第二話 魔法が使える世界

 気が付くと、俺は森の中で寝転がっていた。葉と葉の間から日の光が差し込んでくるので、森の中といえど割と明るかった。


「ここが転生先か…」


 服に付いた落ち葉をはらいながら起き上がった俺は、あたりを見回しながらそうつぶやいた。


「そういえば神様がステータスを確認しろとか言ってたな」


 自分のステータスが見たい。そう思ったとき、目の前に薄いパネルが表示された。恐らくこれがステータスなのだろう。


「考えるだけで表示されるなんて便利なものだな」


 ちなみにこのパネルに手を伸ばしてみたが、透けてしまい、触ることはできなかった。


(なるほど。そういうものなのか…)


 とりあえず俺のステータスはどんな感じだろうか?ひとまず確認してみることにしよう。

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 名前 ユート・アラキ 不老人族 LV.1

 体力 500/500

 魔力 1000/1000

 攻撃 650

 防御力 650

 俊敏性 600

 スキル

 ・鑑定LV.MAX

 ・言語翻訳LV.MAX

 ・身体強化LV.5

 ・剣術LV.5

 ・アイテムボックスLV.MAX

 魔法

 ・火属性

 ・水属性

 ・風属性

 ・土属性

 ・光属性

 ーーーーーーーーーーーーーーー

「…ステータス画面はRPGに出てきそうなやつだな」


 俺は腕を組みながら前の世界でやっていたゲームを思い浮かべていた。


(ていうかユート・アラキって……この世界の名前はこんな感じなのか……あと不老人族って…俺もう人間じゃねえな……)


 何かと自分のステータスにつっこみをしつつ、俺はその中にある〈鑑定〉というものを注視してみた。すると、


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 〈鑑定〉LV.MAX

 対象のステータスを見ることができる。

 ランクが高いほどより正確に見ることがが出来る他、〈ステータス隠蔽〉の効果を受けにくくなる。

 自身のLV+15以上の相手のステータスは見ることが出来ない。(スキルLVがMAXの場合は例外)

 ーーーーーーーーーーーーーーー


 と表示された。


(〈鑑定〉か…かなり便利そうなスキルだな)


 相手の情報を知ることは戦いの際にかなり有利になりそうなので、使う機会が多そうだ。

 ステータスを眺めていると、後ろからぺったんぺったんという音がした。振り返ってみると、後ろには高さ三メートルくらいある半透明の丸い生き物がいた。


「これってRPGでよく出てくるスライムってやつかな?」


 俺のスキルに〈鑑定〉というのがある。答え合わせも兼ねて俺は〈鑑定〉を使ってみた。


 ーーーーーーーーーーーーーーー

 名前 キングスライム LV.5

 体力 700/700

 魔力 0/0

 攻撃 10

 防護 900

 俊敏性 550

 弱点

 ・火属性

 スライムの上位種。

 自分より小さい生き物は全て食べ物とみなし、口から出る酸で溶かして吸収する。

 ーーーーーーーーーーーーーーー


 待てよ?

 俺の身長は年齢にしては小さめの百六十センチメートルくらいだ。一方、目の前にいるキングスライムは三メートル。


(あれ?俺ってこのままだと喰われる…じゃなくて溶かされて吸収されるんじゃね?)


 ここで人生が終わるなんてごめんだ。人生死ぬのは一度だけでいい。

 そんなことを考えていると、俺はキングスライムがこっちをじっと見つめていることに気づいた。口からよだれ…に見える酸を出しながら…


「と、とりあえず逃げるか」


 俺はキングスライムに背を向けると、全速力で走った。


「流石にあの見た目だし追いついてくることは無いだろう」


 しかし、こういうフラグは直ぐに回収されるのがオチだ。後ろを見てみると見た目に似合わずかなりのスピードで跳ねながら追ってきていた。


「ま、まずいこのままだと死ぬ~!!」


 ただここでふと魔法という言葉が頭に浮かんだ。


「そういえば弱点の所に炎ってあったよな?」


 今の俺は魔法が使える。

 火属性の魔法を使えば倒せるんじゃないか?

 そう思ったとき、〈火球ファイアボール〉という魔法の使い方が頭に入ってきた。

 俺はイチかバチか振り返り、キングスライムに手を向けて、


「〈火球ファイアボール〉!!」


 と、叫んだ。

 すると、目の前に直径八十センチメートルほどの火の玉が出たかと思うと、一直線にキングスライムのところヘ飛んでいき、当たった瞬間にキングスライムは全身が炎に包まれた。

 そして、炎と煙が消えたところで恐る恐る確認してみると、キングスライムは跡形もなく消えていた。


「た、助かった~」


 俺は力が抜け、その場に座り込んだ。


 ふとステータスを見て見ると、LVが1から3に上がっていた。また、体力、魔力といったステータス100~200ずつ上がっていた。魔力は1100/1150と表示されていた。恐らく魔法を使ったからだろう。ただ、魔力はどんどん回復していき、ほんの数秒で魔力は満タンになった。


