第9話 華の球技大会!!

今日は秋の球技大会!たっくんは深夜3時から緊張してパソコンとにらめっこしていた。うちはチア部で応援する。だけど、不安になっていたの。わたしはポンポンを両手にずっと祈ってる。たっくんが勝てますように。


少し遅めの午前8時。お気に入りのツインテールに、ピンク色のリボンと青いチアユニを着た私は、たっくんに甘えながら学校に行った。


たく「おいおい、離せよ」

あお「やーだ♡愛央はたっくんから離れないもん!」

たく「あっそ」

あい「たったーとあお、あいたんもいっしょ!」

たく「あいちゃんまで・・・まいっか」


あいちゃんはうちの頭の上にちょこんと乗っかって、落ちないようにしてた。このときのあいちゃんは空を飛べてて、たっくんといっつも出かけるときあいちゃんは飛んでたなぁ・・・。


あい「きゅ?」

たく「どうしたの?」

あい「たったー、がたんごとん、あそこ」

たく「おいまじかよ」

あお「どうしたの?」

たく「シテン」


シテンとは、試運転のこと。普通は走らないんだけど検査した後とかに試しで走らせることを言うんだって。


あい「たー、あれなに?」

たく「乗務員訓練っぽいな。シテンのくせに人めっちゃいる」


そしてたっくんはそう言うと学校までまた歩き出したの。うちもあいちゃんといっしょに後ろをついていった。


あお「野球だからプラスチックのポンポン持ってきて正解かな?」

たく「守備妨害にならないようになってりゃええやろ」

あお「ほんとは金色のいっちばんかわいいポンポンを振ってたっくんの事応援したいのに・・・」

たく「だと思って仕込んできたぞ」

あお「え!?」


うちは思わず声を出しちゃった。守備妨害になると思っていつものポンポンを持ってこなかったのに、試合前の時使うんだって!!うちはすっかり忘れてたの。たっくんほんとにありがとう!


あお「たっくんまさか見越してたの!?」

たく「うん。試合前踊るべなぁ?って思って」

あお「たっくんもう大好き!」

たく「告白はあとにしとけ」

あい「たったー!ばしゅ!」

たく「およ・・・えっ!?は!?ええぇ!?」

紅野「お待たせしました。方南高校行きです」

あい「きゅぴい!」

紅野「おはよー。発車まで2分ほどお待ちください」

たく「おはよ。なに、時間調整?」

紅野「おは。時間調整っていうか、早いんだよなこのスジ。あれところで愛央ちゃんは?」

あお「おっはー♡ふふっ」

紅野「おはよう。愛央ちゃん普段よりかわいいね。どうしたの?」

たく「いやなんか今日球技大会で、ほしたらあいちゃんも来るっていうし愛央はガチるっていうもんだから・・・」

紅野「あらそうなの。もしかしたら後で行けるかも」

たく「そしたら今日の夜手料理振る舞うよ。家来る?」

紅野「じゃあ行くね。何作ってもらうかはあとで連絡するわ」

たく「あいりょうかい」

紅野「おまたせしました発車します」


おじさんが学校に着くと、30分の休憩になっていた。あいちゃんは終点に着いたおじさんのところに行って、遊んでいた。


紅野「よーし、休憩30分だー」

あい「きゅぴー!」

たく「おいおい、マジか」

あい「あい!」

紅野「おじちゃんと行くのかい?」

あい「きゅぴい!」

あお「うちらはふたりでいこっ!」

たく「はぁ?」

あお「うちの可愛さ冷めちゃうよ!」

たく「そらおいねぇ、急がねば」


そう言ってたっくんは教室まで行った。着くとたっくんは即座にスマホで色々調べ始めてた。そのうちに伯父さんもきて、あいちゃんを渡してくれた。


あい「きゅぴー♡」

紅野「おじちゃんもうすぐバス乗るからねー」

あい「あい!」

たく「すんませんね。・・・行くぞ」

あお「おー!」


そう言って、わたしはたっくんと外に出たの。たっくんはまだ少し不安そうにしていたの。だから私はたっくんの不安を和らげようとした。ポンポンを振って。


あお「不安?」

たく「あたぼーよ」

あお「・・・ふれっふれっ。がんばれっ」

たく「はぁ・・・」


たっくんはため息をついていた。やっぱり応援してもたっくんは元気にならない。それだけたっくんは不安そうにしていたの。それから開会式を終えて試合順が発表された。たっくんたちは第二試合だった。うちはたっくんのところに行き、飲み物をもらってた。


