!!」

と言って、私達の馬車を必死に追いかけてきた。

「見てよ、あれ!!ぶっふふふふ!!」

大爆笑のカレンに、ざまあみろ、と言わんばかりのフィーに、

ごめん、私も楽しく笑ってしまった。

だって、絶対置いてくわけないもん。さすがにここで置いていったら鬼だよ。

でも、コリュはかなりフィーとカレンを怖がっていて、言ってくる言葉の内容が全て本気だと思って、真剣に返してくる。

でも、コリュが本気で追いかけて来る姿のおかげで、皇族と全くバレること無く、周りからも大爆笑される始末。

おかげで、コリュを待つために馬車を止めると色んな人が集まってきて、

久しぶりに面白いものみせてもらったよ。あんたら貴族なのに庶民と仲がいいんだな、

と和気あいあいに話しをすることになった。

フィーとカレンは、帝国で過ごす時間が短い為、顔を知れているようで知られてないようで、皆気軽に声を掛けてきた。

勿論、ザンとターニャは冷や汗ものだったみたいだけどね。


さて、次の日はチャリティーです。

基本チャリティーと言うのは慈善基金集めを目的とした催しです。

つまり、生活に困窮している方々に少しでも生活の足しになるように、安くで品物を提供したり、施設に売上金や、品物を渡します。

貴族の偽善、貴族の暇つぶし、貴族のほどこし、色々言い方をされるのは分かっている。

その通りだ、と今なら言える。

上辺だけは優しいフリをして、心の中では見下し卑下している。

庶民と同じ目線で、というくせに、庶民風に見える高級服をわざわざオーダーメイドする。

そうしてほんの1時間程手伝いをしたら、疲れた、と言ってあとは召使いに全てを任せて自分は帰る。

これが貴族のチャリティーの実態だ。

最後までいる必要はない。

チャリティーに参加した、という偽善が欲しいだけ。

見下しているのに、貴族がチャリティーをするなどと、実に滑稽だ。

寄付やチャリティーをするのに必要なのはお金じゃない。

必要なのは他人を思いやる心だ。

七夕祭りで、アベル達に会っていなかったら絶対に気づかなかった。コリュが言うように世界が違いすぎる。

でもね、今なら少しは分かるよ。

だから、私に出来る事をやりたかった。

「お姉ちゃん、ビビなの?」

籠にお菓子を入れ、売り子として働く私に、お母様と一緒にいる小さい子が指を指してきた。

「あら、本当だわ。そっくりね」

「分かりました?このお菓子を買ってもらおうかな、と思って仮装したんです。似てますか?」

「うん!似てるよ!ねえ、母さんお菓子買ってあげようよ」

「そうね。じゃあ3つ貰おうかしら」

「ありがとうございます」

お金を貰いお菓子2つをお母様に、1つは膝をつき目線を合わせ、子供に出した。

「ねえ、リオン。このお菓子がきっと事件の解決に繋がるわ。だって、甘いものは頭を落ち着かせてくれるもの」

そう言って渡すと、ぱあっと嬉しそうに笑ってくれた。

「それ、本に載ったよ」

「そうよ。リオンは何て答えか覚えてる?」

「うん。もう、ビビッたら私そんな単純な人間じゃないよ。でもまあ、くれるんなら貰うよ、だね!」

「ご名答。さあ、これ食べて色んな推理をしてみて」

「うん!ありがとう!」

嬉しそうにお菓子を受け取ると、お母様と一緒に私に手を振り帰って行った。

「お嬢様、したたかになりましたね」

感嘆の声でクルリが追加のお菓子を籠に入れてくれた。

「ふふん。でしょう。この格好だと声をかけられるのよ。それに、本当にビビになった気分になって楽しいの」

「ですよね!だってお嬢様、とってもビビにそっくりですもの!」

「あの、そのお菓子下さい」

また、声をかけられたが、やはり、私の格好をチラチラ見ている。

「ありがとうございます。もしかしてわかっちゃいました?」

そんな意地悪な私の言葉に、

「分かりました!ビビですよね!!」

と、皆が乗ってきてくれる。

こんな楽しいチャリティーは初めてだった。

あんなにクルリのビビに似ている、と言うの言葉に恥ずかしくて、否定的だったのに、クルリが戻ってきたらビビの格好をしてあげる、と決めて、いざ自分の意思で来てみたら楽しくなった。

自分が楽しめると、口から出てくる言葉も違う。

とても前向きでみんなに楽しめる内容が勝手に出てくる。

おかげで、とてもお菓子が売れた上に、握手まで求められた。

共通点、と言うのはとても大事なんだ、と今更思った。

だって、貴族とか平民とか、貧民とか、帝国民とか、本、には関係ない。隔たりなく会話が出来、嫌な気持ちにならない。

私、成長したな。

と、思った。

ふと今の状況に自分の器が大きくなった、と嬉しくなった。

いや、まだまだ成長過程か。

フィーとカレンの顔が浮かび、少し自意識過剰になった自分が楽しかった。

あとは、2人の神対応を色々見て楽しかった。

ちなみに2人も同じようにお菓子を売っている。

フィーは若い女性によく声掛けられあとは、酔っ払ったおじさんや、若い男性にもよく絡まれていた。

それに対して嫌な顔をせず接していたが、特に凄い!と思ったのは、

平民だけれど、金持ちらしい人が、

「おやおや皇太子様。わざわざ帝国に帰ってきたのに、こんなつまらない事をやっているのですか?どうせ、毎回やらさてれているのでしょ?チャリティーの意味を分かっているのですか?」

と、嫌悪感丸出しで言ってきた。

それに対してフィーは、

「帝国で過ごす期間が短い私をご存知とは、有難く思います。漢服いたします。帝国の行く末を想っておられるのですね。確かに、このチャリティーは行事で決まっていましたが、貴方に出会う事が出来たのなら、とても有難く思います。勿論チャリティーの意味は理解しております。つまり、貴方様はより寄付をされていると言うことですね、ジュウダル様」

いやあ、最後に名前を言うところが憎い。だってその方は名前を言われ一気顔が引きつり、固まった。で、調べてみると全く寄付してなかったけれど、帰りの際にかなりの寄付をしてくれていた。有数の商人らしいが、馬鹿にしたくてあえて皇太子、と言ったのか裏目に出たね。

さっすがフィー。

次にカレン。

「お買い上げありがとうございます。宜しければお子さまのお名前を聞いていもいいですか?」

さり気なく、微笑む姿に見惚れた。

皇女様だ。

とても自然で柔らかい物腰で、慈愛を感じる。

これもまた、カレンの本当の姿になんだ。

そうそう名前聞いた後がねこれがまた凄いのよ。来る子供来る子供名前を聞いて、後ですれ違ったり、後から話しかけても、ちゃんと間違いなく名前を言ってるの!

それをどうもお母様方は知っているいるようで、カレンに並ぶ列には親子連れがとても多かった。そして、大人気だった。

参加してよかった。

2人をより大好きになった。


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