第23話 最高の相棒(パートナー)
武道大会前日、あいちゃん含む5人で食卓を囲っていると、突然たっくんの携帯がなったの。たっくんは左手で携帯を取り、冷蔵庫の横へ向かっていったの。
たく「お待たせいたしましたお電話ありがとうございます。居酒屋「菊川」方南6丁目店、小糸でございます」
昭仁「よお、飯時だった?」
たく「ちっす。今あいちゃんをせなあかあおに任せてるけどあじしたん?」
昭仁「明日って武道大会だろ?道着とかある?」
たく「朝4時に洗濯機かけたからダイジョブ。愛央の服とかも洗濯してあっけど明日来んの?」
昭仁「いこかな」
たく「ご勝手にどうぞ」
たっくんは話し終わると対戦表に目を向けたの。どうもたっくん曰く、誰と当たるか気になったらしい。そして見終わると、うちに話しかけてきたの。
たく「愛央」
あお「なぁに?」
たく「明日のさ、武道大会なんだけどよ」
あお「うん・・・」
たく「お前と俺、組手で組まれてる」
あお「え!?」
せな「えっ!?」
あか「ええぇっ!?!?」
あい「きゅぴぃ!?!?」
たく「対戦表見たんだよ。一番最後さ、あんたと組まれてるし」
あお「えっ・・・」
せな「たくみ兄ちゃんって」
たく「あん」
せな「段持ち・・・だよね?」
たく「段持ち。こんな細いけど。2段だよ?」
せな「あおっち何級?」
あお「うち、6級・・・」
たっくんからそう言われた時、うちは負けると思ったの。実は愛央、チアと空手を併用して5年くらい習っていた。辞めたのが中3だから実に2年ぶり。しかもたっくんは段持ちだからかなり強い。どうしよう・・・。
ご飯を食べ終わると、瀬奈と明里は学校指定のチアユニを着てうちの横にきた。たっくんはあいちゃんとお風呂に入ってから、目の前に座ったの。
せな「愛央、大丈夫だって」
あお「負けちゃうよ。うち」
あか「あおっち!フレフレ!」
あお「うーん・・・」
あい「きゅーぴ」
たく「愛央」
あお「なに?」
たく「泣きそう?」
あお「うん」
たく「俺だってほんとはやりたくないんだわ。だけど、やるっきゃねぇべ?」
あお「・・・うん」
こう言われた時、うちにはたっくんの優しさを感じたの。うちは12年チアをやってきて、いつもたっくんの後ろで応援してた。だけど明日は、たっくんと同じステージに立つって感じた。
翌朝、あいちゃんを瀬奈と明里の2人に託し、うちとたっくんの2人で道着を着てから体育館に行った。既に今日は満員。うちは体力がないのに、大丈夫なのかな。
たく「大丈夫。リーグ戦だから。愛央ならできる、そだっぺ?」
あお「うん。うちならできる・・・。たっくん、ぎゅーしていい?」
たく「おいでや」
試合前にたっくんとぎゅーできるのはこれが最後。うちは負けても勝っても頑張って最後までやり遂げるっ!
第一試合は空手を少しやっていた人とだった。うちも5年はやっていたから、一応実力はある。2試合のうち、これが終わればたっくんとできる。うちはそう思ってコートに行った。
あお「うぅ、泣いちゃいそう」
たく「だいじょーぶだって!お前ならできる」
あい「きゅぴ!」
あお「あいちゃん!」
たく「連れてきた。愛央が泣かないようにな」
あい「あーい!ねーねー、がんばえ!」
あいちゃんに励ましてもらってうちはコートに立った。そういえば・・・試合時間って2分だったよね・・・。
主審「はじめ!」
そうして試合が始まった。あいちゃんもたっくんも、みんなが見てる。うちはそう思うと何故か技あり合わせ一本で勝とうと思ったの。チアをやってるから体は柔らかいし、いけるかな?
2分後、結果は引き分け。技ありが入らなかったの。でもうちは、ここでとりあえず休憩して、たっくんと最後の試合に挑みたくてしょうがなかった。
たく「ふぅ・・・」
あお「たっくん!」
うちはたっくんにぎゅーってした。たっくんは相変わらず、平然としてたけど。
たく「おかえり。引き分けか・・・」
あお「うん・・・」
たく「判定にもってこ。俺はお前のお兄ちゃんだから」
たっくんはそう言って、コートに歩いて行った。愛央の大好きなお兄ちゃん、貫禄があって大好き。そういえば、ここからテレビ収録も入るって言っていたの。たっくんと2人でテレビに出れるの、楽しみだなぁ・・・。
場内アナウンス「これより、第37回方南高等学校武道大会、最終試合を行います」
あい「たったー!!ねーねー!!」
せな「あいちゃん、すごい応援してるね!」
あか「うん!うちらも負けないように、応援しよっ!」
場内アナウンス「東側、2年C組、琴乃愛央選手」
あお「はい!」
場内アナウンス「西側、同じく2年C組、琴乃匠選手です!」
たく「押忍」
場内アナウンス「この2人は、なんと仲良しの双子だそうです。では、試合前に意気込みを聞いてみましょう。まずは愛央さん、いかがですか?」
あお「私は空手をずっとやっていなかったので不安でしたが、いざ最後の試合でわたしのすっごい大好きなお兄ちゃんと対戦できるなんて幸せです!妹も、友達も、それからクラスメイトも!君津のおばあちゃんも見ているって言ってました!みんなの応援を胸に、方南高校応援チア部の琴乃愛央、精一杯戦います!」
会場は大きな声援に包まれた。あいちゃんも、大はしゃぎしていたの。
