第48話
母さんは童顔な見た目とは裏腹に行動力が高い。
父さんも母さんもそこは同じだ。
父さんと母さんは、ユキナ、ユヅキ、メイを連れて夏休みの旅行に行った。
父さんと母さんは普段はそこまでお金を使わないのにこういう時にお金を使う。
僕は父さんに金融教育を受けているからその行動にはなるほどと思う。
でも、ヒマリは固まっていた。
僕とヒマリのスマホ、そしてリビングのテーブルには紙が置かれている。
全部同じ内容で、『ごめん、見てなかった』では済まない状況が作り上げられ、僕とヒマリは2人だけで家に暮らす。
ちなみにきゅうも連れて行かれた。
ヒマリがきゅうの面倒を見て時間を潰す道すら断たれているのだ。
僕とヒマリはリビングに座って紙を見る。
2人で10日間一緒に暮らしなさい。
やる事リストです。
(一日に最低1つはヒマリちゃんが選んで実行し、その日からずっと続けなさい。ヒマリちゃん、守らなかったら、ふふふふふふ)
・今日から2人下着姿で食事とお風呂以外はシュウの部屋で過ごす
・今日からシュウのベッドで寝る(服はを着て寝るのは禁止)
・今日から2人で一緒にお風呂に入る(30分タイマー必須で、シュウがヒマリちゃんを洗う事!)
・今日から1時間以上シュウがヒマリを抱っこしてシュウがヒマリちゃんの体を触り続ける(スマホタイマー必須!)
・今日から1時間以上2人で腕を組んで過ごす(スマホタイマー必須!)
・今日からシュウは1時間以上抱き合ってキスをする(キスはヒマリちゃんの舌に絡ませるのが絶対条件です!)
・シュウとヒマリちゃんがコンドームでスル
※食料は宅配で家に届くようにしました。
コンドームも消耗品もすべて揃えてあります。
買い物に行って逃げるのは無し、出かけるのは無しです。
※クーラーの温度は変えないでください。
うん、何だろう。
どこから突っ込めばいいんだ?
まずやる事リストの『ふふふふふふ』が怖いよね?
これはヒマリへの脅しじゃないかな?
それとヒマリに選ばせているのも明確な意思を感じるよ。
ヒマリに選ばせることで実行してもらい、自分で選んで逃げられない状況を作っている。
それにヒマリが逃げる道を潰すように注意書きとか補足が多い。
もっと言うと、軽い項目は2人で密着したり、一緒の部屋にいたりと、長時間距離が近くなるようになっている。
RPGに出てくる遅延性の毒と即効性の毒を思いだしたよ。
ヒマリのハードルを少しずつ下げていく作戦にしか見えない。
ヒマリが固まったまま動かない。
「ヒマリ?」
まだ動かない。
僕はヒマリの頬を指でツンツンした。
「はひ!シュウ!」
「どれにするか決めたかな?」
「ど、どうしよう。でも、最後まで出来るかな?」
「僕が選んでもいいなら『シュウとヒマリちゃんがコンドームでスル』を選ぶよ!さあ、ベッドに行こう!」
「だ、ダメーーーーー!わ、私が選ぶから!」
そう言ってヒマリは紙を取ろうとして取らず、両手を宙に浮かべたまま、また固まった。
小動物みたいで可愛い。
ヒマリのスマホが振動した。
母さんからだ。
ヒマリがスマホを取って耳に当てる。
「……ま、まだですぅ。そ!それだけは!言わないでください!駄目!駄目です!で、出来る所まではやりますから!1時間で決めます!え、さ、30分で決めます!」
ヒマリが電話を切った。
その後ヒマリの落ち着きが無くなり、スマホで連絡を取っていた。
僕とヒマリのスマホがすぐに反応する。
・今日から2人下着姿で食事とお風呂以外はシュウの部屋で過ごす
・今日からシュウのベッドで寝る(服はを着て寝るのは禁止)
・今日から2人で一緒にお風呂に入る(30分タイマー必須で、シュウがヒマリちゃんを洗う事!)
