第3話 変化
宵を迎える頃に男は起きた。
男はそれから机の横のコーヒーを唇を濡らす程度に飲んで、それから声を出して大きな欠伸をした。
誰もいないからよく響いた。
帰宅の準備を始めるとポケットの中の携帯が震えた。
「はい、もしもし円谷興信所です。依頼はなんですか?」
「私だよ!わ・た・し!誰からの電話かくらい見てから電話出てよ。」
「あー、みさきか。なんの用?」
「なんの用って一昨日のことに決まってるでしょ。奥さんの反応どうなの?」
「奥さんって呼ぶのやめろって言っただろ。水森恭子…今は円谷恭子だけど…。あーメンドクサイ。今だけは水森と呼ばせてくれ。」
男は頭をかきむしって言葉を続けた。
「水森は俺にバレないように振舞っていたけど、あれは絶対に気づいてるね。作戦成功ってところか。」
「成功ってまだまだ終わった訳じゃないじゃない。いい、憲介。ここからが大事なの!」
「俺を褒めてくれたっていいんじゃねぇの?俺がこんなに身を削ってるってのによ。」
「あなたが言い出した作戦でしょ?ハイハイスゴイデスネー。」
「なんだよその言い方。」
憲介は煽られると直ぐに乗ってしまうタイプだった。
「またあの気持ち悪いことやってるんでしょ?捜査対象者の気持ちを書いてみるとかゆうやつ。」
弥咲は逆に煽り始めたら止まらないタイプだった。
「凡人には分かんねぇよ!」
ピロロン
憲介は電話を切った後いつもの後悔をした。最近はこうやって喧嘩みたいになって電話を切ってしまうことが多い。その度後悔を繰り返していた。
本当は憲介は弥咲には頭が上がらなかった。この作戦に協力してくれることなんて半分奇跡みたいなものだと思っていた。
弥咲も前はあんなに強い態度をとってくることはなかったのだが。
「あいつだって結構無理してんのかな。」
その独り言は地面にすぐに落ちた。
軋むドアを開けてアラサーの探偵は帰路についていった。
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