第36話 カケルくんとの再会

 発表会が終わり、俺達の緊張もすっかり解けて、入り口の飲み物をもらってそれを飲みながら3人で談笑する。

 そこへ、“カケルくん”がやってきた。


「本宮くん、久しぶり!」


 俺はカケルくんの姿にびっくりして立ち上がる。

「カケルくん!久しぶり!

 俺、ずっと謝りたくて…その…本当にごめんね!

 それに、キャンプの受付の時、全然気付かなかった。ごめん。」


 小学校以来のちゃんとしたご対面なのに、普通の挨拶とありがちな近況報告はすっ飛ばして、開口一番カケルくんに謝った。


 カケルくんも、なんの違和感もなく俺の話に合わせてくる。


「こっちこそ、ごめんなさい。オレ、あの時のことは本当に怒ってなくて、ゲームのラストはちょっとイタズラしただけなんだ。」


「え?イタズラだったの?」


「うん、ま、ここじゃ落ち着かないから、場所変えて話しようか?」


「いいけど、カケルくん忙しいんじゃないの?」


「大丈夫。オレ、ただのアルバイトだから。」


「アルバイトなのに発表会に出てたの?」


「まあ、オレ、開発者だし。」


 そんな話をしながら、4人で半個室になってる喫茶店のようなファミレスへ移動する。


 落ち着いたところで、改めて話を始める。


 カケル:「えっと、お二人は初めましてではないですが、本宮くんの同級生としては初めまして。すみません、お話付き合っていただいて。」


 アユタ:「いえ、こんな盛大な発表会に招待していただいて、ありがとうございます。」

 佑:「ありがとうございます。」


 俺:「カケルくん、本当に怒ってないの?オレ謝りに行こうと思ってたんだけど肺炎になって入院しちゃって…」

と、当時の自分の状況を一気に話した。


 カケルくんは黙ってちゃんと聞いてくれた。


 カケル:「キャンプ場の隠しゲームの、“スズラーノ”って覚えてる?」


 俺:「うん、バトルしたから覚えてるよ。」


 カケル:「あれさ、5年生の時2人で考えた敵キャラだよ。それも覚えてる?」


 俺:「あれ?そうだっけ?ごめん、覚えてない。」


カケル:「花ってさ、身近にある花でも毒があるんだよって話したら、じゃあ毒吐く花って敵キャラになるねって本宮くんが言ったんだ。」


 俺:「あー、そう言われたら、なんかそんな気がしてきた。」

 俺はやっと少し記憶が蘇ってきた。


 カケル:「オリエンテーリングの時、オレ、スズランの花見つけたんだ。

 その、敵キャラの話のとき、スズランて花屋にしか無いんじゃない?って話してたけど、オリエンテーリングで立ち止まった時に偶然自生してるの見つけて。

 その時本宮くんに話しようとしたけど、皆で地図とコンパスで道を一生懸命探してたから話かけるのやめて、後で見せようと思って皆の側を離れてスズランの花を摘みに行ったんだ。

 すぐそこだし大丈夫だろうと思ってたけど、花摘んで振り向いたら皆いなくてさ、あ、置いてかれた、と思って。で、慌てて追いかけようとしんたけど、フッとなんか、別にいいかって気分になって、追いかけるのやめてゆっくり歩いたんだよね。

 その後すぐ土砂降りの雨降ってきて、急いで大きな木の下に行こうとしたら、足滑らせて崖から落ちちゃったんだ。

 だからさ、本宮くん達は全然悪くない。

 俺が走って皆に追いつこうとしなかっただけ。

 逆に、本宮くんが肺炎で入院してたの知らなくて、こっちこそ本当にごめんなさい。」


 俺:「オレのことは大丈夫。会えて良かった。本当に良かった!

 それでも、あの時ちゃんと確認してたらカケルくんがいないことに気付いてたはずなのに。」


 カケル:「それも本当に大丈夫。あの時の突然土砂降りは、慣れない山の中だし、小学生なら皆パニックだよ。」


 アユタ:「よかったな!大聖!」

 佑:「よかったね!落ち込んでたもんね。」


 俺は胸のつかえが取れ、嬉しくてつい目がウルウルしてしまった。

 それをアユタと佑に見られてちょっと恥ずかしい気分だ。

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