第2話始まり

【始まり―約5年半前】

 ずーっとはまっているゲームがある。

 もともとそれほどゲーム好きではなかったけれど、友達の家にあったVRMMO-RPGを見せてもらってから、その臨場感がすごくて友達にお願いしてやらせてもらった。


 それはすごい迫力と臨場感、まるで自分がその世界で本当に生きているかのような、そんな体験だった。


 でも、ゲームをやってみようと色々設定する際、ステータスの中身を見てジョブ、レベル、MP、LP、CNP、スキル・・・・・・など様々な設定や、持ちポイントの割り振りが複雑で自分にはとても難しくって、それぞれの項目を把握して、設定や割り振りをするだけで1日かかってゲームどころじゃなくなって、そのことを友達に聞いてみると、それもこのゲームの楽しみの1つだそうだけど、それを聞いて、その友達の事をすごいと思う反面、自分には無理かなとあきらめかけていた。


 それから数か月後、よりリアルで俺でもわかるようなシンプルな設定の新規格VRMMOR-RPGオンラインゲームというのが発表されたので、思わずお年玉を使って買ってしまい、ちょっと早まったかなって思いながらも家でやってみると、友達のVRMMOよりリアルで且つシンプルだったので、それにはまってしまい、1年以上続いている。


 今の俺のレベルは84、このゲームとの相性が良かったんだと思う。

 始めると簡単にどんどんレベルが上がるので、ゲームと学校と勉強、時々友達、みたいな生活を送っていた。


 気が付けば、上級レベルにまで達しており、トップクラスまであともう少しと思いながらやっているけど、もう中学3年生。


 本当は90まで上げてトップクラス入りしてから、本格的に受験勉強を始めるつもりだったけど、80を超えてからなかなかレベルが上がらず、最初にジョブを設定する時、正当なヒーローより、影で暗躍するちょっとダークなヒーローみたいなのに憧れていて設定したジョブが失敗だったのか、なんて考えていていたが、

 パーティーを組んでからスムーズにレベルが83になり、さらにそこから1つレベルが上がったと思っていたら、現実では肝心の学校の成績が止まったまま全然上がらなくてこのままだったら第一志望校には受からない、と先生に言われ、母親が心配して、というより父親がすごく心配したものだから、いったんパーティーを組んでもらった相棒には、ゲームの方のレベル上げは来年の春までお休みすると伝え、現実世界の成績の方のレベル上げのため受験勉強に励む事にした。


 ゲームはいったん休むとはいえ、復帰したときの感覚を忘れないため、息抜き程度には続ける。


 ただ今までのレベル上げのような無理はせず、あくまでも息抜き、すぐに復活するために。

 このゲームでは、今のところ最高レベルは100という設定だけど、実際レベル100のプレイヤーはいまだに存在しない。


 現在、最高がレベル93。

 他に90以上が7人で、このレベル90以上がトッププレイヤーと言われ、ゲーム上『12神将』の名称がゲームマスターから与えられ、皆から崇められている。

 つまり、12神将が今の所8名、空き枠が4名、俺がレベル90になり2つ名を持って、12神将の1人になってから受験勉強を、なんて(夢)思っていたけど……

 高校受験が終わったら燃える!

 そのためにも第一志望の高校に受からなければ!

 どこの高校に行くか、うちは母親より父親がとても心配してくる。


 というのも、母親は国家公務員の総合職、いわゆるキャリア

 それにくらべ父親は中小企業でいまだに係長。

 なんでそんな2人が結婚したか、理由は簡単。

 母さんが父さんの事が大好きで、母さんからプロポーズしたんだそうだ。


 父さんも母さんの事が大好きだったけど、いわゆる高嶺の花で自分よりもっとふさわしい相手と一緒になった方が母さんは幸せになるからと思っていたらしい。

 母さんと父さんは幼馴染で歳は同じだけど、小さいころは母さんが姉のように父さんの面倒を見ていて、高校、大学は違ったけど母さんがずーっと父さんのことが好きで、大学4年の時母さんから告白したそうだ。


