言葉責め暴力責め兎姫
舞から放たれた光の中心から現れたのは、バニーガールだった。
顔や身体のシルエットは舞のものだ。
しかし、優美で豊満な身体が纏っているのは黒いショルダーオフのレオタード。
胸元はファーが付いて妖艶さを増している。
細い腕は長手袋で覆われ袖口には同じくファーが付いている。
際どいカットのハイレグから伸びる足は黒いタイツに覆われ膝まである長いヒールブーツで包まれ、締まったお尻と共に優美なラインを強調する。
肩から左右に大きく張り出した金縁シースルーの陣羽織は威嚇的だが、肩と腋を露わにしており扇情的だ。
首元の留め金からは表黒裏赤のマントが伸び端にはファーが付いている。
長い前髪と後ろ髪の間から本物の兎耳が伸びている。
変形した衣装だが間違いなくバニーガール。
そして舞の中に封印されている妖魔、兎姫が操っているときの姿だ。
「ふむ、妾の姿に欲情し、交わりたいようじゃのう」
黒坊が再び立ち上がったのを見て兎姫は言った。
先ほどより黒坊は更に鼻息荒く、股間は膨れあがり前屈みになっている。
「このような下等な妖魔を欲情させるほど魅惑的な存在とは、妾も罪深いものよのう」
自らの美貌を自慢していると興奮した黒坊が勢いよく走り出して兎姫を押し倒そうと向かってくる。
しかし、兎姫は素早く避けて躱し、黒坊の背後を取る。
さらに右手を広げ精気を集中、光の塊を作り実体化させ檜扇を作り上げた。
「ほほう、妾と組み敷きたいか? じゃが貴様は妾の好みに合わぬし、押し倒そうなど不届きじゃ」
無防備な背中に作り出したばかりの檜扇を打ち当てて突き飛ばす。
前につんのめった黒坊は踏ん張って転倒を防ぐと振り返って再度兎姫に迫る。
「妾の言ったことが分からぬか。では一つ一つ理由を答えようぞ。まず」
黒坊は両手を兎姫に伸ばしてきたが、それを檜扇で叩き向きを逸らした。
「ゴツくて堅い汚い手。妾の名の通り、玉のような肌を傷つけるのはダメじゃ。次に」
振り返ろうとした黒坊の臑へ黒いロングブーツで包まれた細長い足をローキックで尖ったつま先を叩き付ける。
「ぎゃあ」
「太く毛深い臑、妾の身体が潰れ堅い毛が絡みついて妾の玉肌を刺したらどうしてくれる。そして」
悲鳴を上げた黒坊に兎姫は容赦なく欠点を言い、高いヒールで足の甲を踏み付ける。
「ぎゃああああ」
「水虫の居そうな汚らしい足裏。見るのも不快じゃ。それに」
足を抱えて飛び跳ね絶叫を上げる黒坊だが、直ぐに怒りで痛みを忘れて組み伏せるべく、不快とばかりに背を向けた兎姫に向かって突進する。
しかし、兎姫は振り返ること無く右手に握った檜扇を堅く握り背中越しに迫ってきた黒坊の顔に先端を叩き付けた。
「ぐわあああああっ」
黒坊は再び悲鳴を上げるが兎姫は気にせず欠点を述べ続ける。
「ドブのような匂いを放つ息。こんな悪臭の中にいられるものか。キスしたとき移ったらどうしてくれる。さらに」
周囲に漏れる黒坊の悲鳴に混じる臭気を遮るように鼻に左手を添えつつ、二の腕まであるロンググローブで包まれ鋭い黒光りを放つ細い肘が半分めり込み穴を穿つような一撃を黒坊の脇腹に叩き込む。
「その鉄板のような硬い腹筋。その上に妾を迎えようなど地面に座らせるような無礼じゃ。しかも筋肉がありすぎて力が強すぎ、柳のような妾の身体をへし折る気か、たわけ者、そして」