あお「たっくんが出るのは第二試合だね」

たく「相手は強豪だ・・・負けるんじゃねぇの?」

あお「だいじょうぶ!たっくんならできるって、うちは信じてるよ!」


うちはそう言ってたっくんを応援したの。その後に(´。>ω<)ぎゅ〜っ♡♡♡って抱きしめちゃった♡


その頃の会場は熱気に包まれていた。こんな中でたっくんを応援するの・・・!?って思ってると、たっくんから電話がかかってきた。


たく「聞こえる?」

あお「うん。どうしたの?」

たく「ベンチから生中継する。明里さんも瀬奈さんもいるね?」

瀬奈「はい!」

明里「います!」

たく「何がなんでもあんたら3人でうちのチームがどうにか勝てるようにやってくれ」

瀬奈「はい!」

明里「あか、今日たくみさんのためにとびっきり可愛くしたので見れたら見てください!」

たく「わかった。愛央も今日はおめかししたんだからガチれよ」

あお「うん!あねぇねぇ、たっくん」

たく「んあ?」

あお「あいちゃん、いないんだけど・・・」

たく「あー、横にいるから大丈夫。たったーといたいって言うから」

あい「きゅぴ!」

あお「おっけー。あとで3人揃ってベンチ行くね!」

たく「あいよ」


うちはそう言って電話を切った。試合まではあと25分くらい。試合開始の10分前にベンチへ行くと、既にたっくんがペットボトルの水6本を用意して待ってた。


たく「10月とはいえど、まだ暑いからな。飲みな」

あお「たっくん・・・♡」

たく「あ、そだ。愛央にあいちゃんを渡しとかなきゃ」

あい「きゅぴ!」

瀬奈「がんばってください!」

明里「絶対勝てるように応援しますっ!」

たく「ありがと」

あい「たーた」

たく「なに?」

あい「(´。>ω<)ぎゅー」

たく「あら珍しい」

あお「たっくん、絶対勝とうね!」

たく「みんなその気持ちだから怖いんだよ」

あお「瀬奈、明里っ!応援しよっ!」

瀬奈「せーの!」

3人「たくみっ、がんばってー!」

あお「たっくん(´。>ω<)ぎゅー」


うちはツインテールをふわって揺らし、たっくんにぎゅーしたの。それが愛央のできる最高の応援だから!


あお「いよいよだね」

瀬奈「うちらで精一杯応援しよっ!」

あい「あーあー」

あお「なぁに?」

あい「たったー、げんきない」

たく「打てるかなぁ」

あい「あえ」

あお「もー、たっくんー」

たく「んだぁ」

あい「あーい、だいじょーぶ?」

たく「なんとかね。7番1塁・・・負けないようにしなきゃ」


試合が始まってうちらは声が枯れないようにポンポンを振って応援した。三塁側ベンチにたっくんがいて、うちら3人を含むチア部の女子総勢21人は、スタンドで応援するメンバー15人と一塁側に3人、そして三塁側にうちらがいるように分かれていた。試合は2回裏まで両チーム0-0で進み、3回の表になったの。


あお「つーぎーはー・・・」

たく「俺だ・・・」

あい「たったー!」

たく「ごめんな。ちょっと1発打ってくる」

あお「あいちゃん、たっくんのこと応援しよっ!」

あい「きゅぴー!たったーうってー!」

たく「おう。やってやるよ」


そう言ってたっくんはバッターボックスに立った。瀬奈と明里は両手に青いポンポンを持ってうちの推しのたっくんを応援していた。


瀬奈「たくみさん!1発打っちゃってください!」

明里「たくみさんなら絶対入るはずですっ!」

たく「・・・160km打ち返してやらぁ」

あお「たっくん・・・!!」


うちは涙目になりながらあいちゃんと見つめていた。お願い・・・!たっくんなら打てるから・・・!