「さっきみたいに焦っちゃ駄目だし、少し魔法の練習をしてみよう」








 一時間ほど経過した後……


「ひとまず使える魔法は全て試せたな」


 俺が使える魔法は、〈火球ファイアボール〉、〈水球ウォーターボール〉、〈風刀エアカッター〉、〈土弾ロックバレット〉、〈結界シールド〉の五つだ。

 〈火球ファイアボール〉はさっき撃ったので、他の四つを試してみた。

 魔法の試し方は、木に向かって魔法を撃つというシンプルなものだ。


 〈水球ウォーターボール〉は直径五十センチメートルほどの水の球を飛ばす魔法だ。木に当たっても木は少し削れたかどうかと言った感じなので、あまり威力は高くなさそうだ。これは戦いというよりも戦闘補助みたいな使い方をするのだろうか?まだよく分からない。


 〈風刀エアカッター〉は長さ五十センチメートルほどの薄い風の刀を飛ばす魔法だ。こちらは横なぎに撃ってみると木がきれいに二つに切れたことからかなりの威力がありそうだ。


 〈土弾ロックバレット〉は直径十センチメートルほどの石を飛ばす魔法だ。木に当たると穴が開き、さらに奥にあった木まで貫通した。これは〈風刀エアカッター〉より威力があり、範囲は狭いようだ。


 〈結界シールド〉は任意の場所に薄い透明な壁をはるものだ。大きさは自由に決められたが、大きいとその分多く魔力を消費してしまった。ためしに、そこに〈風刀エアカッター〉を飛ばしてみると、傷が少しついたくらいでわることは出来なかった。ただ、使用していると、一メートル四方の大きさで一秒に八十のペースで魔力が消費されてしまう。また、自分から五メートル離れたところまでしかはることはできなかった。

 また、他の三つの魔法は一回使うごとに五十消費する。

 ついでに、一秒にどのくらいの魔力が回復するかさっきはよく見ていなかったので、この時に見てみた。すると、一秒に十二ずつ魔力が回復した。今の俺の魔力は1200なので毎秒一パーセント回復することが分かった。


「そういえば神様が転移の魔法があるとか言ってたな」


 このままLVを上げていけばほかの魔法も覚えられるようになるのだろうか?まあ、今後に期待しておこう。


「そういえば〈鑑定〉以外のスキルを見ていなかったな」


 他にもスキルがあることを思い出した俺は他のスキルも詳しく見てみた。


 ー--------------

 〈言語翻訳LV.MAX〉

 すべての言語を読む、書く、聞く、話す事が出来る。

 ランクが高いほどより正確に翻訳することが出来る。

 スキルレベルがMAXの時に限り、自動で翻訳される。

 ー--------------


 ー--------------

 〈身体強化LV.6〉

 スキル発動中は体のあらゆる部位を強化するこ小が出来る。

 スキルLVが高いほどより強く強化することが出来る。

 ー--------------


 ー--------------

 〈剣術LV.5〉

 スキル発動中は剣の使い方をマスターし、使うことが出来る。

 スキルLVが高いほど剣の腕前も上がる。

 ー--------------


 ー--------------

 〈アイテムボックスLV.MAX〉

 亜空間にものを入れることが出来る。生き物を入れることは出来ない。

 また、この中では時間が止まっている。スキルLVが高いほど容量も多くなる。

 ー--------------


「どれも便利なスキルだな~」


 今後使う機会の多そうなスキルばかりだ。スキルにもLVというのがあったので、どんどん上げていきたいと思う。まあ、強くなれば自然と上がると思っているので今後に期待だ。

 ステータスに書かれていることはすべて見たので、取りあえず今やろうと思っていたことはすべて終わらせた。

 俺は地面にあおむけで寝転がった。空を見ると日はもう沈みかけており、星と月がが少しずつ見えるようになってきた。


「やべ、このままだと夜になるな…」


「野宿はしたくなっかったけど、あるかもわからない村や街を今から探し始めるよりましか……」


 そう思った俺は起き上がると、魔物が来ても襲われないような木の上へ登った。


「流石にここなら大丈夫だろう」


 俺は十メートルほどの高さがある木の上で呟いた。

 あとは寝やすいように木の枝で簡易的な床を作れば一晩はしのげるだろう。




 三十分後……

 何とか俺の思った通りの家(?)ができた。寝返りを五回ほどうてば落っこちるくらいのガバガバな作りだが、一晩を凌ぐには十分だろう。


「今日は疲れたしもう寝よう」


 まあ疲れたというのは建て前で、本当の理由は食べ物がない為、このまま起きていたら途中で腹が減って寝られなくなると思ったからだ。


「おやすみなさい……」


 俺はそう呟くと、意識を手放した。






 暫くして……


「グルルルルル……」


 俺はこの音で目が覚めた。

 この音は俺の腹の音ではない。周りを見回すと、月明かりが照らされている木の下に大きな狼が六頭いて、深紅に光る眼でこちらをにらみつけていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る