・今日から1時間以上シュウがヒマリを抱っこしてシュウがヒマリちゃんの体を触り続ける(スマホタイマー必須!)
【1日目から】今日から1時間以上2人で腕を組んで過ごす(スマホタイマー必須!)
・今日からシュウは1時間以上抱き合ってキスをする(キスはヒマリちゃんの舌に絡ませるのが絶対条件です!)
・シュウとヒマリちゃんがコンドームでスル
明日と明後日分も決めなさい。
30分以内に。
うお!次の催促が来た。
しかもギリギリ拒否されないさじ加減まで決めてもらうような意思を感じた。
ヒマリが最初に選んだのが、
『今日から1時間以上2人で腕を組んで過ごす(スマホタイマー必須!)』
これを毎日行うのか。
軽く見えるけど、1時間だから長いよね。
10日間毎日ヒマリと腕を組んで過ごすのか。
またヒマリが悩む。
僕はお昼用の食事を作って時間を潰した。
冷蔵庫を開けてすぐ気づいた。
ニンニクが多すぎない!?
でも、使わないのは、もったいない。
日持ちはするけど贅沢にニンニクを使おう。
僕は玉ねぎを刻んだ。
玉ねぎも多かったんだ。
ひき肉6:玉ねぎ3:卵1:パン粉1の割合でボールに入れる。
僕は玉ねぎをあらかじめ炒めない派なのだ。
ナツメグがあるから入れるけど、昔媚薬で使われていたよね?
塩コショウ、更に多めに刻んだにんにくを入れる。
うん、元気になりそうなハンバーグの種だね。
僕はボールの中身を粘り気が出るまで混ぜて休ませる。
その隙にあっさり目のコンソメオニオンスープ、更にサラダをちぎって器に盛って置く。
後はハンバーグを焼いて、コンソメスープを盛りつければ完成、か。
母さんから連絡が来た。
【1日目から】今日から1時間以上2人で腕を組んで過ごす(スマホタイマー必須!)
【2日目から】今日から2人下着姿で食事とお風呂以外はシュウの部屋で過ごす
【3日目から】今日から1時間以上シュウがヒマリを抱っこしてシュウがヒマリちゃんの体を触り続ける(スマホタイマー必須!)
・今日からシュウのベッドで寝る(服はを着て寝るのは禁止)
・今日から2人で一緒にお風呂に入る(30分タイマー必須で、シュウがヒマリちゃんを洗う事!)
・今日からシュウは1時間以上抱き合ってキスをする(キスはヒマリちゃんの舌に絡ませるのが絶対条件です!)
・シュウとヒマリちゃんがコンドームでスル
丁寧に並び替えられてる!
3日目はキスを選ぶと思ってたけど、こっちか。
そういえば、ヒマリはとにかく顔を見られないように顔を隠す癖があるよね。
キスをしながら顔を見られるより、赤ちゃんのように抱っこされて体を触られる方がいいのかな?
……ハンバーグを焼こう。
僕は小さめのフライパンに2つハンバーグを入れる。
強めに焼き色を付けると香ばしい匂いと、『じゅ~~!』といい音がする。
それにしてもクーラー温度が高めに設定されていて、汗を掻いてしまう。
ハンバーグをひっくり返して少し焼いたら、ワインを入れて蓋をし、蒸し焼きにする。
こうやって中まで火を通すのだ。
よし、ハンバーグを器に盛って、残った肉汁にバター、ケチャップ、ソースを混ぜてハンバーグの上にかけた。
ケチャップの酸味が香って食欲をそそる。
僕はテーブルに食事を運んでヒマリの隣に座った。
「ひ!」
「びっくりさせてしまたけど、今から『今日から1時間以上2人で腕を組んで過ごす』をやってしまおう。僕は左側に座るからヒマリは右手を使えるよ」
そう言ってヒマリの左腕を絡ませると、ヒマリの腕がしっとりしていて、ぬくもりを感じる。
「さあ、食べよう。二人で同時に1時間のタイマーをセットしよう」
2人同時に時間のタイマーを設置して、また密着するように腕を組んだ。
食べる前からヒマリは汗を掻いていた
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