20 童話 鳥になりたい

 童話 鳥になりたい


 ちょっと誰か、早くここから出してよ!!


「この世界では毎日、たくさんの人たちが死んでいます。そして、それと同じくらいにたくさんの人たちが生まれている」そんなことを仄は言った。

「たくさんの人たちがいて、たくさんの幸せがあり、たくさんの不幸がある」

 感情のない機械音声のような声で仄は言う。

「では、本当の幸せっていったいなんでしょう? 素直くんにはそれがなにかわかりますか?」素直を見て仄は言う。

「わからない。本当の幸せとはその人の思う、それぞれの幸せだと思うから」と素直は言う。

「では、素直くんにとっての本当の幸せとはなんですか?」仄はいう。

「僕にとっての幸せ……」素直は言う。

 素直は考える。

 でも、「……ごめん。よくわからない」と素直は言う。

「それでいい。じっくりとよく考えて、いろんな経験をして、そうやって素直くんの本当の幸せを見つければいい」とにっこりと笑って、仄はいう。

 そんな話をしていると、素直は自分の足になにかが当たることを感じた。

 見ると、そこには三毛猫がいた。

 いつの間にか素直のところに戻ってきていた三毛猫は、二人の会話を聞きながら、とても退屈そうな顔をしている。(その証拠に三毛猫は大きなあくびをした)

「今、私たちは海の上を漂流している」

 そんなことを突然、仄は言った。

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