あい「ねーねー!!がんばえー!!」
せな「あおー!ふぁいとー!!」
あお「うん。がんばるっ!」
場内アナウンス「では、兄の匠さんはいかがですか?」
たく「あえて普段通りと言っておきます。相手が双子の妹、愛央だからってのもありますが、これ以上は言いません」
あお「あっ・・・」
主審「では、準備を始めてください」
あお「はい!・・・たっくん」
たく「・・・わーってる」
そうして方南高校全生徒1290人の注目が集まる中、最終試合が始まったの。
主審「はじめ!」
あお「たっくん!いくよ!」
たく「かかってこい」
試合は愛央もたっくんも譲らない。でも、段持ちのたっくんは流石に強い。うちは泣きそうになりながら最後まで戦った。
せな「あお!負けないで!」
あい「ねーねー!まだまだー!!」
あか「たくみ兄ちゃんも負けないで!」
主審「やめ!」
あお「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
たく「ん・・・」
主審「判定を取ります。判定!」
旗の色で勝ちか負けかが決まる空手の組手。勝ったのは・・・・。
場内アナウンス「ただいまの試合、3対2で」
あお「・・・」
たく「・・・」
場内アナウンス「琴乃匠選手の勝ちとなりました!」
会場に大歓声が広がった。たっくんが勝っちゃった。頑張ったのに、うちは悔しくて泣いちゃった。
あお「うっ・・・」
たく「愛央・・・よく頑張ったな」
あお「たっくん・・・!ぐすっ・・・うわぁぁぁぁぁぁん」
たく「悔しいなぁ。そらなぁ、お兄ちゃんに負けちゃってなぁ」
あお「うん・・・」
たく「とりあえずさ、今日はこれで終わりだから、帰ろか」
表彰式が終わって、家に帰ってくるまでの道中、うちはずっとぐずっていたの。やっぱりたっくんには勝てなかった。制服のスカートに涙が落ちるくらい、うちはずっと泣いてた。
あお「ぐすっ・・・やっぱり、かてなかった」
たく「・・・」
帰ってきて机に向かっても、うちはまだ泣きべそをかいてたの。少しすると、私の真横で華やかな音がした。
せな「Fooooooo〜♡」
あか「Fooooooo〜♡」
あお「えっ・・・?」
せな「おつかれさまっ!」
あか「頑張ったじゃん!」
そこにはジェントルピンクのポンポンを振って、うちのことを応援してくれた瀬奈と明里がいたの。あいちゃんはいなかったけど、瀬奈と明里はこう言ってくれた。
あお「せな・・・あかりん・・・」
せな「がんばったじゃん!」
あか「それに、あそこまで戦えるのすごいよ!」
あい「あい!」
せな「だから悔しかったんでしょ?」
あお「うん」
せな「あおっち!」
あか「フレフレ!輝いて!」
夕陽に照らされる私に瀬奈と明里の振るポンポンのテープがとても輝いてた。うちも、たっくんも、頑張ったから輝いてるのかも。
少ししてたっくんが台所で何かしてたみたいで、愛央のところに戻ってきた。
もしかしてこれは・・・甘い匂い・・・?
たく「お待たせ。愛央のために、作った」
あお「えっ?これって、タルト・タタンのチア風味?」
たく「そう。なぁ愛央さ、気づいた?」
あお「なにが?」
たく「俺さ、手抜いたんだよ」
あお「えっ、そうなの?」
たく「最後の方、あんま当たんなかったでしょ?俺さ、愛央と戦う時に強くいくとすぐ倒れて俺の一本勝ちが見えていたからあえて弱くした。だから、愛央の突きとかも入ったわけ」
あお「確かに」
たく「本当なら俺が負けてもよかった。だけど、やっぱり愛央と戦う以上、判定までは持っていきたかった。だけど体力差はやはりでかい。だから、俺は手を抜いた。しかし、審判はやっぱり俺に票を入れたんだよ」
あお「うっ・・・」
たく「だけど俺は、お前のお兄ちゃんだ。愛央が俺と同じ・・・いや、俺の30倍負けず嫌いなのはわかってる。だから負けて泣くのが予測できた。それで瀬奈と明里に愛央のチアリーダーになってやれって指示して、俺は愛央のバッカ好きなタルト・タタンのチア風味を作ったわけ。ほらこれ全部お前のだ。食っちまえ」
あお「たっくん・・・ぎゅーっ」
うちは思いっきりたっくんに抱きついた。負けてもここまでフォローしてくれて、おまけにお菓子も作ってくれた。たっくんって最高の
たく「16カットにしてあるから、あいちゃんと食べるか?」
あお「えっ?」
あい「ねーねー!!ぎゅー」
あお「あいちゃん・・・!」
あいちゃんとぎゅーをした時、奥の方からドアが開く音がした。もしかして、パパでも来たのかな?
祖母「たっくん、あおちゃん」
たく「はっ?・・・はぁぁぁ!?」
あお「えっ、おばあちゃん!?」
祖母「久しぶりだねぇ、といっても、たっくんはこの前来たけどね」
あお「おばあちゃ〜ん!!ぎゅ~♡」
たく「ちょ、理解が追いつかない」
きたのは愛央のおばあちゃん。わざわざ君津から来たんだって。なんでも、孫が頑張っているのを見て、久しぶりに会いたくなったんだとか・・・。
夜になって瀬奈があいちゃんとお風呂に入り、その後にご飯を食べることになった。今日はおばあちゃんも一緒。たっくんは余計に力が入ってたの!
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