【ダイエット騒動】
お餅。それは魅惑の味。実は私、米だけでなく、お餅も大好きです。
先日、餅作りをし、しばらくの間、食べれる分のお餅があった。
こたつに入り5人でお餅を食べている。
「チーズと海苔をお餅に巻いたやつ。お醤油つけて食べてみてくれる?」
ジーニーがなんだコレ!?うますぎる!と驚く。トトとテテがニヤリとする。
「トトとテテは2回目なのだー!」
「ハマる味なのだ!」
私もパクッと頬張り、アチチと言いつつもやめられない。伸びていくお餅とチーズ、海苔のハーモニーを楽しむ。
「オレは甘いやつの方が良いなー」
キナコとアンコを並べて食べているリヴィオ………ふと思ったらしく口にする。
「なあなあ?アンコに生クリームとか美味しい組み合わせにならねー?厨房から、もらってくるかな」
なるかもしれない。生クリームどらやきとか生クリームあんぱんとかあるものね。でもカロリー怖くない?私の食べる手がピタリと止まる。
「良いけど、すっごいカロリー高くて太る気がする」
危険すぎる。
「オレは大丈夫だ」
リヴィオは即答する。フフンと得意げな彼は確かに細身だけどガッチリと筋肉もあるし、自慢しても悪くはない。
「毎日、早朝から走り込みをし、剣を振り、常に鍛え、鍛錬を欠かさずしてるからな」
「そういうところはリヴィオはストイックだよな」
ジーニーはリヴィオの努力を認める。私も納得する。毎日か……私もジョギングしようかな。ジッと手の中のお餅をみつめる。
気兼ねなく、リヴィオはトトとテテと一緒に甘いお餅シリーズを試し始めた。
「バニラアイスも持ってきたのだ!」
もはやパフェだ。3人はイケる!とバニラアイス、お餅、アンコにキナコ、生クリーム、フルーツをトッピングし、改造されたお餅パフェを頬張っていた。
……これは見てるだけで胸焼けしそうだ。
そんなお餅の会が連日あったりなかったりした、数日後のことだった。ふとお風呂に入っていて鏡を見るとなんとなくぷっくりとしたほっぺになった気がした。確認するように、何度も鏡の中の自分を見直す。
「なんだか、最近女将、顔色いいですよね」
旅館のスタッフの一人に言われて、ピタリと動きが止まった。
「えっ!……それって……もしかして……」
「いや、健康そうだと??」
そ、そういう意味!?ほんと……に?
トトとテテの工房へ行き、体重計にのる。思わず無言になる私。固まる。
「あれー?セイラ、珍しいのだ!」
「何の用なのだー!?」
二人が明るく尋ねる。それに対して私は暗く、がっくりと肩を落とす。
「今日からダイエットだわ……」
まさか!こんなに○キロも増えているなんて!!
「ダイエット??どういうことなのだー?」
トトとテテが首を傾げている。
「お餅食べすぎたのかも。トトとテテは太るとか無縁そう。なんでなの!?同じ物食べてたのにーっ!むしろ私より食べてたわよね!?」
トトが両手を広げて言う。
「我らは発明に夢中になると寝食を忘れてしまうのだ」
テテも飲まず食わずになるのだーと頷く。
なるほど……そういうわけなのね。普段と同じ生活してる私だけが太ったのね。夕食もしっかり食べてたし……ますますがっくりと肩を落とした。
執務室へ行くとリヴィオが仕事をしていた。
「ねえねえ。私の顔を見てどう思う?なんか変わったことない?」
「……オンナがその質問するとき、ろくなことがないから、答えたくない」
イヤーな顔をして言葉を返された。
……なにが過去にあったのかは知らないけど、リヴィオは勘違いしている。髪型変えたとか新しい靴にしたことに気づいてないの?っていう素敵な変化を聞きたい乙女心では決してない。
「そうじゃなくて!こう……私の顔、丸くなってないかな?」
はぁ?と首を傾げつつ、リヴィオはマジマジと私を見た。
「そういえば……そうかな?いや、言われないとわからねーけど?それがどうかしたのか?」
三度、がっくりとする。
「私、太ったのよ!これはダイエットだわ!明日から私も早朝ジョギングします!」
拳を握る。リヴィオがアホらしいと鼻で笑う。
「もともと痩せ気味だし、別に今のままでも十分、セイラは可愛…………おいっ!?聞いてんのか?」
紙にサラサラッと『毎朝ジョギング』『食事は野菜主体』『甘いもの禁止』と書いて壁に貼る。
「聞いてるわ。コック長にヘルシーなものにしてって頼んでこなくっちゃ!」
おーいとリヴィオの呼ぶ声は遠くなり、私はダッシュしていったのだった。
寒い朝。雪が積もらず道も凍ってなくて良かった。冷たい空気の中、白い息を吐きながら私は走る。
「風邪をひくから止めとけよ」
リヴィオがいつの間にか並走してそう言う。
「大丈夫よ!」
やれやれと彼は呆れて軽やかに走っていった。
ジョギングは悪くない。リズムよく走ると気分も良いし早起きで生活もきちんとなるし………。
「朝ごはんおいしー!」
コック長の作る朝ごはんは最高だわ。端っこがカリッとする焼き立てのトーストにチーズやジャムを添えておかわりした。フルーツサラダに野菜とベーコンのスープ。トロリとしたオムレツ。
はっ!と私はした。朝に運動したためか、お腹が空いてしまい、いつもより食べてしまったーーっ!や、やらかした。
「ヘルシーなご飯でって言ったのに……」
コック長は譲らなかった。お嬢様は痩せ気味なので、栄養はしっかりとってもらいます!と昨日言われてしまったのだ。
だから自分で調節しようと思ったのにーっ!私って食いしん坊なの!?
