アユタの秘密
第38話 キャンプ場のゲームでのこと
俺達は4人でドリンクをおかわりしながら、和気あいあいとおしゃべりする。
カケルくんとは久しぶりで、他の2人は初めて話すので、ざっくばらんとはいかないが、それなりに楽しく盛り上がる。
ふっとさっきの話を思い出し、気になってもう一度確認する。
俺:「さっきさ、俺が使ってた端末の充電、急激に減ったのって結局何だったの?
不具合なら解決しないと、あの時携帯の電波も届いてなかったし。」
カケルくんはちょっと困った顔をする。
「それね…、実はあの時、システムに攻撃を受けたんだ。」
俺:「サイバー攻撃ってこと?」
カケル:「うん…。ちょっと前からさ、ウチの会社に何回か攻撃された痕跡あったんだ。」
俺:「えー?それって大丈夫なの?」
カケル:「んー、あんまり…。だけどこの前のその件までは特に被害は出てはなかったよ。
本当は、ゲーム終わったら本宮くんの前に現れて“オレでしたー”ってやって、ゲームの事情を説明しようと思ってたんだ。
でも、ちょうどあの時攻撃あって、システムに不具合が出ちゃったから、会社に戻らなきゃいけなくなったんだ。」
俺:「あ、そうなんだ。その時会えてたら良かったなー。でも酷いね。何で攻撃なんかしてくるんだろ?」
カケル:「うん、それなんだよね…。
実は、あのキャンプ場のゲームの本当の目的は、攻撃者への呼び水にすることだったんだ。
“キャンプ場のゲームがヤバい”って噂流して、隠しゲームの存在も匂わせて、攻撃者が直接そこに来るように誘導してたんだ。」
俺:「え?じゃああのオレが最初に見つけたネットの書き込みは、カケルくん⁉︎」
カケル:「そう。そしたら本宮くんが来てくれてびっくりだったんだけど。」
網にかかった俺…。
俺はちょっとだけ何とも言えないような複雑な心境だ。
俺:「でもオレ、攻撃なんかしてないよ!」
カケル:「分かってる。それは分かってるけど…。」
カケルくんは他の2人をチラチラ見ながら、何かすごく言いにくそうに話する。
俺:「ワナを仕掛けるには、随分と田舎を選んだね。東京からも遠いのに。」
カケル:「攻撃してる人が東京近辺の人だとは限らないからね。どこの誰か全然分かってなかったから。
キャンプ場のパソコンは別なんだけど、ウチの会社のゲームに使うものは、そこだけの独立したネットワークにしてたんだ。
そして、攻撃者がいつ来てもいいようにトラップも仕掛けてて。
だから、あんまり一度に大勢来られると攻撃者の特定ができないんだよね。
東京近辺だと、ありがたいことにお客さんが多いから。
東京本社近辺の人なのかとも思うけど、ウチの会社の開業した場所がオレと本宮くんの地元だから、もしかしてその辺の人の可能性もあると思って、隣りの県だけど、人が少ない田舎のあのキャンプ場を選んだんだ。」
俺:「そっか、テストするならやっぱり人が集まるところの方ががいいんじゃないかって思ったけど、そういう事情だったんだね。」
カケル:「でもあの日は本宮くん達だったから、ちょっと気を抜いてたんだよね。本宮くんの方に気が入っちゃったっていうか。
持ち場を離れる時はいつもトラップ用に切り替えて、会社へ繋がる外部の回線は切り離してたんだけど、つい忘れちゃって。そしたらあのタイミングで攻撃受けたんだよね。
トラップ用じゃなくても対策はしてあるんだけど、ちょっと不十分で、端末の充電が急激に減ったのと、通信障害が起きたのはそのせいなんだ。
その時はトラブルの内容をよく把握してなかったから、本宮くんのには気付かなくて…。
で、最初、会社の方に来たって連絡受けたから、同じ県内にある会社の分所に急いで行かなきゃいけなくなったんだ。」
俺は話を聞きながら、なんか心に引っかかってくる。
アユタも佑も黙って聞いている。
俺:「それってさ、どうやって攻撃されたか分かるの?」
カケル:「うん。」
俺:「じゃあ、誰かっていうのは…?」
カケル:「…うん。」
俺はなんか嫌な予感がしてアユタと佑の方を見る。
佑もアユタの方に目をやる。
…まさか…ねぇ?
と思った時、ずっとこっちを見ないように目を逸らしてたアユタが口を開く。
「…オレだ。サイバー攻撃を仕掛けたのは、オレなんだ。」
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