eternity:recall
上柳きゅー
序章
徒歩では出入りすら危険とされている、剣(つるぎ)のように尖った険しい山岳地帯。
鋭くそびえ立つ岩山に囲まれたその一角に、ひとつの小さな村がある。
その立地からは他国との流通はもちろん、交流なども困難だろうと誰しもが思うだろう。
しかし、こんな辺鄙な場所に今もこうして人が住んでいるのは、この世界ではごく普通のことだ。
この世界の町や国は、そのひとつひとつが浮島のようにわかれて存在しており、それぞれの大陸には世界の端っこが存在する。
世界の端と呼ばれる大陸の終わりへ行けば、隣の大陸である浮島が見える。
不思議なことに、そこから外へ出ようにも透明な壁に阻まれそれ以上外へは飛び越えることが出来ない。
それぞれの国や町には光の架橋と呼ばれる、島から島へと移動する事の出来る装置が設けられており、その転移装置を使えば各地へ移動できる。
金銭などの対価は一切かからず、通行許可証さえあれば自由に利用できる為、移動手段には困ることがない。
階級や取得している資格ごとに移動できる範囲は異なるが、一般人も自由に使えるとあって、だれでも通れるその島の中には害獣や魔物といった類の生物が襲い来る心配もない。
もちろん、一般利用出来る島に限りの話なので、そのうちの一部は除外される。
一見すれば通行料無料で便利そうだが、問題点を挙げるとすれば町々や国々によって文化の違いが極端であること。
交流することで問題が生じてしまう可能性のある場所に移動することは禁止されている。
それを当たり前に慣れ親しんで来たこの世界の人々は、それもまたひとつの味であると感じて、侵略しようだの行けなくて不便といった考えは持っていない。
そんな不思議な世界で起こる、
小さな希望たちが生んだ悲劇と戦いの物語。
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