激痛のあまりうなり声しか出せない黒坊へ、兎姫は身体を半回転させ、遠心力で力を増した檜扇で左頬を打ち据えた。
「うなり声しか上げぬ口。絶世の美女である妾の美貌を賞賛する言葉も無しに近づこうとは失礼千万じゃ、しかも」
振り抜いた檜扇を高速で反転させ今度は右頬を打ち据えた。
「並びの悪い歯、幾つか欠けておるのう。虫歯もありそうじゃ。キスしたときに移したらどうしてくれる。論外じゃ。あと」
檜扇を何度も往復させ黒坊の顔をビンタする。
「脂肪が付きすぎて潰れてしまったような顔。そのような醜き顔で妾に迫るでない。見るだけで吐き気がする。一度削ってから来い。しかも」
フラフラになった黒坊の背中に兎姫は檜扇を幾度も打ちつける。
「風呂に入っておらぬせいか汚い肌。妾は汚い物は嫌いじゃ。重なったとき妾の肌が汚れてはどうする。極めつけは」
足の間に細い足を振り上げつま先で二つの玉が入った袋ごと棒の根本を叩く。
「っっっっ」
「ただ太く堅いだけの粗末な棒。堅くて太いだけなら鉄柱で十分じゃ。そのような粗末な物を妾の中に入れて大切な物が壊れたらどうしてくれる」
脂汗を掻く黒坊を無視して、おぞましいとばかりに兎姫は自分の身体をくねらせながら自分の右腕で胸を左腕で秘所を抱きしめる。
「つまりじゃ」
一通りの自演に満足した兎姫は檜扇を天高く掲げると、うずくまる黒坊に向かって振り下ろす。
「貴様が妾と交わろうと思うなど不届き千万!」
言っている間も兎姫は檜扇を鞭のように振り回し黒坊を打ち据える。
その間痛みで感覚が麻痺しているのか黒坊は動けない。
哀れな黒坊だが追い打ちをかけるように兎姫は黒坊の周りを優舞に歩き回りながら全身を満遍なく叩く。
数十回も乾いた音が周囲に響き渡る。
しばらくして飽きたのか兎姫は、黒坊の背後に回ると、しなやかな足を鞭のようにしならせて黒坊の尻を蹴り叩いて吹き飛ばした。
「身の程を弁えよ! 醜悪な下郎!」
最後に檜扇を広げ更に精気で光の塊を作り光弾を形成して倒れている黒坊に向けてに放つ。
光弾が当たった黒坊は咆哮を上げ倒れた。
一度倒れたが再び立ち上がり再び兎姫を今度は憎悪の目で睨み付ける。
「ほほう。妾を叩きつぶそうというのか。低脳じゃのう。これが世に言う脳筋というものかの。醜いものじゃ」
広げた檜扇で口元を隠して笑うが、目の形で見下して笑っているのが剣司にもわかる。
それを黒坊も理解し再び兎姫に襲いかかる。
「ふむ、まだ妾との力が理解出来ぬようじゃの。言葉を解せぬのか。ならば妾の力とくと見るが良い!」
兎姫は両腕を前に伸ばし檜扇を持った右手を上に左手を下にする。そして両手の間に光弾を発生させ両腕を広げつつ莫大な精気を流し込み、光弾を巨大化させる。
「盛りのついた醜き塊よ。塵も残さず消えるが良い!」
長い両脚を広げ引き締まった腰を捻って勢いよく細い右腕を回し、作り上げた巨大光弾を高速で黒坊に投げつけた。
黒坊は避ける余裕も無く、巨大光弾を受けて吹き飛んだ。
「ふん、見かけ倒しじゃのう。ただ単に精気がデカいだけのでくの坊じゃ」
黒坊が消え去った跡を檜扇を畳み両手を腰において胸を張り悠然と兎姫は見下ろした。
「さて、其方。剣司よ。其方はどうする?」
兎姫は妖艶な笑みを浮かべて剣司に尋ねた。
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