そう思っていると、最初の2投はボールだった。たっくんはまだ落ち着いている。うちはあいちゃんを椅子に座らせて、両手にポンポンを持って応援しようとした。


瀬奈「あおっち!?」

明里「あおっち!」

あお「うちも応援する!なんたってお兄ちゃんがあんなに頑張ってるもん!」


あたしがそう言った次の瞬間、場内に金属バットの音が響き渡った。たっくんが、思いっきりバットにあてた。うちらはその瞬間、一気に祈ったの!


あお「お願い!」

瀬奈「入って!」

明里「行って!」

たく「まてよ・・・」

あい「きゅぴ・・・」

たく「待て、あれって・・・!?」

瀬奈「えっ!」

あお「いった!?」

明里「もしかして・・・!!」


「場外ホームラン!?」


ボールは場外へ飛んでいった。たっくんは一打席目に、いきなり場外ホームランを打ったの!


たく「うわ、え・・・?入った・・・?」

場内「わあああああああああ!!!」

明里「きゃあああああああ!!」

瀬奈「すごーーい!!!!」

あお「たっくん・・・!!すごい・・・!」

あい「きゅぴー!!」


瀬奈と明里はポンポンを振って喜んだ。私は泣いちゃった。うれしくて。そして戻ってきたたっくんは唖然としていた。


たく「え?俺、ガチで打ったの?」

あお「たっくーん!!ぐすっ・・・やったね!」

たく「おぉよしよし。泣くなって。なぁあれほんとに見間違いじゃねぇよな?」

あお「うん!ほんとにたっくんが打ったボールだよ!」

あい「しゅごーい!!」

瀬奈「うち感動です!たくみさんが先制点あげちゃうなんて!」

明里「わたしも!あおっちが羨ましい!」

たく「いやどうもぉ・・・えぇ、本当に打ったんだ。おら自覚無いんだが」

あお「たっくん、うぅわあああん」

たく「ほれよしよし。あんがとな」


たっくんは弱いと思っていた相手チームは、どうやらたっくんがホームランを打てる選手だと知って、火がついたらしい。うちらはポンポンを振って、たっくんたちを応援したの。


明里「フレ!フレ!いちねん!」

瀬奈「ふぁいと!ふぁいと!れーっつごー!」

あお「すごいっ・・・。たっくんの一回で4点差に持っていっちゃうなんて・・・」

たく「ふぁぁぁぁー。はーねみー。ってかまだ4点差か。ちっ、いっぺぇやるか」

瀬奈「たくみさん、余裕そうだね」

あお「だって、うちのたっくんが打っちゃったんだもん。このまま守り切ったら・・・勝っちゃうよね」

たく「ちょい水飲みな」

あお「うん」

あい「たったー、ごはんー」

たく「おっけぇい!任せなー!」

あお「あか!瀬奈!見て!」

明里「すごい!」

瀬奈「たくみさん、赤ちゃんのお世話もできるの!?」

明里「なんか愛央から聞いたことある」

たく「どーだー?うんめーかー?」

あい「あい!」


たっくんはあいちゃんのお世話をしつつ、試合に臨んでいた。ところが5回の裏になると・・・相手が点数を入れてきたの!


たく「ち、まじかよ」

あお「これで2点差・・・」

明里「やばい、このままじゃ!」

あい「ぐすっ・・・」

あお「あいちゃんもぐずりはじめちゃった」


5回が終わってこの時点で4対3。あいちゃんがぐずりはじめちゃったのを察知して、たっくんは戻ってくるとすぐにあいちゃんのおもちゃを出した。


あい「とんとん・・・きゅぴぃ!」

たく「ほぉれ見てみろ。機嫌なおったぞ」

あお「さすがたっくん!」

瀬奈「すごいですね!」

たく「さてと、最終回となる6回表か。待って初手俺かよ」

あお「え!がんばって!」


たっくんはバットを片手にバッターボックスへ向かった。うちらは3人で声を出して、たっくんを応援したの!でも・・・。


あお「ストライク2つ!?」

瀬奈「たくみさん!ふぁいとです!」

明里「大丈夫かな・・・」

あお「・・・大丈夫。たっくんなら決めてくれる。うちは信じるよ。たっくんの妹だもん!」


ずっとうちは祈った。たっくんなら打ってくれる。そう祈ってると、たっくんは本当に打ってしまった。バットの音を聞いた瞬間、うちも、あいちゃんも、明里も瀬奈も、そしてたっくんもボールを見ていた。


