双子の喧嘩は些細なことから始まる
ドーン!と音がした。揺れる大地。
リヴィオがはーーーーと長いため息を吐いた。
「なんで、いつもこうなんだよ!」
いつも冷静なヨイチが怒鳴るとビュンと岩が飛んでいく。
「はー!?おまえだってだろ!」
アサヒの前でバキッと岩が真っ二つになる。そして地面になにか書いたと思ったら、突き出る氷の無数の針。
飛んで避けるヨイチは睨みつけると、筆で素早くなにかを書いて放り投げた。
ドオオオオオオオンと爆発が起こった。
「力の無駄使いだな」
白銀の狼であるワンタローが虚しそうにそう言う。
「またか……」
リヴィオは手がつけられねーと見守る姿勢だが、どこで介入すべきかタイミングをはかっているようにも見える。
「これが、二人の喧嘩?ヤンチャ坊主ねー」
「ヤンチャとかいうレベルかよ。破壊神だぞ」
私の大らかな感想にリヴィオがそう言い返す。まあ、誰もいない、街も無い場所で戦うんだから、多少の冷静さは二人に残っていたと言える。
しかし言い合いするたびに爆発音と振動が起こる。クレーターがあちこちにできている。
「そうね。そろそろ止めようかしら……」
私はそろそろね!とドンッと仁王立ちになる。声を張り上げる用意!広範囲に響かせるための魔法を詠唱!準備オッケー!
ワンタローとリヴィオはサッと耳を塞ぐ。
「二人とも!やめなさーーーーーーーいっ!!」
ビリビリとした音の振動。遠くの街まで聞こえたかもしれない。
ピタッと止まる。音と振動。
「こっちへきなさーーーーーいっ!!」
ヨイチとアサヒがすごすごとやってきた。
「あの……セイラさん来てたんだね」
「や、やあ!いらっしゃい!」
焦る二人はマズイとこ見られてしまったなぁという顔をしている。私はヨイチとアサヒをじっと見る。
「喧嘩はしてもいいと思うわよ?でも激しすぎでしょ?この場所の荒れ具合、見てみるといいわ」
『ハイ』
思いのほか、二人は素直に返事をしたので、私は意表を突かれた。
「そもそも、なんで喧嘩していたの?」
ヨイチとアサヒが顔を見合わせる。
「なんだっけ?……ヨイチがゴミ出し当番なのに行かなくて……だったかな?」
「待てよ。その前になかなかアサヒが起きてこなくて……」
つまり、日常生活のことで喧嘩したらしい。兄弟喧嘩の始まりってそんなものよね。
「こいつら、いつもこんなたいした理由じゃないことで喧嘩をしている感じなんだよな。しかも力があるだけに、止めるのも大変だ。セイラの一喝すごいなー」
「うむ……その実力は認めざるを得ない」
リヴィオとワンタローが感心しているが、いまいち褒められて嬉しいかどうかは微妙なところである。
「トトとテテも喧嘩したら、こんな感じだしね……」
なるほど慣れてるな……とリヴィオは納得した。
「でもさ!くだらない内容だって思うかもしれないけど、共同生活しているとくだらなくないんだよ!」
アサヒが納得できない顔でそう言う。私はニ枚紙を取り出して、二人にハイッと渡す。
『1日の生活スケジュール』『当番表』
「これで解決するわね?」
にーっこり笑った私に、ハハッと力なく笑い返す二人だった。
ナシュレへ帰ると屋敷の中が騒々しい。
「なんでトトが言うのだ!」
「テテもおかしいのだ!」
まさか!?と私とリヴィオは顔を見合わせた。
今度はトトとテテの喧嘩が勃発していたのだった……。
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