「はー、朝風呂いいなー。ん?なんで机に突っ伏してんだ?何に落ち込んでんだ?」
朝食のテーブルにリヴィオがお風呂に入ってからやってきて……。
あー!まさか!私は彼の様子に気づいた!
「まさか朝からサウナ!?」
「そうだけど?」
盲点だったわ。私は軽く汗を流してきただけだったわ。リヴィオの太らない秘訣はここにあり!
ガタッと立ち上がると私はお風呂へ行く。
おーい!とリヴィオが背後から呼ぶ。
私はあまりサウナは得意じゃない。岩盤浴の低温なら好きなんだけどなぁ。
女将どうしました!?と急に来た私にスタッフは何事かと驚きつつもお風呂へ!と急ぐ私を見守る。
「はー、暑い……」
モワモワした空気。暑さで息苦しい。今、どのくらい経ったかしら?時計を見るとたいして進んでいない。我慢よ!我慢っ!
汗がやっと出てくる。なかなか根気のいるものである。しばらくジーーーッと修行僧のように耐える。たまに目を閉じる。
「ちょっと!?女将!?大丈夫ですか!?」
サウナの扉が開き、涼しい風がおこる。
「う……ん……」
パタッと倒れる私。スタッフの叫び声がした。
「おまえ!バカか!?ほんっと何してんだよっ!!」
「そんなに怒らなくても……」
ベッドから起き上がる。額に置いてあった濡れタオルがペシャッと落ちる。
リヴィオがこれ飲め!と冷水を渡してくれる。かなり怒っている。
「えーと……ほんと……反省してるのよ?」
「あたりまえだろ!だいたい、なんでこんなこと始めたんだ?」
「私、太ったのよ!○キロも!」
「はあ!?……それで??」
首を傾げているリヴィオに私は畳み掛ける。
「なんというか、私……もともとそんな美人ではないし……そのうえ太ったらさらに綺麗じゃなくなるし……」
「なんだ。そんなことか。セイラは美人だろ。それに、今も可愛い!……これで十分だろ?」
投げやりに言われる。
「テキトーすぎるーーっ!」
私の涙声のツッコミにどーすれはばいいんだよ!?とリヴィオが額に手を当てる。
バンッと部屋の扉が開き、トトとテテが入ってきた。
「大変なのだ!」
「ごめんなのだ!」
手には体重計。私とリヴィオがポカンとしていると床に体重計を置かれた。トトとテテが申し訳無さそうに言う。
「セイラ、こないだの体重計壊れていたのだ」
「えええっ!?」
「もう一度使うのだ!」
私はコソコソと部屋の隅に体重計を持っていき、乗る。
しばらくの間、しーーーんと静まる室内。
「トト……テテ…!!ありがとうっ!!」
『どうだったのだ!?』
二人は結果を待ってくれていた。私はニコッとした。
「お餅食べようか!?大丈夫だったーーーっ!」
リヴィオがオイオイと非難めいた声をあげた。
「なんかオレ、巻き込まれているよな?……おい!無視すんなー!」
私とトトとテテはお餅何個食べる?と部屋から出ていく。リヴィオは呆れたように言った。
「ダイエット終了か。なんだったんだ……わかんねー!!」
その後、お風呂後には体重を測れるように、銭湯にも大浴場にも体重計が設置されたと補足しておく。
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