あなた方が呪いと呼ぶそれは本当は呪いではありません
真那月 凜
本編
プロローグ
帝国の全ての国民が参加することの許される舞踏会
そこは相手のいる者にとっては楽しみの場、相手のいない者にとってはその相手を見つけるための最高の場として知れ渡っていた
「これはどういうことだ?!」
低い唸るような声が響き、その瞬間音楽も人の声も止み、痛いくらいの静寂が広がった
人々の視線の先には圧倒的なオーラを纏った男とその前で騎士に捉えられている女がいた
「帝王!わ…私の娘が何か…」
父親と思しき男が駆け寄ってきた
「何か…だと?」
帝王と呼ばれた男は父親をにらみつける
「2日前だと記憶している。その女が精神を病みエイドリアンとの婚約解消を言ってきたのは。違うか?」
その言葉に父娘ははっとしたように顔を見合わせ、その顔から色がなくなっていく
「ナイジェル・ブラックストーン、魔導士団長が虚偽の申請をしたと…」
「お、お待ちください帝王!私は本当に…!」
娘が必死で訴えようとするも、その言葉は遮られた
「下らん芝居は見苦しい。精神を病んだものが数日で舞踏会に出る等聞いたことがない。それが可能と思う者はこの中にいるか?」
帝王の張り上げた声に無言のまま首を横に振る者、ありえないとつぶやく者、帝王に対してよくそんな出鱈目が言えたものだと失笑する者、様々だが肯定する者はいない
「我を侮辱した報いは覚悟できているのだろうな?」
射殺すような視線に父娘は震えあがっていた
「お待ちを…この娘の代わりに次女を…!」
「そ、そうだわ。妹のアリシャナは帝王もご存知でしょう?10歳から魔導士団で勤めていますもの。私よりもよっぽどエイドリアン様に相応しいかと…」
苦し紛れに必死で訴える
「その通りです帝王。月の女神と異名を持つアリシャナであれば…!ですからどうかこの娘の…アンジェラの命だけは…!」
帝王を謀るということは死罪を意味しているためナイジェルもアンジェラも必死だった
「…確かその女はその容姿が自慢だったか…甘やかされわがまま放題に育ったようだな」
「…申し訳ございません」
「その点アリシャナは自立した信頼のおける者か…」
帝王の口にした評価にアンジェラの顔がゆがむ
それに気づきながらも帝王は言葉を続けた
「よかろう。今日この時よりアリシャナはエイドリアンと、アンジェラは我が息子マックスと婚姻したことを宣言する。両者の離縁は未来永劫認めないこととする」
その言葉にざわめきが起こる
「アンジェラの数多在る噂を考慮すればそこは譲らん。さらに皆に言っておく。今後アンジェラと不貞を働いた者は我の怒りを買うと思え」
帝王の声はホールに響き渡った
「まって…いやよ!マックス様は…っ!」
「やめなさいアンジェラ」
ナイジェルはアンジェラの口を塞いだ
「だってお父様…」
「ブラックストーン家の存続とお前の命を救うには同意するしかないんだ」
ナイジェルの言葉にアンジェラは泣き崩れた
身から出たさびとは言え馬鹿な女だとささやく声だけがいつまでも投げかけられていた
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