f第2話

 来るひとは、色々だけど。

 基本的に、円満な依頼が多い。


 ふたりでたくさん楽しんだから、別れる記念に指環を割りに来るひとが半分。

 前の指環を処分して、新しい指環に更新するひとが半分。


 だから、指環店の隣の小さい区画に、私のスペースはある。隣の指環店さんとは、持ちつ持たれつ。


 理由は分かってる。

 わざわざ指環を割るのにおかね使うってことは、それだけ指環に特別な思い入れがあるから。捨てるか売れればいいものを、わざわざ割りに来る。


 幸せそうにしているひとたちのなかで。


 わたしだけが、ひとり。


 彼を待ってる。

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