第67話 合コン

 東京に戻ってしばらくしたら、加藤から本当にコンパのお願いの連絡が来た。

 俺はものすごく困ったけど、渋々引き受けた。


 加藤の希望は5対5。


 女子ウケするお店が全く分からないので、お店のセレクトは加藤に任せた。


 俺はただ人数を集めて会場まで連れて行くのが仕事だ。


 まずは俺。そしてアユタと佑にお願いする。2人共喜んでオッケーしてくれたから、良かった。

 あともう2人は、佑が声をかけてくれると言った。


 佑は地元が東京なので、顔が広い。

 頼りになる友達がいてくれて助かる。


 佑から「人数揃ったよ」との連絡があり、俺は安堵した。

 コンパって、ほとんど経験無いけど、幹事って大変なんだなって思った。


 コンパの日になり、約束の時間にお店の前に早めに行く。

 ちゃんと皆が来てくれるか心配だったのだ。


 少しして、俺以外の男4人が来た。

 メンバーのあとの2人は同じ学部のやつだったので、顔見知りだ。心強い。


 店の中に入って、予約の名前を言って、先に席に行く。それからすぐに女子達が来た。


 大学にも女子がいるし、サークルにだっているけど、他の学校の子はまた違う感じに見える。

 藍田もいる。

 俺はちょっとドキッとするけど、コンパなだけに微妙な感情だ。


 会えて嬉しいけど、でもコンパ。

 他の男が狙ったらどうしよう…。ていう不安。


 加藤:「えっとー、コンパなので、男子と女子が交互になるように座ってください。

 料理は何品か頼んであるので、飲み物だけ決めてもらって、食べ物はあとで食べたいものがあったら頼んでね。」

 

 加藤は慣れた様子で仕切る。


 俺は藍田の隣に座ろうと思ったけど、なんとなく入ってきた順番に座っていったので離れてしまった。

 

 飲み物を頼んで、乾杯したら自己紹介だ。


 まずは男幹事の俺からになった。トップバッターなんて、1番イヤな役目。

 最初に話するやつ次第で、次に続く人も同じような感じにしてくる。そしてその雰囲気が会の最初の雰囲気になる。

 結構責任重大だ。


 真面目にいくか、笑いを取りに行くか。


 俺:「本宮 大聖です。日本乃大学2年生です。幹事の加藤と、そこの藍田とは小中で一緒の同級生です。

 加藤に『東京で一旗揚げたい』と言われ、夢の実現のためにこの会を開きました。どうぞ皆さん、加藤のために一肌脱いでやってください!」


 加藤:「ちょっとー、何それ!違うから!」


 加藤の合いの手のおかげでややウケだった。

 まあ、笑いなんて取りにいける俺じゃないから、これくらいしか言えない。


 あとで「自己紹介で人ネタはナシだよ。もー。」と加藤にちょっと怒られてしまったが。


 次は加藤。

 「加藤 笑夢えむです。洋服のサイズも、態度もMです。よくLLって言われるけど、“M”です。よろしく!

 ちなみに、もう一旗揚げてますので、今日は乙女な感じでいきますからね、皆さんそういう扱いでお願いします。

 あ、どんな“一旗”ですかって?それはここじゃちょっと…。ヒ・ミ・ツです。」


 次に続く人も、1ネタ入れた自己紹介をする。女子もだ。なので結構盛り上がるけど、それはそれで後に続くやつがプレッシャーだ。


 最後に藍田の番になる。

 「藍田です。加藤 LLとは、小さい時からずっと友達です。よろしくお願いします。」


 はい、ぶっ込みましたー加藤ネタ。

 あとで怒られるやつ。


 藍田、真面目に行くタイプかと思ってたのに。


 その後一度席替えをしたけど、くじ引きだったので、また藍田とは遠い席だった。

 藍田とほとんど話できなかったので、心は涙だ。

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