たく「おぉ、いい飛び方してらぁ」

瀬奈「あれは!」

明里「行って!」


そう言った瞬間、たっくんの打った小さいボールは、スタンドの中に入っていった。追加点。しかも、満塁ホームラン。うちは号泣して応援できなくなっちゃった。


たく「いい飛び方したなぁー・・・ハハハハ」

あお「たっくん・・・!うわぁぁぁん」

たく「また泣いてる。化粧崩れるぞ」

あお「いいの!たっくんが・・・すごすぎて・・・」

たく「大泣きじゃねぇか」

瀬奈「あおっちはそんなに嬉しかったんですよ!たくみさんがまさか2本もホームランを打つなんて・・・!」

あい「たったー、しゅごーい!」

たく「あいちゃんの魔法もかかってないし・・・マジでこれ俺の実力!?」

明里「そうそう!たくみさんが打ったという実績が愛央の涙を誘ったんですよ!」

たく「なんか悪いなぁ。・・・なぁ愛央」

あお「えっ・・・」

たく「怒んねぇ怒んねぇ。愛央にとって、俺はどう映ってた?」

あお「なんか・・・」

たく「なんか?」

あお「・・・言葉にできないくらい、輝いてた・・・」

たく「あそう。あのな」

あお「なに・・・?」

たく「愛央の輝きが俺に伝わったんじゃない?」

あお「え?」

たく「あんたは愛央(青)色のポンポンを振って応援していた。その輝きが、あのホームランなんだと思う。違うかい?」

あお「ほんと?」

たく「だって、俺を輝かせられるのはいくら明里さんや瀬奈さんと言えど、我が妹琴乃愛央、お前には敵わないはずだぞ?」

あお「たっくん・・・」


うちはたっくんにずっとぎゅーってしていた。過去の決別。それはたっくんのホームランに込められていたって。


6回裏で試合は終了。たっくんたちのチームが勝った。そのまま今日は終わり、うちはたっくんの腕をずっと離さなかった。今日は瀬奈も明里もあいちゃんも一緒。5人で帰ることにしたの。


瀬奈「あおっちー、たくみさんにべったりだね!」

あお「変なこと言わないでよー。うちの大好きなお兄ちゃんなんだもん!」

明里「でもなんか、愛央がいつも以上にたくみさんの彼女にしか見えないんだよね」

瀬奈「それな!まじほんと彼氏彼女みたい!」

たく「あながち間違いではねぇけど?」

全員「えっ?」

あお「たっくん、ほんき?」

たく「お前が言ったのに忘れやがったな」

あい「きゅ・・・」

たく「お、寝そうだな」

あお「いっぱい応援したもんね。うちがだっこしていい?」

たく「だっこしな。たまにはお姉ちゃんのところで寝たいだろうから」

あお「うん!」


そうやって話しながら帰ってくると、パパと伯父さんがブラックニッカクリアの炭酸割りを作って宴会をしてた。うちはツインテールを崩して、あいちゃんの布団にあいちゃんを寝かせてから、ポンポンを両手に持ってたっくんにバックハグをしたの。


たく「お疲れさん」

あお「たっくん、ありがとう」

たく「それ持って言うことか?」

あお「応援するの、疲れたもん」

たく「あっそ」


たっくんはそう言いながら何かを作ろうとしてた。またお菓子かな?そう思ってると、たっくんがこう言った。


たく「口開けろ」

あお「あーん」

たく「いいよ閉じて」

あお「あーむっ」


今日はとても、楽しかった!

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