 母さんは都内でも一番の進学校、そして大学はなんと国立帝都大学に行き、そのまま国家公務員総合職試験に合格、というエリート街道まっしぐら。


 それに比べ父さんは地元の普通の高校に行き、大学も家から通える普通の(世間では3流と言われている)ところに、そこでバリバリ活動するわけでもなく、普通に大学に通って、サークルに入るわけでもなく、普通にバイトして、普通に就職したものだからそういう事に。

 ただ母さんいわく、父さんは昔からかっこよくてやさしくて性格がよかったから、それがわかる女子に結構モテたんだそうだ。


 ただ、大好きであこがれだった母さんが幸せになるのを見届けるまでは側で見守ると決め、色々告白されたりしても全部断ってたらしい。

 母さんも色々な男子から告白されたりしたけど、その頃から父さんの事が好きだったので全部断って、いつも父さんと一緒にいたそうだ。


 そんな父さんはどんな時も母さんにはやさしくて、何かあればバイトしては母さんにプレゼントしたり、デートしたりして、母さんの我儘にもちゃんと向き合って、何があっても母さんを優先してきたんだそうで、だから母さんの中でも父さんがオンリーワンなのだそうだ。


 だから世間で何を言われても、父さんがどこの大学を出ていようが、どんな会社に勤めていようがそんなのは関係なく、今だにラブラブで、よく2人でデートしたり、時々2人だけで旅行に行くこともある。


 旅行の時は家族4人で、と親は言ってくるけど、俺達は遠慮して2人だけで行ってきたらと言って、俺達は家でお留守番、その時は思いっきり1日中ゲーム三昧。

 その方が、母さん、父さん、そして俺達も、皆が、WINWINだから。

 父さんはやっぱりどこか母さんには申し訳ないと思っているらしく、俺に対し、母さん程でないにしてもそれなりの大学に行ってほしいらしい。


 母さんは、

「そんな事気にしなくてもいいのに、要は中身だよ」と言ってるけど、

「父さんが気にしているなら無理しない程度に頑張りなさい、でもね、やっぱりかっこよくて、やさしくて、思いやりがあって、一途になってくれたらそれだけで幸せになれるんだよ」って、

 息子にのろけてどうするんだよ。

 俺じゃなくて、俺達と言ってるのは、俺の家は4人家族、妹が1人いる。

 この妹は俺よりしっかりしていて、おそらく母さんの血を多く引き継いだのだろう。

 1つ年下にもかかわらず身長は俺より高く、成績も学年でもトップ、バレー部に所属して当然レギュラーでメンバーからは司令塔と言われている。

 中学2年生で既に先輩・後輩男子から告白されまくっているみたいだし、女子からも告白されているらしい。


 時々クラスの男子から妹を紹介しろ・・・・・・そんなするわけないのに、そんな馬鹿な事を俺に頼んでくる奴がいるくらい中学では有名。


 にもかかわらず、やっぱり母さんの血を引いているから?人を見かけで判断しない、というか、

 こんな普通の俺に対してもちゃんと兄として接してくれる。


 そりゃあ小さい頃みたいにべったり俺の後ろをついて来て一緒に遊ぶとか、一緒にお風呂に入るなんて事はしないけど、学校でも、家でも会うとちゃんと挨拶するし、二言三言だけど、普通に会話する。


 ただゲームとかは一切しないので、そこのところは俺の事をちょっとバカにするというか、

「中学3年にもなって、彼女もいないの?」

 とか、

「家に籠っていないでスポーツとかやりなよ、このままだったらただのオタクだよ」 

 とか言われるけど

「それは俺もわかってるよ、高校に行ったら彼女ができたらいいなって思うし、スポーツはしないけど、ゲームも世界大会に出場するようなレベルになってそっちで頑張るつもりだよ」と言っている(言い訳じゃない、本気だ)。

 妹はおそらく母さんと同じ高校に進学するだろう。


 けど、俺はなんとか進学校と言われる程度の近くの高校、それでも父さんも母さんも、妹もがんばれ!と応援してくれるから、そこに向かって頑張れる。

 それから俺は毎日、塾に通って、休みの日は図書館で勉強。


 夏休み明けにはなんとか合格できるところまで成績が上がって、このまま頑張れば第一志望の高校に行けから、学校でもその方向で進めてくれると先生も言ってくれ、父さんも母さんも一安心、それからもずーっと毎日塾に通って休みに図書館通いを続けた。


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