第91話ガナッシュ目線2

「もう一度言ってみろ・・・」

生まれて始めて自分の声が震え、身体が強ばっているのがわかった。

「公女様が、王妃様の側近を全て王宮から追い出し、クラウス・ジナール様も出されました!王妃様は、別宮にて生活する事を陛下より言われ、謹慎状態となっております!!」

「ふざけるな!スティングは何故そんな事をやってるんだ!父上も何故それを認めているのだ!!」

意味が全く理解できなかった。

昨日、この避暑地に着き、今日は夕方まで遊んで帰っきたら、真っ青な顔で王宮の伝令係が待っていた。

そうして、先程の内容を伝えられた。

「スティングはどうした!?それに、何だその公女という呼び方は!?」

詰問すると、男は、陛下よりスティングの事をそう呼べと命令されたと言った。

「全て王宮にいる召使いの態度が悪く、帝国皇子、皇女の機嫌を害した為一掃された、との事です。それと、公女様は、帝国より誘いを受けこの夏は帝国にて過ごされるとの事で、恐らくもうすぐ出発するのではないでょうか」

「え!?スティングだけ!?ガナッシュは?私は?勿論待っててくれるんだよね」

レインの驚きの言葉に、膝をつく伝令係は首を振った。

「・・・陛下より、帝国へは、公女様だけが向かい、王子とレイン様にはすぐに王宮に戻るように、との事です」

「何だそれは!?」

「ええ!?なんでえ?」

「王宮に帰り次第、すぐに王子には王宮で働く新たな貴族、召使いにに対し、対応をするように、と。レイン様に対しては、これからは王宮での立ち居振る舞いを覚えて欲しいとの事で、礼儀作法を学ぶように、との事です。それと、レイン様にも公女様、と呼ぶように言われております」

「ふざけるな!!納得行かない!」

「勅命でございます!!」

叫んだ言葉に、ぐっと言葉を飲み込んだ。

父上、どういう事だ!!

これでは、完全にスティングのやりたい放題で、全て父上が認めている。

それも、レインに礼儀作法を教えるだと!?スティングだ!あの女が前々から喚いた事だ。

では、父上はそれを受け入れたのか!!

「レイン、礼儀作法はどうにかやめさせる。君に・・・」

安心させるように精一杯笑って振り向くと、見た事もない顔で笑っていた。

ゾッとするような、何か企んだ顔に見えた。

「大丈夫だよ、ガナッシュ。私も本当は、前からすこーしは、勉強しないといけないかなあ、と思っていたの。ステ、じゃなかったね、公女様だね。公女様まではいかないだりうけど、ガナッシュの側にいて嬉しいなあ、と思うくらいまでさ頑張るよ。ね」

にっこりと可愛く微笑んだ。

気のせい、か。

いつものレインだ。

髪を揺らし、私の顔をふわふわと見上げる顔にほっとした。

「ごめんな。スティングが勝手な事をして巻き込んでしまったな」

「ううん。考えてみたらね、礼儀作法教えて貰えるということは、もおっと、王宮に行ける、という事だね。そうしたら、私前よりもガナッシュの側にいれるよ」

ね、ね、ととても前向きに甘えてくれた。

「そうだな。それなら、これから王宮で過ごせるように父上に話してみるよ」

「ほんと!?嬉しい。ずっとガナッシュと一緒にいたいもん」

ぎゅっと、私の手を握りながら喜んだ。

しかし、スティングは何をしているんだ!?

1人で帝国にて行くだと!?

母上の側にいた者達を引き離し、その上クラウスも追い出した。

そこまでして、私の気を引きたいのか!!


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